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97 海は広いな。ヒナル達の秘密?


 ~ルイス視点~


 「おおおお!!う~み~~っ!なのじゃあああああああ!」


 「すごいですぅ~!ほらほらお兄様っ!!」


 「わぁああああっ!レイジ君!凄いですよ!!青い~っ!綺麗~っ!!」


 「うんうん~っ!凄いね~っ!!綺麗だね~っ!!レイジ向こうまでずっと海だよ~っ!」


 俺は、エアロやミランダ、コタースやスルトに手を引っ張られながら、綺麗な透き通るような青い海を見ながら、美しい砂浜の海岸線を歩いていく。特にミランダはここ最近、とてもベタベタしてくるようになっている。というのも…、つい数日前に俺達は一つになった。せっかく婚約者にもなったのに、いつ言い出そうかと気になっていた所、クリステル達がそんなムードを作ってくれたからだった…。それ以来、前に比べてお互いが更に信頼しあえる関係になった。


 「レイジ君。ありがとう…。やっと夢がかなった…」


 「ちゃんと受け止めてあげるのに時間がかかってごめんな…」


 ミランダはそう言いながら、手で掴んでいた俺の手をぎゅっと力強く、そして痛くならない程度に握りしめてくる。


 「ううん!いいよ!それに皆いい人で良かった。本当は、レイジ君を一人占めしたいに決まってるはず…。でも…、だから私もレイジ君が他の子とイチャイチャしていても不思議と嫉妬したりしないんだと思う!だから大事にしてよね?」


 「勿論さ!」


 そんな会話をスルトは横目で聞きながら…。


 「ず~る~い~のじゃ…。我も甘えまいのじゃ…。レイジ~っ…」


 スルトは少し、悲しい顔をしている。本当なら抱き締めてあげたいが…。人間でいえば、まだ11歳くらいに見える。だから少し抵抗感もある。俺はそっと優しく、スルトの頭に手をのせて髪を優しく触りそのまま頭部を優しく撫でる…。


 「ふひひひ…なのじゃ!ありがと!レイジっ!のじゃのじゃ!」


 少しだけ満足したのか、スルトは表情の筋肉を緩ませ、口元が緩みニコニコとした表情を見せる。それは、溶けたスイートポテトのような甘ったるい溶けた表情だった。




………。

……。

…。



 しばらく海岸線を歩いていくと、エアロは一度立ち止まる…。エアロは、指をとある場所の方へと指して、すぐに持っている魔術師の杖を手にする。


 「お兄様っ!気を付けてください!ジャイアントクラブが数十匹います!」


 エアロの指差した方向を見ると、店で売っているカニの数百倍以上ある巨大な濃緑色をしたカニの群れが現れる。特に方手のカニの爪が異様に大きく鋭く尖っている。巨体に似合わず、動きも素早く、油断していたら体当たりをされそうなくらいだ。


 「なんか変な泡を吹いているのじゃ!!面白いのじゃ!」


 スルトはカニの泡を見て興味が沸いたかのように近付こうとする…。


 「スルト様っ!あの泡は毒性がありますっ!図鑑で見た事ありますっ!」


 「のわっと!!危なかったのじゃ!!エアロ!ありがとうなのじゃ!」


 エアロの言葉にスルトは3歩ほど後ろに下がる。確かにジャイアントクラブの口元から出ている泡をよく見れば紫色の異色した泡だった。


 「遠距離から~っ、攻撃の方が良さそうだね~っ!!皆~っ!ウチから先制攻撃をしかけるね~っ!」


 コタースは、海道横の岩で覆われた場所を利用して華麗に次々へと岩から岩へとジャンプしていき、高台へと上がる。一番高い場所へと上がると、腰にぶら下げていた弓を手に取り、矢をつがえる…。


 「いっくよ~!新しい技~っ!!」


 コタースが弓を上空に向けて構えると矢じりから真っ白い光が放たれる。


 「ホーリーレインだよ~っ!!当たれ~~っ!」


 掛け声とともに光を帯びた矢がまっすぐ上空へと進むと、ぱんっと乾いた音とともに光の雫がジャイアントクラブの辺り一面に降り注ぐ。光の魔法の矢が次々とジャイアントクラブの胴体を貫通させていく。


