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ロゼッタのお相手は?

「正直なところ、わたしも王女殿下は言い慣れないから調子が狂う。わかった。これまで通りということにさせてもらおう。とにかく、きみはあの二人のあんなに露骨なアピールにもまったく気がついていないとは……」

「ちょっと待ってください。あの、ぼくが男性ではないということを、あの二人・・・・はご存知なんですよね?じつは、それについてはトラパーニ国の王太子殿下のランベール様が『あの二人は、きみが女性だと気がついている』、とおっしゃったのです」

「きみを狙っていた、ランベール・モランドね。きみをかっさらわれなくてよかったよ。それこそ、大豆の件じゃない理由で戦争になったかもしれなかった」

「ええ?どういう意味……」

「そこはいい。では、彼がきみにそれを言わなければ、きみはそのことについても気がついていなかったわけだよな」

「おかしいですよね。ぼくの男装は完璧なはずなのに」

「……」


 そうつぶやくと、なぜか彼から返答がなかった。


「まぁ、他人にあまり関心がなかったり女性慣れしていなかったり鈍感だったりしたら、気がつかないかもしれないが……。ロゼッタは皇宮の馬場での初対面で、きみをぶったときに気がついたらしい。それまでは気がつかなかったと言っていたが、それでも初対面にかわりはない」

「じゃあ、彼女はそれ以降気がついていたのにだまっていてくれたんですか?」

「言ったところで、彼女にとっては益にも不利益にもならないからね」

「彼女、じつはいい人だったんですね」

「ああ、そうだよ」


 リベリオなら「そんなことはない。最悪な女性だよ」とくさすかと思ったのに、即座に肯定したので意外だった。


「だったら、ますますベルトランド様にピッタリじゃないですか?いままでは、気が強くって自分勝手でって思っていましたけど、今回のことですっかり見方がかわってしまいました」

「あのなぁ、話がすり替わっている上に誤解も甚だしいぞ。先程、きみが表現するところの『熱い抱擁と口づけ』をわたしたちがかわしていたのを見ただけでなく、会話もきいていたんだろう?だったら、彼女がベルトランド様のことが好きじゃない、いや、これは語弊があるかな?本命ではない、ということに気がついただろう?」

「ええっ?ベルトランド様が本命ではない?だったら、いったいだれのことを?まさか、エドモンド様のことを?それとも、まさかまさかのパオロさん?もしくは、さらにまさかまさかのモレノさん?でも、さすがにそれはないですよね?」

「ミオ、すまない。わたしも長椅子に座らせてもらうよ。その前に、酒がもう一杯必要なようだ」


 彼はつぶやくと、キャビネットに行ってグラスにお酒を注ぎ、ローテーブルをはさんだ向かいの長椅子に腰をかけた。


「ミオ、いまのはわざとかい?エドモンド様はともかく、どうして彼女がパオロやモレノを好きになるんだ?どうかんがえても、ベルトランド様をのぞいたら一人しかいないだろう?」

「ええええっ?じゃ、じゃあオレステさん?むちゃくちゃ意外なところでサンドロさん?」

「男だったらだれでも名をあげればいいってもんじゃないだろうっ?」

「ぼくも知っている人ですか?」

「神よ、わたしを救いたまえ」

「か、神様?」

「これは、喜劇なのか?ちがうっ!わたしだ」

「ほええええええっ?リ、リベリオさん?そんな、あんなにケンカをしていて?この前、ぼくはお二人に『ケンカするほど仲がいい』って言いましたよね?その際、二人して否定されたじゃないですか」

「あのなぁ、フツーはああいうのは肯定しないんだよ。彼女がきみにあたっていたのも、わたしがきみの素性を調べるのに奔走していたからだ。それでやっかんでいたってわけだ」

「そんな戯言、にわかには信じられません」

「戯言?それに信じられないって……。わたしはともかく、彼女が好きでもない男に口づけされて黙っていると思うか?ただだまってされるがままになっていると思うのか?」


 そんなこと、わたしにわかるわけはないんだけれど。


「とにかく、とにかくだ。わたしたちは、家の事情で気持ちとは裏腹に付き合えなかった。その感情がこじれていただけだ。だが、いい意味でも悪い意味でも、きみに感化された。それで、あんなことに……。まぁ、その点はきみに感謝しなきゃな。二人とも自分の気持ちに素直になれたし、もろもろの問題に立ち向かう勇気をあたえてもらったんだから」


 そ、そうなの?よくわからないけど。

 

 どうやらわたし、彼に感謝されているみたい。

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