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デート

魔王、転生失敗 33

 城下町の噴水前でセナはひとつ息を溢した。

 太陽の陽射しを一身に浴びながら、自分の服装を一目見る。

「もう少し、涼しい格好で来れば良かったかな」

 春も終わりかけ、お世辞にも爽やかとは言えない風と陽射しは容赦が無い。

 待ち合わせ場所である噴水の前でなければ、汗を少し垂らしていたかもしれない。

「遅いな」

「一緒に行けば良かったね」

 暇なのでミラの話し相手になって待つ事数分は経っている、特段急いでる訳でもないから、セナは気長に待っていると。

「ごめん!!お待たせ!!」

 パタパタと走ってきたイザベルの声が聞こえてきた。

「ば、馬車に間に合わなくて・・・。ごめんなさい、かなり待たせたわよね」

「ううん、私もさっき来たから」

「ありがとう。──ふぅ」

 質素なチュニックとショートケープ、短パンというセナの服装とは違って、イザベルの服装はかなり女性らしかった。

「可愛い、イザベルってスカート似合うね」

 元のスタイルが良いからか、黒色のロングスカートはかなり決まっていた、白色のフリルがついたシャツも可愛らしい。

「ほんと!?これね、私のお気に入りなの!」

 ピョンピョンと跳ねて喜ぶイザベルは元気いっぱいだった、走ってきたり、飛び跳ねたりしているのに汗ひとつかかない事にセナは驚く。

「熱くないの?」

「全然?これ、見た目よりも生地が薄いのよ、ほら、触ってみて?」

 そう言われて高そうな布地に触ってみれば、確かに薄手だった。

「へぇー、こういうのもあるんだね」

「セナは、あれね?男の子みたいよね、でもとても可愛いわ!!」

 セナのケープのフードを掴んではしゃぐイザベルを微笑ましく見るのも良いけれど、いかんせん人目が増えてきた。

「イザベル、行こ?人集まってきた・・・」

「あら、本当ね。じゃ、行きましょう!!行く先ないけど!」

「おぉ〜」

 こうして、方向音痴本日の予定無し2人組はぶらぶらと城下町を練り歩くのだった。



「ここら辺で遊ぶのは初めてね〜」

「そうなんだ?」

 2人で屋台を物色しながら歩いていれば、イザベルは思わずそう溢した。

「ええ。いつもは貴族街で買い物してるの、この服もそこで買ったのよ」

「・・・貴族街」

 セナには無縁な話だった、いや、貴族ではあるけれど。それは名前だけの飾りでしかない。

「だから今日はとても新鮮ね!屋台なんて貴族街じゃ見ないもの!」

 あちらこちらを楽しそうに見渡すイザベルは普段よりも幼く感じた。

 学園で会えば、親しみやすいお姉さんという印象をセナは持っていた分、少し面白い。

「お、セナちゃん!こっちこっち」

 ふと、屋台のお爺さんに話しかけられる。

「ルマドおじさん!」

「今日もなんか食べに来たのか〜?」

 ニコニコと人当たりの良い笑顔を浮かべて、セナの注文を聞く店主と、それに答える様に微笑むセナ。

「うん、えっと、これ2個ください!」

「はいよ、肉饅頭な!ちょっと待ってな」

 そう言ってセナから代金を貰って調理に取り掛かる店主ルマド。

「顔、覚えられてるのね?」

「うん。よく来るんだよ、ここら辺」

「そうなのね〜、あ、ごめんなさい。お金」

「いいよ、これぐらいなら出せるから」

「でも・・・。セナって節約したいのよね、お小遣い少ないから」

 そういえばそんな事言っていた。

「え、あ〜、まぁ。じゃ、じゃあ!次、何か奢ってほしいな」

「ええ!!任せて!」

 嬉しそうに意気込むイザベルと会話をしていれば、またセナを呼ぶ声が聞こえた。

「セナちゃん!!ほら、こっちおいで!」

 反対側のおばあちゃんから手招きされて、セナはそこに向かっていく。

