その③
彼は実にうれしそう。彼が言うにはこのおしぼりは清水市にある寿司の名店『多喜二』のものだそうで。それをわざわざ後部座席の一部に設置してある「おしぼりヒーター」に何本かストックし、必要な時に取り出して使っているとの事。
ちなみに彼が言うには、『使用用』と、『保存用』とでキチンと分けているそうで、今回使用してるのは『使用用』。
「おしぼりは使ってこそおしぼり」という彼の主義主張があるようなのだが、やっぱりマニア心理としては、多少は残しておきたいようで、二本程は必ず『保存用』として保管しておくそうだ。
「一枚だって同じおしぼりは無い」というのが彼の主張だが、そうか!?本当にそうか!?!?
彼が言うには他にも名店おしぼりとしては、菊水、久米鮨、北のれん、鮨寛、喜久鮨、吾妻、益善、かつ政等、全国に名だたる鮨名店のおしぼりを所持、保管しているそうなのだが、素朴な指摘をさせていただくと、おしぼりは「レンタルおしぼり屋」から手配してるハズだから、名店だろうが、凡店だろうが、そのヘンは大差無いのでは?…と正直、思ってしまう。
ただ、彼に言わせると、「おしぼりに電球の光を当てて、微妙に角度を変えた時の光沢とゆーか、繊維の照りとゆーかが、やっぱり普通の店とは違うんだよね!」と、これまた悦に入りまくっている。
人は夢中になると、何かが見えなくなという、いい見本のような気がする。
あ、恋も一緒か。
まぁワタシはその手渡された湯のみに、これまた手渡された魔法瓶に入っているお茶(川崎市の名店 鮨さわで出してる粉茶だそうだ)を、どぼどぼっと注いだ。
「揺れるから気をつけてね。」
「うん」
ま、いい人ではあるんだよね。
「今日、君に飲んで欲しいなぁって思って。」
あ、ちょっとグッと来た。
ちょっとだけな。
(続きます!)




