65 仁、ルシル、ファデューVSスザク
~仁視点~
拙者達は直ぐ様、城の外へと向かう…。黒い人形にはあいにくと知能が低いためこちらの罠にうまく引っ掛かってくる…。その数は見えているだけで何千体という規模だ…。奥の方には、あのデスフラッグという魔物の姿も見えるでござる…。これは早く退治せねば…。
だんだんと迫りくる黒い人形は次々と拙者達が設置した鉄を加工して三角錐状にした黒い塊である"マキビシ"をところどころに設置した罠に引っ掛かってくれる。そこを火遁の術で燃やしていくという戦法でござる。
(マキビシの効果も覿面でござる。流石はファデューの案でござるな…。)
手前に何人かの忍者を用意して、鉄の鉛でつくられた鉄を勢いよくなげる"鉄つぶて"や"痺れ吹矢"を放つ…。
次々と痙攣を起こしている人形に対して、更に速力が自慢の二人一組の忍者が数組…。左右に分かれ…。物凄く長い万力鎖に刃物を着けた護身具を二人で引っ張りながら持ち全速力で走る。バタバタという勢いで次々と人形の胴体が切断されていく。
(作戦は上手くいっているでござる…。次は上手く倒れなかった人形に対してでござるな…)
拙者達の後方から次の部隊が顔を出し…。手裏剣を投げる…。ただの手裏剣ではなく少しばかしか切れ味を良くする術が掛けられている…。
「今だっ!!放つでござる!!!」
何発もの手裏剣を投げる…。その速度は早く次々と迫りくる人形に当たり転がっていく…。
まだ残っている敵がいる…。ここからは接近戦でござるな…。
拙者は忍刀を…。ルシルは大鉈を…。ファデューは鉄扇を持って次々と倒していく!
「うぉらああああっ!!」
「さぁ、消えなさ~い!!」
ルシルの大鉈は次々と敵を両断して裂いていく…。
ファデューは後方から鉄扇を投げ飛ばし…。暫くするとブーメランのように手元に戻ってくる。
「あの奥の魔物には注意するでござる!!」
「あれが言っていた厄介な魔物かぁっ!!ははははっ!そう言われちゃーやらねぇー訳にゃーいかねぇ~なっ…っと!!」
ズバァァァァッ!!
ルシルのもつ大鉈がまるで大きく飛び回る虫のように動き次々と斬り裂く。
「アタシ達にかかればお茶の子さいさいってやつね~!いいわぁ~!ん~~っ!気分高まってきたわぁ~っ!!」
バシュバシュシュ!!
ファデューのもつ鉄扇は鷹が飛び回るかの如く敵を次々と両断していく…。
そして拙者は、デスフラッグの前にして…。
「忍法!分身の術!!」
分身の術はあくまでも自身が早く動いているだけでござるが知らぬ者から見ればまさに何人もの拙者がいるように錯覚する技でござる!そして…
「忍法!影縫い!!」
数体いるデスフラッグどもは体がマヒするかのごとく痺れて痙攣を起こす…。
「そして、これだっ!!」
拙者は高く飛び…。その数体のデスフラッグに普段は土を掘るために使う鉄でできた苦無と呼ばれる忍具を投げつけデスフラッグの頭に直撃して刺さる…。
そして、また高く飛び上がりよろめいているデスフラッグに対して拙者は新しい忍術を食らわせる…。
「新忍術!! 雷電っ!!!」
拙者の腕から手にかけてバチバチとした静電気が集まり…。それを魔力で増幅させて一気に解き放つ!!拙者の魔力が回復した今だからできる大技でござる!!
バチバチとしている音が雷の音に変わり一気にデスフラッグの居る周辺に落ちる。そして避雷針の如くその鉄の場所に落ちる。
大きな雷が落ちる音とともにデスフラッグ全てとその周辺にいた黒い人形も消え失せた…。
「ほぅ~!やるじゃねぇか!棟梁!」
ルシルは拙者に軽く肘をつく。
「ははは!なんのこれしき!」
「んっまぁっ! 仁ちゃんもやるわねぇ~!惚れちゃいそっ!!」
そんな和む会話もつかの間…。
デスフラッグの死体をまるで何事もなかったかのように踏み歩いてくる一人の男の姿が徐々に現れる。そう…。我らが天敵…。スザクでござる…。
「…ったく…役にたたねぇな…」
「スザク…貴様っ!!」
「そのゴミの群れを倒して勝ったつもりでいるのか知らねぇけどね…。俺らはそんな甘くねぇぜ…」
スザクの後ろにはヒョウ一派… ヒョウ・スザクが率いる親衛隊の姿があった。
「仁!俺らはあの抜忍どもの相手をする!お前はスザクをやれっ!」
「あのザコちゃんの相手はアタシ達だけで十分だわ~っ。スザクをさっくりやって敵とっちゃいなさ~いっ!」
そう言うとルシル、ファデューと他の忍者部隊は敵に向かっていく。拙者はスザクにゆっくりと近づき…。
「この時を待っていたでござる…」
「なんで魔力が回復したか知らねぇけど…。すでに俺の敵ではない!身の程を知り、俺に神牙流を渡せっ!!」
「お主は、拙者の父、母を殺した非道な男でござる。前神牙流の言葉を借り、貴様を永久追放とする!!」
拙者が飛びかかる。同じ様にスザクも飛びかかる。
「「いざ!尋常に勝負っ!!」」
刀と刀がぶつかり合い、火花をまき散らかす…。ほぼ互角と言って良いだろう…。
スザクが飛び上がり手裏剣を投げつける。ただの手裏剣ではない…。少し大きく鋭い短刀が何本もついたように見える風魔手裏剣でござるなっ!
