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ランベールからの手紙

 荷造りを終えてから朝食をとった。


 サンドロとクロエは、ギリギリまで湖ですごすらしい。

 サンドロがスケッチを完成させようと必死になっているという。


 クロエは、そのサンドロにくっついていっているというわけ。

 

 ロゼッタとミシェルもいっしょに皇都に帰るということで、カルデローネ家の別荘は朝一番からバタバタしている。


 ここでの最後の食事となる朝食になってやっと、落ち着いた感じである。


 だけど、朝食中もだれもが皇太子殿下をチラリチラリと見ている。


 もちろん、わたしもである。


 途中、リベリオとパオロが食堂に入って来て、それぞれの席について食事をはじめた。


 どうやら、暗号の解読が終わったみたい。


 食後、皇太子殿下とエドモンドとパオロとリベリオとモレノとわたしは、皇太子殿下の部屋に集まった。


「じつは、トラパーニ国の王太子殿下とその側近たちとで、予想をしていたのです。宰相派がどこかの国、あるいはだれかと結託し、皇太子殿下の手を患させることになるだろう、と。もしも情報が入ったら、知らせてくれる手はずを整えておいたのです。その際のやりとりは暗号文でということになり、その法則性を決めておきました。どうやら、宰相はわれわれの予想を裏切らなかったようです。王太子殿下が情報を得、さっそく知らせてくれたわけです。てっきり、宰相は大国であるトラパーニ国になにがしかの話を持ちかけるかと思っていたのですがね。この前のわれわれとの会談が和やかだった為、トラパーニ国は倦厭したのでしょう」

「何から何までさすがだな、パオロ。それから、リベリオ」


 皇太子殿下は、パオロの報告に一つうなずいた。


「ありがとうございます、と言いたいところですがね。実は、このアイデアはミオです。なんでも、彼の好きな小説では、政争なども描かれているようでして。こういうシーンもあるらしいです。そういう中で、主要人物が連絡を取り合ったり知らせ合ったりする際に暗号文を使用するとか」


 パオロは、けっして皇太子殿下の顔を見ようとしない。


 見たら、ぜったいに笑ってしまうからだわ。


 密かにそう確信した。


「ぜったいに面白いですから。入手出来そうなのでお見せしますね」


 いつになるかはわからないけれど、帰国すれば「黒バラと暗殺者」のシリーズは全巻部屋にそろっている。


「それで?わが宰相殿は、どこと結託をしてわたしを煮るなり焼くなりするつもりなのだ?」

「ベルトランド様、サラボ王国です。サラボ王国もまた、食料を含めた物資を入手するのにタルキ国に依存しています。かなり逼迫しているようで、サラボ王国がトラパーニ国に持ちかけたらしいです。『ソルダーニ皇国に内通者がいる。二国で同時に攻め入れば、それに呼応して内通者が内乱を起こす。われわれはさして損害を出すことなく、ソルダーニ皇国とタルキ国の二国を得ることが出来る』という内容です。王太子殿下は、サラボ王国の密使を返してすぐに暗号文を作成して知らせてくれたというわけです。それと、トラパーニ国からサラボ王国へは、『準備にしばらく時間がかかる。そちらがソルダーニ皇国に攻め入り次第、なるべく早急にわが国も動こう』と回答したということです。時間稼ぎをしている間に、こちらでどうにかしろ、というわけですね」


 リベリオの報告に、皇太子殿下は短く息を吐きだした。


「王太子殿下は、『これで大豆の借りは返した』ともおっしゃっています」


 パオロが補足的に告げると、皇太子殿下は今度は短く笑った。笑ったことで顔面に痛みが走ったのか、顔が歪んだ。


「ランベールは、うまくやってくれたようだ。宰相がやっと動いてくれた。これで、どうにか彼らを潰す足がかりができた。彼らを潰すことが出来れば、皇宮を統一することが出来る。エドモンド、まずはタルキ国にいる駐留軍に警戒を強化するよう使いを出せ。同時に、本隊はサラボ王国へ備えよ。それと、リベリオをしばらく借りるぞ。戦いよりも、なんらかの策で宰相派をどうにかしたいからな。パオロ、リベリオ、ミオ、わたしに知恵を貸してくれ」


 皇太子殿下の指示が飛んでくる。


「それから、モレノ。アマンダとの逢瀬はしばらくお預けだ。アマンダには、うまい紅茶を淹れてもらわねばならないし、きみにはリベリオの分までエドモンドを助けてもらわねばならない」

「彼女のことは残念ですが、ベルトランド様のご命令とあらば逆らえません」


 モレノがちょっとすねたような表情になったのが可愛い。


「モレノさんとアマンダさんとの逢瀬?逢瀬って……。嘘っ、お二人ってそういう関係だったんですか?」


 そのモレノの表情を眺めながら、皇太子殿下の言葉を咀嚼した。


 たしかに二人はいっしょにいたけど、そんな雰囲気はまったく、まーったくなかった。


 ふと視線を感じたので、顔を上げた。


 全員がこちらを見つめている。



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