第74話 イカれたメンバー
ユリスが連れて行かれたのは、高級フレンチレストランだった。
しかもVIP用の完全個室。
広い豪奢な部屋に、円卓が一つと椅子が四つ。
(……なんかムカつくな)
円卓なのは、たぶん偶然ではないと思う。
わざわざそういう店をセッティングしたのだ。
高校生を連れてきていいようなレストランではないが……。
他のメンツを考えれば、致し方のない話かもしれない。
四つある椅子のうち、三つはすでに埋まっていた。
「よぉ、ユリス」
真っ先に声をかけてきたのは、冒険者ギルド街路の騎士団のボス、ヤン・ダイクストラだった。
「学校をサボったのか? 悪ガキだなぁ、お前」
「小学校にすら、ろくに行ってないあんたにだけは言われたくない」
「だからこそ言えんだよ。俺みたいになるぞ?」
「死んでもごめんだね」
ヤンは声を上げて笑う。
「……相変わらず、下品な男ね」
嫌悪感も隠さずそう言ったのは、壊れた鎖のボスのエスター・ローウェンだった。
「なんか言ったか?」
「下品な男、と言ったのよ。耳まで悪いのね」
「ハハッ。さすがカルト教団の聖女様。お上品なこって」
「……昔の話を持ち出さないでくれる?」
「無理」
「ならあなたなんて、ただの犯罪者でしょ」
「お前の父親に言ってやれ」
「親すらいないチンピラが」
バッチバチに舌戦を繰り広げる二人。
残ったもう一人はというと……。
完全に二人のことを存在しないものとして扱っていた。
ユリスが現れると同時に立ち上がると、すっとユリスの椅子を引く。
「どうぞ」
トーマス・スミット。
揺るがぬ要塞のボスだ。
元軍人というだけあって、所作の一つ一つが重々しい。
「……どうも」
ユリスが椅子に座ると、トーマスも自分の席に戻った。
そのトーマスのマイペースさに、舌戦を繰り広げていた二人は毒気を抜かれてしまったようだ。
「よぉよぉ、おっさんさぁ。前から思ってたんだけど、一回りも年下のガキをそんなに敬って、恥ずかしくないのかよ」
「そうよ。もっと大人らしく、ドシンと構えなさいよ」
さっきまで争っていたエスターも、ヤンに同意した。
「いや、お前も人のこと言えないだろ」
「はい? なにが?」
「いい歳して、ガキに色目使いやがって。自分がおばさんって自覚あんのか?」
「お、おばっ……」
ヤンの言葉に、エスターの顔が真っ赤になる。
「私はまだ二十六歳よ!」
「ユリスからしたら十分おばさんだろ」
「てかあんたも、私と歳そう変わんないでしょ!」
「お前をおばさん呼ばわりできるなら、おじさんを受け入れる覚悟が俺にはある」
「あんた、本当にいい性格してるわね……」
「てか色目使ってんのは否定しないのな」
「——っ」
赤が紅へと。
それまで黙っていたトーマスが、
「うるさい……」
とボソリとつぶやいた。
小さく平坦な声だったが、明らかに見下すような響きが含まれていた。
「よぉ、おっさん。口を開いたかと思えばそれか?」
「…………」
「あなた、いつもそうよね。むっつり黙って。自分だけがユリスの役に立ってるみたいな顔して」
「……事実だが?」
「おー、おー、言ってくれるな、ヤク中。PTSD再発させんぞコラ」
二人が爆発して、収拾がつかなくなる。
(本当に、なんでこんな……)
ユリスは重いため息をついた。
「あ、あの、ユリスくん……」
後ろで控えていたヘンドリックが声をかけてきた。
「なんですか?」
「なんとかしてもらえませんか? このままじゃ話し合いに……。いや、そんなことより、彼らが争ったら、店がビルごと更地に……」
「……なんで俺が」
「なんでって、そりゃユリスくんは……」
言われなくてもわかっている。
でもユリスが望んだわけではないのだ。
とはいえ、彼らはどんどんヒートアップしてきて、このまま放っておけないのも事実だ。
「んんっ」
ユリスはわざとらしく咳払いをする。
今まさに掴み合いの喧嘩に発展しそうだったのに、ぴたりと黙ってユリスに注目する。
三人はそれぞれ、元反社会的な人物だった。
今では更生して冒険者ギルド——それもオランダ有数のギルドのボスを務めているのだが……。
相変わらず、危険人物であることに変わりなかった。
顔を合わせるたびに揉めてばかりの彼らは、それぞれがギルドのボスであると同時に、円卓の守護者のメンバーでもあった。
いがみあう彼らが、どうして同じパーティーに所属するのか。
その理由こそが、この高校生——
円卓の守護者のリーダー、ユリス・クルーマンの存在だ。
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