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その④



「お寿司よく食べに行くの?」ワタシは聞いた。


「小さい頃はよくね」


「最近はあんまり行かないんだ?」


「あんまり最近は行かないかなぁ…。小さい頃はよく連れて行ってもらったんだけど」


「誰に?」


「兄貴」


「え!お父さんじゃなくて?」


「12歳離れた兄貴がいてさ、寿司職人目指してたんよ。でもって修行中も、他店の味盗むって言っては、親父から借金して名店の寿司を食い歩いていた。その金は大物になってまとめて返す!とか言って」


「え?実家お寿司屋だっけ?」


「いやいや、ぜんぜん普通のサラリーマン。別に金持ちじゃないよ。普通の家庭なのにサ、突然兄貴が寿司職人になるって言い出して。兄貴、言い出したら聞かないヤツで。最初親父も猛反対してたけど、だんだんその情熱に "流された" とゆーか。気がつけばあいつ、老後の蓄えとかまで切り崩して兄貴の寿司代払ってやってんの。さすがにもうそんな事してないけど」


「それに強引に付いて行ったって感じ?」


「そうそう、相当ダダこねて」


「お寿司屋マニアになったのもお兄さんの影響?」


「まー、そんな感じ」


「自分は寿司職人になろうって思わなかったんだ?」


「思ったよ。兄貴の後に続きたかった。兄貴の夢の後を追いたかった」


「けどね…」と彼は続けて、左手の指手のひら全体をぱっぱっと開いたり閉じたりした。




人差し指だけが曲がらない。




「左手の人差し指が曲がらないんだ」彼は説明した。それはその部分だけが人体の一部である事を忘れたかのような振る舞いだった。



気付かなかった。



(続きます!)

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