出発とひと時の幸せ
祝、50話目〜!
「ホワイトデイさん」
「はい?どうしました」
「・・・あの、荷物ありがとうございます。服まで用意してくれて」
「そんな、良いんですよ。可愛いセナさんの為ですからね」
2人、厳密に言ったら2人とひとつの魂は、今現在、飛竜艇と呼ばれるものに乗ろうと、搭乗口で待っている状態だった。
初めての乗り物に高揚感はある、目は見えないが。
けれど、それ以前に不満なのはセナが現在着ている服だった。
「あ、あの服装なんですけど」
「フロエシアは凍土と言われるぐらいですからね。とても寒いので、暖かいでしょう?」
夏に近づいている現在ではあるが、フロエシアはそんなもの関係ない。最北端に位置する国らしく、それはもう寒冷地も寒冷地だった。
「はい。あったかいです」
「良かったです〜」
「スカートじゃなければ、もっと良かった・・・」
そう、セナが不満気な理由は・・・。
ズボンではなく、スカートを渡された事だった。
「えぇー?可愛いのに〜!!」
「あ、歩きづらい。長いから余計・・・っ」
「はぁ、可愛い。時世が時世なら犯罪ですよ、これ」
「気持ちが悪いなこいつ」
ミラの言葉も納得できる。セナも最初は拒否しようとしたけど、ホワイトデイの力説とゴリ押しによって、なくなくスカートを履くことになった。
「私に絵の才能があれば、今にもこのご神体を後世に伝えるべく描き残したのに・・・、ああ!!魔法の才能と美貌しか与えられなかった私はなんと罪深いのでしょう!!」
「充分では・・・」
「む?」
少しだけ、風が強くなり、それに気がついたミラはホワイトデイの後ろに隠れた。
「あ、来ますよ。飛竜艇」
「え?」
あまりにも突然な強風。巨大な空を飛ぶ船と、それを運ぶ飛竜がやってきた。
セナは思わずだった、恐らく彼女を知っている人間がいたら、その行動に驚くだろう。
「きゃああっ!!」
「え」
驚いたのはホワイトデイだった。
強風が吹いてスカートを履く女性ならばそれを抑えるのは当然のことだろう、ホワイトデイだってそうする。
けれど、セナは?剣術ではアクロバティックに動くし、風呂上がりはキャミソールのみで出てくる程の無頓着のセナが。
「え、え?え?」
「──っ」
「せ、セナさんですか?今の声は」
「ち、違う。ミラ」
「な訳無いだろう」
乙女みたいな声を出して、スカートを抑える仕草はまさに絶世の美女だろう、国が国なら傾国している。
「フロエシア行きの方〜、どうぞー」
「い、行きます」
「待って下さい!!今、え!?せ、セナさん!?そんな声出すんですね!?」
「〜〜〜ッッ!!今日のホワイトデイさんおかしいです!!!」
出だしから、賑やかだった。
船内は豪華だった。
ホールは綺麗だし、部屋もセナが借りている寮よりも広い、そして何よりも。
「お、美味しい・・・っ」
食事の美味しさにセナは驚愕した。
今食べているのはローストビーフ、フォークを刺した瞬間、あまりにも薄っぺらいお肉に落胆したセナだが、口に入れた瞬間それは広がった。
「柔らかい、それなのに噛み応えがある・・・。ソースも、蜂蜜をベースに色んなベリーの風味がある、凄い。ここまで味の喧嘩が起きないソースがあるの?」
「評論家みたいになりましたね・・・」
「食べれないのが悔やまれるな」
そんな、美味しい食べ物に目を輝かせているセナを見て微笑んでいるホワイトデイと、味を想像してそれを楽しめない事を憂うミラ。
「ふふ、それに気づくとはやりますね。お嬢さん」
「とても美味しいです。シェフさん」
「ふふふ」
「へへへ」
なんてやり取りまでし始めている。側から見れば貴族の一幕だが、残念ながらセナは元奴隷である。
「コホン、セ・ナ・さ・ん〜?」
「え、な、なんですか・・・」
ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべながら、ホワイトデイはコショコショと耳打ちをし始める。
