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第7話「影の招待状 ―ZERO、孤影の真実―」



 


夜――


寮の廊下。

誰もいない静寂の中、蒼の部屋の戸が**“コツン”**と叩かれた。


 


「……蒼。来い」


「……ZERO?」


戸を開けると、フードを被った黒影――ZEROが立っていた。


その瞳は、いつになく真剣だ。


 


「任務……か?」


「……いいや。“私事”。ついて来て」


戸惑いながらも、蒼は後を追う。


気がつけば、影のように歩む彼女に、足音ひとつ立てることもできず付いていくのがやっとだった。


 



 


たどり着いたのは、忍者学院の裏山。

風の音さえ消える静寂の森。


ZEROは立ち止まり、フードを脱いだ。


 


「ここは……私が生まれた場所」


蒼が目を見張る。


漆黒の髪、猫耳フードを外した姿は――儚い少女のようでもあり、恐ろしい殺気を秘めた“刃”のようでもあった。


 


「……聞きたいことがある。君は“転生者”なんだろう?」


 


「……!」


蒼の表情が強張る。


「どうして、それを……!?」


 


ZEROは、静かに眼帯に手をかけた。


「私も――“前の記憶”を、少しだけ持ってる。

ただ、それがこの世界のものじゃないことだけは、分かってる」


 


彼女の眼帯が外される。


黄金のオッドアイが夜闇にきらめいた瞬間、空気が震えた。


 


「これが、私の“神目”」


「……神目?」


「見たものの“真実”を暴く。

君が“違う世界”から来た存在であることも、視えた」


 


蒼は、言葉を失っていた。


同じ“記憶の断片”を持つ存在。

もしかしたら、自分だけではないのかもしれない――


 


「だから、確かめたかった。

……私は“影”。誰の物語にも名を残さない存在。

でも――君となら、“運命を共有していい”って思った」


 


ふと、ZEROが差し出した手を、蒼は受け取った。


 


「私の刀の重み、背負ってくれるか」


 


「……ああ、今の俺なら、少しくらいは役に立てるかもな」


 


握られた手は、あたたかくて、でもどこか寂しかった。


同じ“記憶の迷子”たちが、いま、少しずつ手を繋ぎ始める。


 


その夜、蒼は初めて“影の涙”を見た気がした。


 


 






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