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66 ホーエンとの戦い…

 仁さんがスザクと戦闘する少し前…。


~ルイス視点~


 仁さんやルシルさん、ファデューさん達が城外へと走っていく。スザクという因縁の相手と戦うつもりだ。


 コタースやフレア、ケアルはアドバンさんやガッシュと共に西側へと向かっていった…。

 俺とヒナル、クリステル、エアロ、シュー、そしてスルトがここにいる。アレが動き出した時が俺の出番だ。


 「お兄ちゃん…? あれ…みて…」


 ヒナルは上空を見るなり声をかけてくる。

 あれが… 上空にいる俺の母…、いや…ホーエンが動き出す…。

 それは俺の方へとゆっくりと さもそこに階段があるかのように徐々にゆっくりこちらへ向かい歩いてくる…。


 「ヒナル…。シールドを!!」


 「シューは使える物を矢代わりに!、エアロは攻撃魔法詠唱!!ありったけの魔力を込めろ!!俺が身体強化と魔力増幅のバフを掛けとく!」


 俺はゆっくりと、クリステルの横に並び…。


 「クリステル…。お前の力を貸してくれ…」


 「ルイス…。 分かりました!貴方の為なら何でも…!」


 俺は上空から降りてくるソレを見ながら…


 「あいつは俺の母ではない。ホーエンという女神崇拝教の信者だ…」


 「女神崇拝… あの大女神テラを元として結成されたという…」


 「女神とは聞こえがいいが…。今の世界は何かを隠している…。俺達のこれまでの腹糞悪い事は全て仕組まれたのに違いない…。復讐を喜ぶ女神…、性や操り…そういった呪術を好む女神、権力を振りかざしたい女神… すべてはそこに繋がる…」


 「神話に出てくる女神達ですね…」


 「そしてホーエンはそれらを崇拝している人物だ。やつは処されたが、こうしてまた現世に魂として残る事を決めた幽体なんだ。やつをいかしておけば様々な欲望を持つ女神と同じやり方で世界を滅亡させてしまう…」


 クリステルは俺の話を聞いた後に、何度も頷く…。


 「ふふふ…。そういう事…ですね…」


 「えっ?」


 「はっきりと言って良いですわよ?エクソシストの能力を使えるのは私しかいないのですから…」


 クリステルは目を瞑り賑やかにこちらを見る…。

 

 「俺達が精一杯フォローする。」 


 「うん…。いつも変わらず…貴方は優しいわ…」


 クリステルは寂しそうに言うのが伝わる。


 「…」


 「では背中を任せましたわよ?」


 「ああ…」


 地上まで後、少しで降りてくるそれが口を開く…。


 「会いたかったわ…ルイス…」


 「…」


 それは妙な表情をしてどこか冷たげに話かけてくる…。


 「お母さんを忘れたのかしら?」


 「…黙れ…」


 「また昔のように一緒に暮らしましょう?」


 「黙れ…」


 それは冷徹にして冷酷な笑みを浮かべる…。


 「そしてこの世から魔族を消し去り… 貴方は偉大な勇者となるの…。またお母さんと一緒に暮らしましょう?」


 「黙れっ!」


 「貴方はよくやったわ… さぁ…こっちへいらっしゃい?」


 「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっ!!!母さんを… かえせっ!!ホーエンっ!」


 そして一気にそれは表情を変える…。その表情は暗闇で覆われたような冷酷な笑みを浮かべる…。


 「ふふふ!ふぉっふぉっふぉっ!!なんじゃ、ばれてたのか…。つまらんやつじゃ…」


 「準備できましたわ!!」


 すると、クリステルが…手から光の雫が現れてその雫はひとつの円ができる…。


 「浄化魔法!!キュアレインっ!!」


 その光の雨はホーエンに降りだす…。


 「ほう…エクソシストの能力か…。じゃがワシは魔力ではお前達よりも上じゃ…。お主らが束になろうとワシには勝て…ぬ…」


 口元をニヤリとしていたホーエンだったが、途中、表情が変わる…。


 「残念だったな!!俺達の方が魔力は上だっ!!俺のバフでな!」


 「そなたはただのゆ、勇者じゃ…ないの…か?!まさか…伝説の…」


 ホーエン…いや、俺の母親の肉体がふらつき始める…。


 「あ、あそこの…も、もう一人の…聖女の…せいか!?」


 ホーエンはヒナルをじっと睨むように見つめる…。


 「あの娘を… 消さねば…。肉体が…っ…。あの…忌々しい大聖女が…!」


 ホーエンは苦痛の表情をしながらもヒナルが大聖女


 「クリステル!まだいけるか!?」


 「え、ええ…!!なんとか!!はぁあああああっ!!」


 ホーエンは更に苦痛で表情が歪む…。ホーエンの手の平から禍々しい黒い球体が現れて…音もなくその球体に黒の粒子が集まり出す…。


 「せめて、この体から… 引き離される…前に…あの忌々しい聖女を…!!ワシの計画の全て狂ったのは迷人の少女!お前じゃ!!」


 「な、何をするつもりだ!!」


 「ワシは…消えても…必ずや…女神を崇拝するものが現れ… テラ様を… テラ様を復活させる!!!これは…アテナ様からの… アテナ様からの戦いの…予言じゃっ!」


 「な、なんなんだあれは…」


 黒い球体を破壊したいが…。母親が目の前にいるため攻撃できない状態にある…。

 

