75 少女とルイス達…
~ルイス視点~
目の前にいた女の子…。ヒナルくらいの歳なのだろうか…?目の前に倒れていて声をかけた。この辺は暑くフードを被っていたからか最初は少女は普通にしていたけど、俺の顔見て悲鳴をあげて倒れた…。
「お兄ちゃん?やっぱり気になる?」
「うん。なんで、俺の顔を見て倒れたんだろう?」
「兄貴~っ…、まさかかなり前に、この女の子に何かしたんじゃないのか~?」
「するわけないだろ!?俺がそう言う風にみえるわけ?!」
「フツーにアンタならやりかねないわね!やっていいのは私だけ!!いい!?私だけなんだからね!」
「はいはい…」
なんか、ケアルがぎゃーぎゃー騒いでいるけど…。しばらくして…。
「んっ…んん…? はえ…私は…」
「大丈夫?はい、これ水だから良かったら飲んで?」
少女は水を受け取ると、俺と視線が合った…。
「あ…ありがとうございます…。ぇっ!い、いや!!殺さないで!!殺さないで!」
「ち、ちょっと!?」
「レイジ!お主は何をやったのじゃ?!まさかついに獣になったのじゃ!!」
「いや!だから意味分からないって!」
少女を見るとびくびく震えている…。
「あ、あの?私のお兄ちゃん、何かしたの?」
「……」
無言の少女に俺も問いかける
「えっと、多分… 俺達は初対面だと思うけど…。俺達はつい一昨日、エルドアス王国からこっちに来たばかりなんだ…」
「お主、誰のおかげでこれたと思っておる!」
いきなりぴょこっとバハムが顔を出す。
「はい…。バハム様のお陰です!」
「うむ!感謝すんだぞ!我の背中に乗せた事は歴史的な意味をするんだぞ!」
バハムートことバハムが眼を瞑りながらニコニコして頭を差し出してくるから、ナデナデをする…。
すると少女が突然…。
「勇者様!!兄さんをもう追わないでください!お願いします!」
「えっと、話がよく分からないんだけど…」
「貴方のお兄さんは誰かに追われているの?」
少女の隣にいたヒナルは少女に問いかける…。
「えっ…」
少女は困惑したように俺の顔を見る…。
「君は誰かと勘違いしているのかな?君の兄さんとは会った事もないし、もちろん、君ともはじめてなんだ…。」
「そうなのじゃ!お主は魔族じゃろ?我も魔族で王様なのじゃ!!ほれ!この可愛いぷりちーな角が何よりもの証拠なのじゃ!」
「お、王様…?魔王様?」
「そうなのじゃ!まぁ…5ヶ月前に、我の父は死んじゃったのじゃがなぁ…」
「でも!!勇者様… ルイス様は魔族をころしているのでは!?」
「ち、ちょっと!俺が魔族を殺してるって?!」
そこにクリステルがやって来る…。
「お嬢さん?ルイ… いやいや、レイジはどんな種族も関係なしに助けるようなお人好しな方ですよ?」
「お人好し言うなっ!」
「困った時はなんであろうと助けようとする所がレイジ君の良い所なんだよね。たまにこっちも巻き込まれるけど…」
「み、ミランダ…、お前まで…」
「そうなのじゃ!ここにいるほとんどが皆、レイジに助けられたのじゃ!我も助けてもらったのじゃ!」
「えっ…でも…。魔族を殺して楽しむような人…。うん…それに間違いないよ!その顔も声も…」
「俺は一度も魔族を殺そうなんてした事ないよ?」
「でも1ヶ月くらい前に…。私達を追って…。兄ちゃんも…」
ん?なんか話が本当に噛み合わない…。俺が?なんで?
「1ヶ月くらい前って行ったら何やっていたっけ?」
「兄貴に風呂はいってる所を覗かれた…」
「わ、私の胸を足を滑らせたからってもんでいたではないか!?」
「うわ~っ!フィリシアの胸を~っ!?これ~っ、本当なら死刑ものだね~っ。でもね~私も~狼だぞーって食べられたんだよね~」
コタースの発言に皆して、俺の方を見て…。
「きも~」
と言われる…。しかも皆楽しそうに…。
「じ、じゃあ…、本当に今日、こちらに初めて来たのですか?」
「ああ!そうさ!ところで、君のお兄ちゃんってなんなんだ?」
「ハロルド…」
「ハロルド?君のお兄ちゃんの名前かな?」
「はい…」
「ハロルドさんはどうしたの?」
「勇者ルイスに魔族だからと殺されそうになったところを私が囮となって…」
「勇者ルイス? いや、俺が一応、勇者ルイスだけど?」
俺はそう言って背中に背負っている聖剣エクスカリバーを見せる。
「これが聖剣エクスカリバーだよ」
「でもルイス…さん…がエルドアス王国で魔族倒して英雄になったって…」
いきなりスルトが横から飛び出してきて…。
「我の旦那様が倒したのはエルドアス王国を破滅させようとした女神崇拝教のバカなのじゃ!故に我はぴんぴんしてるのじゃ!」
「あ…」
「ただ夜は狙われるかもしれないかもなのじゃ!」
「それはないから安心しろ!」
「ちぇー!つまんないのじゃ!」
何故かスルトは頬を膨らませて怒る。
「後、私の兄ちゃんの恋人達も勇者に寝取られてしまったらしくて…」
「まぁっ!!!そいつを今すぐ連れてくるのです!ぎったんぎったんねバッタンバッタンにしてあげますわ!」
「そうですね。許せませんね。寝とる男は女性の敵です!クリステル姉様!ルイス兄様!そいつをやっちゃいましょう!」
「ですが、寝取った相手は貴方なのですが…」
少女は俺の顔を見て言う…。
「兄貴~~~、ボク達がいながら恋人がいる人から奪ったの?最低なんだけど~。ボクには手を出してこないくせに!いつになったら初を奪ってくれるんだよー!」
「お、おい!シューやめろ!今はやめろ!この子が怖がるだろ!」
じゃあ誰かが俺に変装しているのか?