「これ、試作品なんだけど食べてみて?美味しかったら、お店に出そうと思うの」

「いいんですか!?ありがとうございます!」

「ほら、そちらのお友達も」

「え?あ、はい!ありがとうございます!」

 包みを開けてみれば、それはスライスされたジャガイモだった。

 湯気が出るほど揚げられており、味付けであろう白いソースは鼻腔をくすぐる。

「こぉら!!今はうちのを食べてもらうんだよ!そんな味の濃いもん食ったら味覚狂うだろ!!」

「うっさいね!!あんたの手際が悪いから、セナちゃん達お腹空かせちゃうでしょ!!」

「あ、あはは」

 買い食いが趣味のセナは露店の多いこの場所では可愛いがられており、顔を覚えた店主は何人もいた。


「セナ〜!このりんご食べてけよ!」


「お、セナちゃん今日は休みなのかい?」


「セナ!!おーい!!セナ来たぞ!!なんか作ってやれよ!!」


 あちらに行けば名を呼ばれ、こちらに行けば名を呼ばれる。

 貴族街とは違って人の勢いが凄く、体力オバケのイザベルは少しへとへとになっていた。



「ふぅ、凄いわねぇ」

「一杯食べたね」

「お腹一杯よ。ふふ・・・、セナって愛されてるのね」

 ビンに入った飲み物を飲みながら、セナははにかんだ。

「んー、気づいたら顔を覚えられてたみたい」

 どこか恥ずかしげに頭を掻くセナ。

 カチューシャによって前髪は隠れているから、本当に恥ずかしいのだろう、頬が赤く染まっていた。

「みんなの気持ち、私は分かるわよ。セナって、なんだか可愛がりたくなるもの」

「え、そうなの?」

「ええ。なんていうか、一生懸命っていうか、素直っていうか。そこが良いのよね」

「んー、ふふ。いつも必死なだけだよ」

 けれどしかし、褒められるのは嬉しい。

「ありがとう」

「いーえ、さて、次はどこ行く?」

「あー、どうしようか」

 丁度今はお昼であるが、丁度お腹は膨れている。

 セナは頭を捻ってみるが、いかんせん答えは出てこない。

 ──どうしよう?

 思わず、ミラに助けを求めるも。

「行きたいところに行けば良いだろう」

 なんて、まるで使い物にならなかった。

「セナって普段、城下町で何してるの?」

「さっきみたいに買い食いして・・・、図書館行ってるかな」

「えぇ!?セナが!?」

 それは一体どういう意味なのか。

 苦笑いを浮かべながら、セナは図書館に行く経緯を語った。

「私、他の人より魔法の理論が遅れてるから、少しでも追いつきたいから、図書館に行ってるの」

「・・・」

 以前、魔法理論の授業があった時、基礎が出来て無さすぎてアルマデルに引かれた事を思い出す。

 試験の日、筆記を受けていたら壊滅していただろう。

 

「あ、あとこの大陸の歴史とか──わぷっ!?」

「偉い!!偉いわ!!セナ!!」

「イ、イザベル?」

 何かと思えば、イザベルに抱きしめられていた。

 そしてそのまま凄い勢いで頭を撫でられている、火でも起こさんという勢いだ。

「なんて偉いのかしら!感動したわっ」

「お、大袈裟・・・」

「いいえ?大袈裟なんかじゃないわ、不貞腐れずに追いつこうとするのは素晴らしい事よ」

 身体が離れて、イザベルの純粋な瞳に射抜かれる。

「セナ、貴女は絶対!凄い魔法使いになるわ!」

「ん、んー、ありがとう・・・」

 あまりにもな熱血にセナは少し戸惑うも、イザベルの言葉には確かな自信があるんだろう。

「じゃ!その図書館に行きましょう!!折角だし!」

「あ、うん。こっちだよ」


 手を繋ぎ合う2人は、ただの少女達と相違なかった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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