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異世界ブギウギ。  作者: 渡良瀬ワタル
114/373

(ダンジョンマスター)3

 脚力を試した。

すると、あっという間に先頭の目前。

俊足を超えていた。

イカ天・・・否、韋駄天・・・か。

 俺も驚いたが先頭の奴も顔を引き攣らせた。

其奴の脇を擦り抜けた。

二頭目、三頭目をひょひょいと躱し、高い木が目に付いたので、

大きくジャンプして太い枝に飛び乗った。

 群は転がるかのようにして急停止。

取り乱しながら方向転換した。

怒り露わに、こちらに向かって来た。


 まずは水魔法、ウォーターチップソー。

丸ノコギリをイメージ。

直径1メートル、厚歯とした。

勢い良く回転し、空気を揺るがした。

レベルが上がったのを感じ取った。

それを先頭に向けて縦回転で放った。

 其奴も野性の勘が働いたのだろう。

訝しむ目色。

でも魔物如きに見極められる訳がない。

直ぐに身体が真っ二つに切り裂かれた。

チップソーはそのまま地面をも切り裂いて、大きく破裂した。


 二頭目には土魔法、アーススピア。

長さ1メートルの太い土槍をイメージ、放った。

 それが二頭目の額から入って下腹部へ突き抜けた。

これまた地面に突き刺さって破裂した。

 威力が過大だ。

突き抜ける必要はない。

EPを微調整。


 置かれた状況に気付いた三頭が再び急停止。

悲鳴を上げて方向転換を図った。

逃走するようだ。

見逃す訳には行かない。

 三頭目には威力を下げた火魔法、ファイアーボール。

火弾を放った。

後頭部を直撃して破裂、派手な炎が周囲に飛んだ。

 四頭目にも威力を下げた風魔法、ウィンドボール。

放った風弾が尻に当たって破裂、下半身を細切れにした。

 五頭目には、もっと威力を下げた光魔法、ライトボール。

光弾をコントロールし、脇腹直撃で、身体を真っ二つにした。


 破裂した火弾によって三頭目とその周辺に火災が発生していた。

これは拙い、拙い。

調子に乗りすぎた。

俺は慌てて辺りに水魔法、ウォーターボールを連発した。

火災を抑え込もうと必死で放った。

十発ほどで鎮火させた。

反省、反省。


 透視スキルを活用して魔卵を探した。

三頭が持っていた。

切り剥がしは風魔法、ウィンドカッターの出番だ。

ススッーと縦横斜めに深く切り分け、念力で魔卵を取り出した。

付着していた血肉は光魔法、ライトクリーンで洗い落とした。

大きさに差はあるが、売り物になる。

そのまま虚空の魔卵スペースに収納した。


 嶺に駆け上がった。

探知スキルの地図で位置確認。

間違ってはいなかった。

そのまま山を駆け下った先が国都だ。

途中で魔物達と遭遇したが、FとかEの低ランクばかり。

時間の無駄なので脚力に物を言わせて突っ切った。

 暫く駆け下っていると、破裂音が聞こえて来た。

魔法ではなく、魔物のブレスに違いない。

探知スキルで確認すると、正しくそうだった。

地形的にも、人数的にも来る途中で見た連中だった。

 冒険者パーティ五人が魔物三頭に押されていた。

大きな岩を挟んでの攻防。

既に三人が負傷、残った二人は防戦一方。

Cランクの魔物三頭に押され、全滅は必至の状況になっていた。


 ヒヒラカーン。

猿の種から枝分かれした魔物で、長い手足を活かして跳ぶ、走る、

木から木へ飛び移ると厄介だ。

二足歩行時は2メートルほど、おまけに知能も高い。

加えて火魔法、ブレスフレイムを吐く。

 奴等は自分達が優位に立っているのが分かっているのか、

けっして無謀な攻めはしない。

ブレスフレイムや投石で牽制しながら、ジワジワと締め上げて行く。

 それを見て俺は助ける事にした。

姿を隠した通りすがりの名無しなら問題ないだろう。

冒険者達の死角を探して加勢した。

