第9章: 勝利の先に
クロノ大尉は、戦闘が終わり、X-00 TERMINUSの神経リンクから意識を解放した後、深いため息をついた。
無意識のうちに汗をかき、肩が重く感じる。
機体の動きは完全に彼の意識と同期し、戦闘ではその能力がまるで神の手のように感じられた。
しかし、その代償として、彼の脳は極限の状態にあった。
「良くやった、クロノ。」通信機越しに司令部の声が響く。彼の頬に冷や汗が伝うが、そこには安堵の気持ちも含まれていた。
クロノは顔をしかめながらも、無言で答える。あの瞬間、戦局を変えるためにかけた全てのリスクが、今こうして形となって目の前に広がっている。
しかし、内心ではその重さを痛感していた。
戦場における勝利は、単に一方が生き残るだけではない。背負った者たちの運命、そして彼自身の限界を超えた瞬間が確実にあった。
「クロノ、大尉。あの状況でよく持ちこたえた。」
部隊の隊員たちが、彼を讃える声をかけてきた。しかし、クロノはただ黙って頷くだけだった。
彼の中では、まだ戦いの余波が残っていた。神経リンクのフェーズ3を使いこなすことで、何かが変わった気がしたが、それが本当の意味での勝利かどうかはわからない。
それでも、彼はこの瞬間に新たな一歩を踏み出したことを理解していた。機体とのリンクが深まり、戦闘時の動きはもはや意識の枠を超え、直感的なものとなっていた。しかしその先に待つ新たな挑戦に、彼はすでに目を向けていた。
「次の戦いに備えろ。」司令部からの指示が入る。クロノは少しだけ微笑んで答える。
「了解、すぐに向かう。」
クロノの言葉に、仲間たちは安堵の表情を浮かべた。だが、その裏には新たな試練が待っていることを感じ取っていた。