 「ワシが…ワシが消える前に… ワシの邪魔をしたそこの少女を…始末…しておいてやるっ!」  

 ホーエンはヒナルの方に黒い球体を向け放出する…。放たれた黒い球体はヒナルの方を目掛け飛ばされる…。その速度は早く…。身体強化を使っている俺でも追い付ける速度じゃない…。


 「ヒナルっ!!!避けろ~~っ!!!よ、ヨケロ~~~ッ!!!」


 ヒナルは一瞬の出来事で動揺している…。


 「えっ!」


 ヒナルは直ぐに気付き、セイクリッドシールドを4枚重ねてでかける…。


 「この…世から…消えるのじゃあああああっ!ぐふっ……せ、かい…は…わ、我ら……の…」


 ホーエンの魂が浄化されたのか俺の母親はまっ逆さまに落ちていく…。

 俺は黒い球体を見るが… 術者が消えたのに消えていない…。母親の体から放たれた球体だからだろうか…。


 「や、やめろ…!!やめろーーっ!!」


 ホーエンの霊体が俺の母親から離れる瞬間…。


 「ヒナル~~~っ!逃げろ!!!」


 一枚目のシールドがバリンッと音をたてて簡単に割れ…。2枚…3枚と、いとも簡単に割れていく…。

 そして最後の1枚…なんとか耐えているが時間の問題だ…。

 

 (この距離じゃ間に合わない!!!!うわあああああああああっ!!)

 

 ヒナルは死を悟ったかのように…。


 「ご、ごめんね… お兄ちゃん…。会えて…嬉しかったよ…。」


 「ウワアアアアアッ!!ヒナァァアアアルゥゥゥ!!」


 その黒い球体はジリジリとシールドを割っていく…。


 「ヒナルは死なせないよ!!兄貴の大事な人くらいまもってあげるぜっ!!」 


 「ヒナル様… お兄様…二人とも…ごめんなさい!!今までごめんなさい!!」


 その瞬間だった…。後ろにいたシューとエアロがヒナルを庇うように体を囲む。


 「えっ!!シューさん!エアロさん!?だめ!来ちゃダメっ!!」


 そして…それはすぐだった…。最後のシールドが バリンッ!と音と共に割れていく…。そして…。


ドンッ!!!! 


 と大きな音をたてる…。その衝撃で半径10mくらいの建物も崩壊している…。


 「あっ、あ… あ…っ……」


 俺は口が開きっぱなしだった…。何故か…直ぐわかった…。ヒナルを庇う為、シューとエアロは自分を自ら…。

 俺は直ぐ駆け寄る…。


 「いゃあああああああああっ!!」


 クリステルは悲鳴をあげる…。


 俺は見たくなかった…。そこには…。


 「あっあああっ… あっ…」


 エアロとシューが倒れている…。


 エアロは右腕を失い…。シューは左足を失っている…。


 「お、お兄様…。ヒナル様は…?ぶ、無事でしょうか…?おにいさまとキスしたかったよ… ご…ごめん…なさい…あ…あげれな…く…だい、すき…で…し」


 「あ、あに…き…。ぼ、ボク…。うまく…やれ…て…いた…かな…?だ、だいすき…だよ…ボク…の事を…わすれ…ないで…。あっ、兄貴に…初…をあ、あげ…たかったのに…だ…だめ…だね…ボ…」


 そう最後の声を振り絞り…。二人は息の根を止める…。


 (な、なんだよそれ!さっきまで…普通に…)


 「し、死ぬな!死ぬな死ぬな死ぬなぁぁぁぁああああああっ!!お、俺… まだお前らこの事、ちゃんと…話聞いてあげてないだろ!!!!頼むよ!!死ぬなぁああああああっ!!!最後にもう一度… もう一度声を聞かせてくれよ!!!うゎああああああっっ!!」


 「お、お兄ちゃん…!!もう…ダメ……だよ…。もう…死んでいる…。うわああああああああああっ…」


 絶望の声をあげる俺と泣きじゃくるヒナルにクリステルは…

 

 「ル、ルイス… ヒナルちゃ…ん…、まだ…まだ終わっていません…」


 「えっ…」


 「あ、アレを…見てください…。」


 クリステルの指差す向こう側をみる…。


 そこには禍々しい大きな赤いドラゴンのような生命体が存在していた…。


 「くそぉおおおおおっ!!!ちくしょおおおっ!!」

 




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