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第2章:王立士官学校③

 ここで、後に“ヴィルヘルムの側近たち”と呼ばれる者たちの中から、数名を紹介しておきたい。彼らは講義のクラスも、兵科も、生まれも異なる。しかし、出席を強要されることのない志塾に半年以上も在籍し、ヴィルヘルムとヘルマンを慕って集った、貴重な同志たちであった。




【シャルロッテ・フォン・アイゼンドルフ】


 砲兵の名門アイゼンドルフ伯爵家の令嬢。幼少期から煤と爆音の中で育ち、女ながら砲兵指揮官を志すという稀有な存在である。性格は怖いもの知らずで活発、軍隊という男性社会の中でも物怖じせずに前へ出て仲間を鼓舞する、頼れる姉御肌であった。


 整った容姿と艶のある金髪は、ドレスを纏えば社交界でも引けを取らない華やかさを備えていた。しかし、彼女自身は淑女らしい装いを好まず、お転婆すぎる性分ゆえ、誰も社交界への道を勧めようとはしなかった。


 士官学校入校当初、経歴の異様さから孤立していたジークハルトに最初に声を掛けた勇者が彼女である。他の候補生は、二人の会話をこっそり聞くことでジークハルトの人柄を知ったほどだ。ヴィルヘルム以外でジークハルトと最も近い間柄の人物と言えば、彼女をおいて他にはいないだろう。もっともジークハルト自身は特別扱いすることもなく、遠慮のない、時に兄妹喧嘩のような取っ組み合いすらする関係を築いていた。




【カール・フォン・ミュラー】


 戦功によって貴族に列せられた家系の三男。強い名誉欲を持つが、それは“粉ひき”を意味する平民的な姓『ミュラー』と、“フォン”の組み合わせをからかわれた過去の反動である。ゆえに苗字で呼ばれることを嫌い、名乗る際は所属と個人名『カール』を用いた。


 決して裕福ではない家だが、彼はあえて上級貴族の巣窟である騎兵科に身を置いた。曰く、騎兵こそ戦場の花形、最も早く突撃し、最も功績を挙げる場であるからだという。


 ただし彼の特徴は、騎兵であること自体に執着せず、馬を“機動力と突破力を得るための手段”として見ていた点にある。剣・槍・銃と手段を選ばず鍛錬し、功績を挙げられるなら何でも使う柔軟さがあった。同期に「その調子なら昔ながらの騎馬弓兵にでもなれる」と煽られれば、翌日には本当に弓術を学び始めるような、反骨心と負けず嫌いの権化のような男である。




【エリック・グルーバー】


 士官学校では珍しい平民出身者。商人の家庭に生まれ、官僚か将校になることを期待されて家族の支援を受け、入校を果たした努力家である。


 誠実で人望が厚く、協調性や調整能力に優れる。平民でありながら周囲から自然とまとめ役を求められる性質を持つ。穏やかな性格と顔立ちは軍人らしくないが、身長193㎝の長身は、彼への信頼感を補強する“視覚的な説得力”となっていた。


 身長167㎝のジークハルトが「本当に同じ人種か?」とぼやけば、エリックは困ったように微笑んで「棚の奥の物を取る担当になるだけさ」と返したという。彼の人柄を象徴する一幕である。


 彼は主計科を志望していたが、貴族子弟の優先によって歩兵科となった。成績と人物評価のみで判断すれば、別の道が開かれていたであろう人物である。




【ヨハン・フォン・リッテンベルク】


 中堅貴族リッテンベルク男爵家の出身。だが、それ以外に特徴の少ない地味な青年である。成績は可もなく不可もなく、歩兵科の中でも目立たない存在で、どこにでもいそうな“主体性の薄い学生”という評価がもっともしっくりくる。


 では、なぜ志塾に在籍しているのか。友人に誘われて初回の講義に参加したものの、その友人が次回以降来なくなり、かといって自分だけ途中で抜けるのも気が咎め、ずるずると通っていたら、いつの間にか十数名しかいない有志の一員になっていた、というのが実際の経緯である。


 特別な能力も背景も志もない、本人も認める平凡な男。しかし、堅実に任務をこなし、補佐役として人を支えることを厭わない。特定分野で抜きん出ることはなくとも、多くの分野で安定した成果を出せる“職業人としての適性”を強く備えていた。




 初代志塾の面々には、他にも個性的かつ特徴ある人物が少なからず存在した。中でもこの4名こそ、後にヴィルヘルムの偉業を支える中核として歴史にその名を刻むことになるのである。

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