廃墟のインベンション、あるいは聖地パリに降る「絶望」という名の無機質な白雪
パリの冬。その冷気は、人間の肺胞ひとつひとつを凍りつかせるような、無機質で暴力的な静寂を伴って降る。
ル・マルレ・ジャズ・オーケストラの常任ディレクターという椅子に座ってから、僕が費やした時間は、すべてこの瞬間のための伏線だった。
今日のリハーサル。初めて、メグがいない。
彼女はオクレールのリサイタル準備で、別の場所で練習している。それは当然のことだ。間違っていない。正しい。
だが。
「……ショーン。始めましょうか」
シモンが、いつもと同じ声で言った。
「ああ。——始めろ」
最初のセクション。僕が書いたアレンジ。完璧な設計図の通りに、マルレは動いた。
問題はなかった。
問題が——なかった。
シモンのサックスは正確だった。ノエミのコントラバスは安定していた。リズムセクションは僕のカウント通りに動いた。
それなのに。
「……止めろ」
三十小節目で、僕は手を下ろした。
全員が、僕を見た。
「今の演奏は、正しかった。だが、何かが死んでいる。分かるか」
シモンが答えた。「……ピアノが、ない」
「それだけではない。お前たちは今、僕の設計図の内側だけにいた。外に出ようとしなかった」
「出る場所がなかった」
その言葉に、僕は打ちのめされた。
メグがいた時、彼女は常に設計図の「外側」に手を伸ばしていた。そして団員たちは、その外側に引き寄せられるようにして、自分たちの音を見つけていた。彼女は「正解の外」を示す羅針盤だったのだ。
「……なるほど。僕の設計図は、外側への出口を用意していなかった」
「あなたの設計図が悪いのではない」シモンは言った。「あの娘がいることで、出口が生まれていたんだ」
僕は、自分の手を見た。
完璧な設計図を書く手。だが今、その手は、一つの出口も描けていない。
「——もう一度やる。今度は、途中で俺が止めるまで、お前たちで出口を作れ。どこでもいい。一音でいい。設計図の外へ出ろ」
シモンが、マウスピースを口に当てた。
少し間があって——彼は、僕の書いていないフレーズを吹いた。
それは小さく、ぎこちない逸脱だった。しかし確かに、外側への一歩だった。
メグがいなくても、出口は作れる。ただ、それには全員の勇気が要る。
パリの冬が、窓の外で降り積もっていた。