「アレ、履いてきました?」
「あれって・・・?」
「ほら、こしょこしょこしょ・・・」
「ああ、はい。履いてますよ」
なんて事なさそうに頷くセナに、ホワイトデイの口角は更に上へと上がっていく。
「は、恥じらいの基準がわかりませんねぇ・・・」
「──?」
「おい、アレとはなんだ」
「黙ってください」
「死にたいのか?貴様」
「あの、喧嘩しないで・・・?」
なんだかんだ、3人は仲良く?飛竜艇を楽しむのであった。
「・・・セナさん、退屈じゃないですか?」
「え?」
今現在、3人は窓越しから外の景色を見ていた。見えない人がひとりいるが。
「お部屋に行っていても、構いませんよ?」
「大丈夫です。ここにいます」
今現在、セナはホワイトデイの膝の上にいた。
今はどこにいるか、もうそろそろフロエシア領に入るとか、色々とホワイトデイが教えてくれていたのだ。
「しかし・・・」
「ホワイトデイさんが、嬉しそうに話してるから、私も楽しいです」
「──、ふふ。セナさんには敵いませんね」
愛おしさのあまり、ホワイトデイはセナの頭を撫でる。
前髪を留めているカチューシャを見て、更に膝の上に座っている子供への愛情が湧いてしまう。
「目が見えないのに、変な奴だ」
「見えなくても、ホワイトデイさんが教えてくれるもん」
「ふむ・・・。ホワイトデイ、お前はやけに詳しいな」
「そう、ですね。──フロエシアは私の故郷なので」
セナは合点がいった。今日、やけにホワイトデイのテンションが高い理由が。
「そうなんだ、故郷に帰れるから今日は変なんですね」
「あれれ、まさかセナさんに変と言われる日が来るとは・・・」
そこはきっと誰もが思うだろうと、ミラは内心で突っ込む。
「でも・・・そうですね。久しぶりの帰郷ですから、少しだけ浮き足立ってますかね」
「ホワイトデイさんの故郷・・・、なんだか嬉しいです」
「え?」
「ホワイトデイさんの事、私は何も知らないから・・・。だから、少しだけ知れて嬉しいな」
未熟者と頂点、教師と生徒であるため、セナは恩人でもあるホワイトデイに対して、少し引け目を感じていた。
でも、自分の故郷に帰ると少しだけおかしくなっちゃうホワイトデイを見て、己と同じ人間なのだと親近感を覚えた。
「全くもう・・・可愛いんですから」
「わぁ〜」
思わず、セナに頬ずりしてしまうホワイトデイ。
「私の子供になりますか?」
「それはちょっと・・・」
「では、後で部屋に赴きアレを見せて貰っても良いですか?」
「え?はい・・・?」
ホワイトデイ、思わずガッツポーズ。
「アレとはなんだアレとは」
「失せて下さい」
「何なんだ貴様・・・、この飛竜艇を落とすぞ」
「本当にやめてね、ミラ」
先程から言っているアレについて、ミラは何度も言及するがその度にホワイトデイは辛辣な言葉で教える事を拒否し続けた。
「なんだ!アレとは!!なんだなんだ!!」
「ミラまでおかしくなっちゃった」
それも仕方ない事だった、だってミラは退屈だから。
食べ物も食べれない、飛竜艇の乗り心地もわからないし、景色はさっきから白一辺。何を楽しめばいいのか。
「はぁぁぁ、子供ですね。仕方ないですね、アレというのは・・・」
「ああ」
「──もうすっごいんですよ」
「何がだ」
「それはもう」
「何がだ!!!」
「あぁ、楽しみですね」
「貴様ぁ!」
魔法陣が展開され始める、それを慌てて止めるセナ。
「やめて!?」
「本当に壊すぞ、この船」
「はいはい。良いですか、アレと言うのは、ヒ──」
「まもなく、寒冷が訪れます。廊下、およびホールにいるお客様はお部屋へとお戻りください。繰り返します」
「では、お部屋に行きましょう。セナさん」
「え、う、うん」
「おい待て」
結局、ミラがアレを知る事は無かった。
章設定をしたいのに、やり方がわからん。




