死刑囚 轟 京也 ⑫
時は来たれリ。
時間と云う概念を忘れかけていた頃。其れは突如として告げられた。
【十日後、巫蠱の儀が開祭されます。場所は要塞都市東京の西方にある旧刑務所。詳細と地図を添付しました。最後迄生き残れる事を御祈りしております。】
『漸くか…。』
僕は情報整理がてら過去の記憶を掘り返していく。【自由】だと彼奴は宣っていたが、明確な行動制限があった。どうやら【KARMAウィルス】と呼ばれる細菌に感染していない人間への攻撃は認められない云う事。【KARMAウィルス】の感染者には幾つかの症状があり、【虚人】謂わば生ける屍となった人間への攻撃も認められない事。【欲獣】欲望を具現化した化物への攻撃は認められ、【咎人】と謂われる異能力を持つ者は、感染進行が自分よりも低いと攻撃は認められず、自分と同等、若しくは高い場合のみ攻撃は認められる。
要はリスクを背負わなければならない相手のみ攻撃は認められる。と云う事になるらしい。
この場合、警戒すべきは自分よりもステージが低い【咎人】から攻撃を受ける場合である。此方側からの攻撃は認められないので、攻撃するのなら【ディストピアの権能】が発動する事になるからだ。なので此方側は逃げの一手となる。相手が単独なら、まだ良いのだが…。相手が集団の場合が何よりも厄介なモノになった。
そして…時折聞こえる美しい聲。
ソレは重要な情報の様だ。【ディストピアの権能】の一つなのだろう。記憶に刻まれる感覚と表現すれば良いのだろうか…。忘れる事が出来ない情報として記憶される。例えば【咎】と呼ばれる異能力は七つに分類されるとか…。物理攻撃に特化する【正義】魔法攻撃に特化する【信仰】等の情報とか…。さながら【遊戯】の様にも思えるモノであったり、【虚人】【欲獣】の情報であったりと様々だ。
そして…視覚の隅に浮かび上がっている文字と英数字。此方に意識を移せば、自分の情報が確認出来るらしい。それこそ…自分の【咎】の情報。能力の詳細。そして…ステータスと思われる言葉と英数字だ。何となく解るモノも有れば意味が解らないモノもある。
視界の隅に意識を移す。
轟京也
咎名【スメルズ・ライク・ティーン・スピリット】ステージⅡ。末期。
身体能力の向上【中】。眼にした二つの物質を瞬時に合成し、武器として扱える能力。生物として認識しているモノは合成素材としての使用不可。自らの手で持てない質量の武器は合成不可。産み出した武器と神経細胞での融合が可能。創造し、記憶された武器を瞬時に顕現可能。所有出来る武器は同時に三つ迄。
攻撃力 B
防御力 C
精神力《攻》E
精神力《防》E
俊敏性 C
器用値 C
生命力 B
運命値 D
ふぅ。と溜め息を吐く。
『十日後…。僕の運命は決まるのか…』
要塞都市東京の西方。旧刑務所へと歩みを進める。左腕のガントレットに視軸をずらす。未だに泣き叫ぶ女性の顔が其処にはあった。
精神力《攻》、《防》は…。
精神的な強弱とは別モノとして扱われる。