 「私も負けませんよっ!!お兄様っ!見ててくださいっ!」


 エアロは詠唱を始めると、光の魔法の矢が突き刺さっている数匹のジャイアントクラブの周りに小規模の竜巻が発生する。


 「沸き上がれ業火よ!そして躍り狂え!全てを焼き尽くせっ!!ファイアトルネードっ!」


 掛け声とともに竜巻が起こっている地面から勢いよく炎が沸き上がる。ごうごうと凄まじい炎の音が響き渡る。数秒もしない瞬く間に竜巻が赤色の炎で覆われた竜巻となり、ジャイアントクラブを次々と焼き払っていく。すっかりとジャイアントクラブの緑色だった胴体が赤色へと変わっていく…。その焼かれたカニの姿を見たエアロは…。


 「お、美味しそうですっ…」


 「ちょいちょい…、エアロさん…?」


 「はい?なんですか?お兄様っ?あっ!お兄様も美味しそうって思ってますか?」


 な、なんでそうなる!一応、毒がありそうなカニだぞ!?そんな事を考えていれば、ミランダとスルトが生き残っているジャイアントクラブを新しいスキルを使い蹴散らしていく。あれからメンバー全員、随分とレベルが上がったものだ。


 「レイジ君?どうだった?私達もレベル上がったでしょ?レイジ君だけじゃないんだから!」


 ミランダはそういうとパチリと片目を閉じてウィンクをする。その表情がとても可愛らしい。



………。

……。

…。





 ~ヒナル視点~


 お兄ちゃん達が夕方まで行動している間、当番以外の私達は異空間ストレージ内で、料理をしたり洗濯したり、掃除したりしている。一時的に同行するクローディアやケット・シー族のチェルシーちゃんやペルシアさんも何もしないで待っているだけでは…、と手伝ってくれている。


 「くんくん!くんくん!はぁはぁ…!」


 「な、何をしているんですか?チェルシーちゃん!?」


 チェルシーちゃんは誰かの下着を手に取り、一生懸命にその下着の匂いを嗅いでいる…。


 「にゃにゃ!!!」


 私に呼ばれてビックリしたチェルシーちゃんは、慌ててこちらを見る。


 「にゃっ、にゃんでもにゃいにゃ!!」


 チェルシーちゃんの手に持った下着をよく見ると、お兄ちゃんの下着だった。


 「こ、これはだにゃ…!そ、その…、何て言うのか…。べ、別にいい匂いだにゃ~にゃんて匂いを嗅いでいた訳じゃないにゃっ!」


 「へー…」


 私は、その行為に引いていた訳じゃない。お兄ちゃんの下着の匂いを他の人に嗅がれてしまったのが…ね?でも…。


 「じ、じゃあ…、一緒に匂いを嗅いじゃう…?」


 「そ、それいいにゃあ!」


 すーっ、はーっ、すーっ、はーっ!大きく匂いを嗅ぎ、ゆっくり息を吐く。まるでラジオ体操の深呼吸をしているみたいに。私は洗濯された兄のパンツの匂いを嗅いで少し発情してしまう変態な妹なのだ。


 「よ、良かった。仲間がいて…」


 「ば、バレたら仕方ないにゃ!一緒にこれから嗅ぐにゃ!」


 一緒にすーは、すーはと匂いを嗅いでいると、私達の目にクローディアが居た…。


 「あ…」


 クローディアはまるで、私達の見てはいけない行動を見てしまったかと言わないばかりな変な声を出す。


 「こ、これは…。そ、その…」


 「にゃにゃっ!そうにゃ!!これはそう!あれにゃ!」


 「う、うんっ!これはお兄ちゃんの下着の匂いが変な匂いがしたから…」


 そう言うと、いきなりクローディアの顔が私の目の前に現れる。


 「ヒナル…。うんヒナル…!やっぱり私達は似てるね!うんっ!」


 「「へっ??(にゃ!!)」」


 私の手を取り、何故かクローディアは固く握手をかわす。


 「じ、実は私もルイスさんの汗の匂いが好きで…。こんな事、実の妹で恋人でもあるヒナルに言うのはおかしいけど…」


 ち、ちょっとまって!クローディアもそっちだったんかいー!?


 「わ、私もルイスさんの事…、少し気になりはじめちゃって…ってごめんなさ~い!!」


 クローディアは両手で顔を覆いながら赤くして謝ってくる。


 「い、いやいや!大丈夫だよ!お兄ちゃんはああ見えて包容力あるし…!更に一人増えたくらいどうってことないよ!」


 「にゃにゃ!一人増えても二人増えても一緒かにゃ!?」


 チェルシーも目を輝かせながら、そう言ってくる。お兄ちゃんはどこまで人を好きにさせる魔法を使うんだろうか…。嫉妬というよりは、皆良い人だから…。妹として見るなら色々な人にお兄ちゃんが好かれるのが何故か嬉しかった…。

 


 



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