「はぁっ!!はっ!!はっ!!」
拙者はその何枚もの風魔手裏剣を刀で受け止める。するとスザクの体が消える…。
「雲隠れの術!」
拙者は目を閉じる…。人差し指に唾をつけ指を拙者の顔に持っていき…感覚を研ぎ澄ませる…。僅かな風が指先に当たる…。風の来る場所に片手で刀を持ち構え方角はそこでござる!
「神牙流最終奥義!!!天地滅裂乱激波~っ!!!」
ビリビリと地面一体が揺れ振動を起こすと共にスザクも姿を表し…。閃光は走り痙攣を起こし始める。地場の電流をスザクの周りの空気中に流し込む。無数の漆黒の光がスザクに向かい囲む。一瞬に身体中を漆黒の光が蝕む…。
「ぐふっ!?」
スザクは口から血を吹き出す…。
「ぐっ… ふふふ… はははははは!!」
「なんと!まだ立てるとは?!」
「だから言っただろ?俺は甘くねぇって…。だってよぉー この体はホーエン様んおかげで最強になれたんだからよーっ!!!」
そう言うとスザクの体が光りだし…。肉体が変形していく…。
「もう容赦はしねぇぜ…」
光の中からだんだんと無数の手が生えてくる…。次第に光が薄くなり…。やがてその姿がはっきりと見えてくる…。
「そ、その姿は!!」
丁度、同時にスザクの親衛隊を倒した、ルシルもファデューも驚く…。
その姿は異世界の地で伝承されたと伝わる女神…"阿修羅"に酷似していたからだ。その体は大きく…。肌色も赤くなっていて腕が背中から4本生えている…。その姿は女神ではなく悪魔にも見える…。
「やはりここでも女神か…」
女神崇拝教はここまで酷いものなのか…
「ふはははは!女神だろうが、そんなのは興味ねぇ!てめぇをいたぶれるならそれでいいんだぜ!」
「ルシル!ファデュー!!拙者達には、あの勇者の恩恵を受けている!女神だろうが倒せぬ相手はいないでござる!」
「ははは!どうりで体が軽いわけかぁあっ!!ぶちのめすぞ!!」
「んっまぁっ!!帰ったらルイスちゃんにキスしてあげなくちゃね!キャッ!!」
拙者達は阿修羅と化したスザクに向かっていく…。
「おらあああっ!!」
ルシルは大鉈で攻撃するもスザクは二本の手で防ぎ、別の手で攻撃を繰り出す。
「ぐっ!!」
ファデューは手裏剣を投げるも全部の腕を使い防ぐ…。
そして…、拙者は手裏剣を受け止める隙を見て雷電を放つ…。
「ぐふぁっっっ!!」
どうやら術は効いているみたいでござるな…。ならば…!!!
「ルシル!ファデュー!あの時特訓したあれで仕留めようぞ!!」
「あぁ!!アレな!!」
「ふふふ!アレは美しいから好きよ~」
「何をした所でむだむだむだむだぁっ!!」
拙者は正義の心を悟し灯した雷を…。ルシルは燃え盛る情熱の火を…。ファデューは美しい純粋な氷を…。それぞれ魔力に変え…。貯めていく…。拙者達はスザクを囲むように…。
「何をするのか見物だな!!ああっ!?」
「「「火となり、雷となり、氷となり…。天地向かう所にあるは自然の理…。揺るがす者に裁き与えんっ!!」」」
赤い光と青い光と黄色の光がスザクの周りに集まり出す…。次第に地震が起き出し…。
「ぐっ!なんだこれ!!体が動かねぇっ!!」
そして次第に辺りが白黒の世界に覆われる…。
「「「神牙流合成奥義 桜華狂咲!!!」」」
スザクの一体に激しい雷が出現すると共に、氷の雨が降りだす…。
「ぐはっ!!な、なんだこれ…!」
スザクは感電するとともに痙攣をおこし震えだす。何もできないスザクの足元から地獄の炎が舞う…。
「そんなっ!ばかなああああっ!うごけっ!!うごけっ!!俺の体ぁぁぁっ!」
まさにそれは雨が降る時に桜の華が舞うように咲き。それを眺め震え狂いだしているかのような光景だ。やがて、スザクは地獄の業火に包まれる。
「ぎゃあああああああああああっ!!」
鋭い断末魔の声をあげて倒れ出すスザク…。姿は元に戻り…、やがて、彼は眠るように息を引き取った…。
「拙者は… 敵を…。ついに敵をとれた…でござるか…」
「ああ… ついに先代の恨みを晴らすことができたなぁ~っ…」
「うんうんっ!長かった…ねぇ~っ…」
そして、拙者達は今までの無念を晴らすように皆で歓声や雄叫びをあげた…。
「俺達の目標は終わった…」
「ええ!次はルイスちゃん達を…」
「ああ!次は拙者達があの伝説の言い伝えみたいに勇者どのの力になる番でござる!!皆着いてきてくれるか!?」
「ったりめぇだろ!」
「勿論よ!モ・チ・ロ・ンっ!キャハッ!」
そうして拙者達は残りの敵を殲滅する動きに出るのであった…。