 使う魔法は一般的な水魔法、ウォーターボール。

探知スキルで三頭をロックオン、ホーミング誘導。

威力を微調整、それぞれに命中するように放った。

高々と打ち上げられた水弾三発が極端な曲線を描きながら、

目標に向かって降下して行く。

 一頭が気付いたのか見上げた。

すると其奴の顔に当たって破裂した。

運悪く首の骨が折れたようだ。

そのまま真後ろに倒れた。

ピクリともしない。

 二頭目は肩に当たって破裂した。

身体を捻るようにして転倒、二転、三転。

それでも執念か、起き上がろうとした。

 三頭目は頭に当たって破裂した。

前に倒れるが石頭なのか、こちらも起き上がった。


 冒険者二人は驚きながらも機を見て反撃に転じた。

弱っている二頭を目掛けて駆け寄った。

一人は槍を両手で構え、起き上がった奴に突っ込んで行く。

二人目は弓を投げ捨て、起き上がろうとする奴を蹴り倒し、

腰の短剣を抜いた。

 結果は知らん。

知ろうとも思わない。

俺は即座に現場から離れた。

足を急がせた。

暗くなる前に帰らなくっちゃ、子供なんだから。


 山を下りたあたりでスキルを解いた。

子供が身体強化スキルを使い熟していたら注目を浴びてしまう。

鑑定スキルも解き、探知スキルだけを微調整、緩め。

スキルを自重した。

 麓の草地の獣道を伝い歩くと予想通り、冒険者パーティと出くわした。

重装備の六人組。

リーダーらしき男に尋ねられた。

「おう、ボウズ、一人か」懸念する声。

「はい」

「一人で薬草採取か」

「はい」

「大丈夫だったか」

「逃げ足には自信があるので」

「ハッハッハ、そうだな、それは良い。一緒に帰るか」

 他の連中も心配そうな顔で俺を見ていた。

「お願いします」猫を被ることにした。


 何事もなく北門を潜ることが出来た。

真っ直ぐ幼年学校に戻ったが、アリスは戻らなかった。

翌朝、朝早く目を覚ましたのでアリスを探してみたが、

戻っていなかった。

念話も通じない。

もしかして、脳筋だからコアに手こずっているのか・・・。

たぶんそうなんだろう。


 国都の南区を管轄する南町奉行所の奥まった一角で、

関係者を集めた会議が行われていた。

 奉行が口を開いた。

「ザッカリーファミリーがアジトの屋根を修理した件だが、

例の倉庫の屋根に空いていた穴と同じだと言うのか」

 スラム地区を担当する与力が答えた。

「修理中の業者をこっそり呼び出して尋ねましたところ、

綺麗に空けられていたそうです。

件の業者も不思議がっていました。

おそらく倉庫と同じ様に闇魔法が使われたのではないでしょうか」

 ザッカリーファミリーを担当する同心が言う。

「ザッカリーの護衛の一人が姿を消しました。

箝口令が敷かれているので不確かなのですが、

何やら暴力沙汰に遭って殺されたようです」

 スラム地区を見廻る同心が言う。

「アジト周辺の警戒レベルが上がっています」

「正体不明の闇魔法の使い手か」奉行が全員を見回した。

「ファミリーの結束が固いので、

事情を知ろうにも突っつきようがありません」ファミリー担当の同心。

「倉庫で半殺しになっていた二人に【奴隷の首輪】を嵌め、

聞き出すのが早道ではないかと思われます」スラム担当の与力。

 奉行が与力に尋ねた。

「口が利けるまでに回復したのか」

 スラム担当与力が応じた。

「もう二日もあれば口が利けるようになるそうです」

「よし、回復したら【奴隷の首輪】を嵌めて、しっかりと聞き出せ。

ついでだ、鑑定スキル持ちを呼び寄せろ。

二人のスキルを調べて役に立ちそうなら、そのまま奴隷にしてしまえ。

今にも死にそうなところをボーションや治癒魔法を使って助けたんだ。

奉行所の奴隷にしても罰は当たらんだろう」

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