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第12話 失敗は成功のもと







 澄み渡る川底。

 穏やかな水面が激しく脈を打つ。


 ────バシャン!!!


 噴き上がるように水面から飛び出したのは、巨人族の乙女 名はアンジュ。


 豪快な水飛沫に驚いた鳥たちが、慌てふためく。


 顔に垂れた髪を手ぐしで掻き上げ、アンジュは地平線から顔を出した朝日を眺めた。


 四肢から滴る雫が柔らかな陽射しを受け、キラキラと輝く。



「今日も、素敵な一日になりそう、ね」



 アンジュは川辺りに置いたタオルを身体に巻き付ける。まだ水を含んでいる髪を落ちている枝で簡単に括ると、アンジュはある杖を手に取った。


 それはジェイスお手製のマジカルんステッキ。



 アンジュはマジカルんステッキを指先で掴むと、指揮棒のように手首を回す。


 あの日、水晶映写機で観た あの子のように。



「 私の魔法は、


 ────恋の味っ!


 ミラクルんミラクルらんらルー☆ 」



 ………………



 アホゥ……アホゥ……


 遠くで黒い鳥が鳴いている。




「あれ…、お花ちゃん……咲かないわ。やっぱり、たまたまだったの、ね」



 長い睫毛が微かに揺れ、肩の力も少し抜けている。



「もう私たら、魔法なんて使えるはずないじゃない!早く、ジェイスたちのところへ戻らなきゃ」



 アンジュは早々と爪先を変えた。

 手に持っていたステッキをぷるんっと震える谷間に突き刺すと、アンジュはそのまま駆け出した。



 背後の空には暗雲が立ち込めていることも気付かずに……







 ⅩⅩⅩⅩⅩ







「何が、足りないんだ?」



 乾いた土塊を手にしたボクは頭を捻った。


 昨夜のうちに練り上げ、長方形に型どったレンガ。自然乾燥していた試作品たちは、大小様々に砕け見るも無残な結果に終わっていた。


 ボクが予想していた仕上がりとは全くの別物に肩を落とす。



「グワァァァン」

(朝早くから、なんだ?)



「おはよう、ペンドラゴン。朝早いね」



 木の上で寝ていたペンドラゴンが目を醒ました。バサッと白銀の翼を広げ、眩しい朝日を顔から遮り、欠伸を噛み殺しながら、僕を見据えた。



「クヌゥゥハァ…ガフゥ」

(何が朝早いね、だ。貴様が起こしたんだろうが)



「また、失敗したんだ……今回は粘土と砂利を入れて、乾燥させてみたんだけど…」



「ガルルガルルァァ」

(聞いてないのだが、おい。まだ話すのか)



「何か忘れてる気が、するんだよね……。何だっけな……」



 あの日を思い返す。

 まだセイフティになったばかり。デスポワールとふざけて付けられて間もない頃の時を。


「任務と言っても、下っ端だったから、良く市民の仕事の手伝いばかりで……」



 ボクは失敗作を岩の上に置く。右手には丸石を手に取る。



「あの日も失敗したレンガを粉々にしろって言いつけられてたなぁ。……パーティメンバーはボクに全部押し付けて、飲み歩いてたけど……」



 ポロッと出たそのひと言。

 こんなことを思い出しても、口にしてもボクの胸は痛まない。



「そんなことは、今はどうでもいいや。……材料を思い出さなきゃね」



 ──ゴンッ。


 ─────ドンッ!



「グアフッ!?」

(な、なんだ、気でも触れたか!?)



 丸石を振り落とす。

 ただただ、ボクは目の前の不完全な物へと丸石をぶつける。

 粉々に砕けていく土塊。



「これも、使えるんだよ。細かく砕いて粘土に入れて混ぜる。そうすると、更に強くなる……失敗すればするほど強くなるってオークのサイモンさんが言ってた、け」



「……ガルルゥ」

(……失敗するほど、強くなる、か)



「何が足りないんだろう……全く思い出せない」



 手を止めずにボクは思考を巡らす。

 答えはなかなか出てきてはくれない。




 大地の揺れを身体が感じ取る。




「何が思い出せないのかしら、ジェイス?」



 天高くから落とされた心地良い声音。

 地響き共に現れたのはアンジュさま。

 美しい御髪が少し濡れておられます。



「あ、はい。おはようございます……アンジュさま」


「おはよう、ジェイス」


 アンジュさまの無防備な装いにボクは視線を取り乱しながら地面へと下げた。



 ア、アンジュさま……

 服を、どうか服をっ



「ペンちゃんも、おはよう。良い天気ね」



「ガルルァ、グルルガア」

(貴様の目は節穴か?あっちの空見てみろ。黒雲がひしめいてるだろ)



 空を見上げるアンジュさま。

 そのお姿もさまになっておられます、が。



 ぷるんっ。ぷるっ。



 見えちゃうっ

 アンジュさま、見えちゃうからッ



 目の前の作業を一旦止め、ボクは熱くなった顔を両手で覆う。



「ア、アンジュさま!ふ、服を着てく、くださいッ」



 アンジュさまに背を向け、蹲るボク。そんなボクとは対照的なアンジュさま。



「……全く。ジェイスは初心ね。このくらい、なんでもないでしょうに。ねぇ、ペンちゃん?」



 呑気にそう仰るアンジュさま。ペンドラゴンは我関せずというように、耳をかいていた。



「ったく、しょうがない。服着てくるわね」



 ヒラヒラと片手を振りながら、アンジュさまは森へと入って行く。が、その足が急に止まった。



「あっ、そうだ。今日はこれから……」


「これから?」


「買い物に行くわよ」


「買い物、ですか?」



 アンジュさまは振り向かれた。

 そして、人差し指を掲げて申されました。

 チャーミングにウィンク付きです。



「ええ。巨人族の市場!



 ─────巨人の台所へ!」




「巨人の……台所……」



 凄い、楽しみです



「ガルル、ガ……」

(雨が降っても、我、知らぬからな)


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