「いや、ごめん。俺はそういう趣味は全くないぞ」
「でも、夜な夜な色々な女性とエッチしてる時の声が…」
へ…?まさかあれが噂に!?
「お、おまえらぁぁあああ!だから誤解されるんだぞ!」
「う、ウチ達のせいじゃないよ~」
「脱ごうとしないお兄様が悪いです!」
「ち、ちょっと!私以外にもこの変態に夜這いかけた人いるの!?」
「も、もうやめろー!勘違いされるだろ~ぉ!」
俺の言葉に皆がしゅんと 怒られた犬のようになる。事情はこうだ。俺の下着を脱がされそうになったから頑張って脱がされないようにしていたら皆して変な声を出して誘ってくる…。
「な、なんですかそれ!?」
「…っとまぁこういう事なのじゃ!だからなんも心配はないのじゃ!この魔王がいうのだから間違いないのじゃ!」
「あ、あの!貴女は魔王という事は…。先代魔王はまさか…!?」
「うむ!我の父はアスガルド!母はユミルなのじゃ!」
「えええええ!!アスガルド様もユミル様もソロモン学校の教科書に載るくらいの偉い方ですよ!」
「うむ!それにルイスは二人育てられた義理の弟なのじゃ!」
「えええええ!魔王様が勇者を育てたのですか?!」
顔をビックリさせて驚く少女…。大分、緊張も解れてきたみたいだな…。良かった…。
「それにユミル…。我の母も今も健在じゃ!」
「」
「それじゃあ…貴方と勇者ルイスって義理の兄妹なんですか?」
「うむ!我の方が年上なのじゃ!だから我はルイスの姉なのじゃ!」
少女はびっくりして目をパチパチと瞬きを繰り返す。
「まぁ、俺からしたら妹に見えちゃうけど…」
「むむむー!ひどいのじゃ!」
「じゃあ…、私が見たあのルイスは…?兄さんにそっくりだったから…」
横にいるヒナルが…。
「それそれ!私も思った…。なんでそっちにルイスがもう一人いて、魔族を殺しているの?後、貴方のお兄さんとルイス…、ううん…私のお兄ちゃんと知り合いなのかな?」
少女は全てを話してくれた。小さな国… セトリア王国にルイスが魔族討伐のために来た事。そのルイスは少女の兄さん…ハロルドの恋人たちを寝取り、更にはハロルドと少女が魔族だと知ると兵士を連れて襲いに来た事。ハロルドと親しい村の人がハロルドを庇うと兵士達が村に火を放ち、村人を虐殺した事だ…。
(一体、何が起こってる?)
「待って!それマジに酷いよ!お兄ちゃんはそんな事は絶対しない!」
「えぇ、ルイスは小さい頃から私達と一緒ですが、目立つような事も嫌がるし、勇者だからとそれを振りかざしす事もしない…、そんな彼だから私は愛しているのですが…」
「お兄様は、勇者だと知られるのが嫌で、今はレイジって名前で旅していますよ~。堂々と胸をはればいいのにって思いますが…」
ヒナルやクリステル、エアロは俺の事を庇うように、そう言ってくれる。ありがとう…。
「うんうん!それに彼…、ルイス君は困っている人なら種族関係なく手を差しのべてくれるよ?何か困っているなら言ってみなよ!」
ミランダもすかさずフォローしてくれる…。
「ところで、君は俺達はアスガルドに向かう途中なんだ」
「あ、アスガルド?魔王様の国!?なら私の国からそんなに離れてませんが…」
「君のお兄さんが不安なら行くついでだからついて来る?俺達といれば絶対でないけど安全だと思うし…。それに…、母さんやエルドアス王から魔族を大量虐殺している女神崇拝教がいると聞いて視察のために旅をしていたんだ…」
そう…。何か、この少女の関わった事と何か関係があるのかもしれない。それに俺の偽物が…?
「ルイス…さんは何故、アスガルドに?」
「それは…」




