表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/131

ボートに乗ろう

「パオロ、わたしが教えよう。ボートを漕ぐのなんて、コツさえつかめば簡単だ。すぐに漕げるようになる」

「ほんとうかい、リベリオ。だったら、ぜひ教えてほしいな……」

「パオロさん、ぼくが漕ぎますよ。このボート、三、四人は充分乗れそうですからね」


 リベリオだって遊びたいはず。それだったら、わたしが漕いだり教えた方がいいに決まっている。


 お兄様たちと漕ぎ比べをしていたから、漕ぐのはお手のものだもの。


「ミオ、いいかげんにしろ。そこは空気を読むべきだ」


 リベリオになぜか叱られてしまった。


 それに空気を読むべきって、空気なんてそもそも読めるものなの?だったら、どうやって?


「あ、ああ、そうだな……」


 そして、なぜかパオロは困惑している。


「パオロ様、ミオが漕いでくれるのでしたら安心ですわね。ミオ、お願いします」


 ミシェルはうれしそうである。

 さすがは女性よね。


「ええ、ミシェル。どんと任せて下さい」

「だったら、わたしも乗せてもらおうかな」

「はあ?兄上、ついさっきボートには乗らないって言ったばかりでしょう?」


 さらには、なぜか皇太子殿下も乗りたいなんて言いだした。


「エドモンド、乗らないとは言っていない。必要がない、と言ったんだ」

「同じことじゃないですか。だったら、兄上はリベリオに乗せてもらえばいい。わたしがミシェルとパオロに付き添います」

「ちょっと待て、エドモンド。子どもじゃあるまいし、彼女たちに付き添いなど必要ないだろう?」

「万が一、ということがあります。ボートが何かにぶつかるとか底に何かがひっかかるとか。そういう不測の事態に備えることは必要です」

「だったら、わたしだって何か出来るはずだ」

「泳ぐことが出来ず、ボートを漕ぐどころか、乗ったことすらない兄上が?」


 また二人がケンカをはじめたみたい。


 なんだか、最近二人はケンカが多い気がする。


「ベルトランド様とエドモンド様は取り込み中のようですから、ぼくらだけで行きましょう。ほら、パオロさん。行きますよ」


 だから、ミシェルとパオロをうながして係留しているボートへさっさと向かった。


 そうだわ、いいことを思いついた。

 モレノとボート漕ぎの勝負してもいいわよね。


 お兄様たちのときのように、負かせてやるんだから。


 なんだか、うれしくなってくる。


「だから、兄上が行っても仕方がないんですよ」

「なんだと、エドモンド。おまえだって、泳ぎだけでボートは大したことがないんだろう?」

「そんなことありませんっ!」

「そんなことあるっ!」


 いやだわ。皇太子殿下とエドモンド様は、まだケンカを続けている。

 せっかくの休暇なのにケンカだなんて。


 ほんと、男性って子どもよね。



 ミシェルとパオロとともにボートに近付くと、それは予想以上に大きいことに気がついた。


 二人並んで座れるわね。


 だから、二人に並んで座ってもらい、わたしは向かいに座った。


「ミオ、よければ教えてくれないか?わたしが漕げるようになれば、きみは好きなことが出来るだろう?」

「ええ、パオロさん。わかりました。ぼくがしばらく漕いでみますから、まずはご覧になってください」


 オールを手にとって漕ぎはじめた。モレノとアマンダのボートは、湖の縁を沿うようにして進んでいる。


 どれくらいぶりだろう。もう四、五年ぶりくらいになるかしら?


 ボートは、そんな時間の経過などないかのように順調に進んでいる。


「モレノさんっ!」


 どうやら、モレノは漕ぐのを中断して休憩しているようである。

 ボートが止まっている。


 少しだけ速度を上げ、彼らに追いついた。


「やあ、ミオ。へー、きみはボートも漕げるんだな」

「モレノさん。ええ、まぁちょっとだけですけど」

「すごいですね、ミオさん」

「アマンダさん、大したことありませんよ」


 お世辞でしょうけど、うれしくなってしまう。


「だったらミオ、勝負だ」

「望むところです」

「ここは、桟橋から一番遠いんだ。ここから桟橋まで、というのはどうだ?」

「わかりました」

「きみは、ミシェル嬢とパオロを乗せている。ハンデをつけなければな。きみが先にスタートするんだ。きみがスタートしてからゆっくり五十数えよう。それから、わたしもスタートする。これでどうだい?なんなら、百数えようか?」

「五十でいいです。百だったら、ぼくは桟橋についてしまいます」


 彼を挑発するつもりはないけれど、なめられても困る。


「ほう、言ったな?それで、何を賭ける?」

「何を賭ける?賭け事なんて……」

「あ、そういうのは嫌いだったか?」

「大好きですよ。ですが、以前ブノワさんとカミーユさんの真っ裸事件のときに、賭け事はどうのこうのっておっしゃっていましたから」


 あの真っ裸事件は、わたしの記憶にまだあたらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