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60 不穏な空気…


 俺は夢を見ていた…。懐かしい夢だ。まだ子供の頃…。12歳くらいの時の夢…。俺と2歳上の少女と10歳の双子の姉妹が居る。木で作られたブランコに乗りながら俺は2歳上の少女と会話をしている…。


 『ルイス~!私ね… 聖女でしたわ!』


 『凄いよ!クリステル!』


 クリステルと呼ばれた少女は俺にそう言われると顔を赤らめながら…


 『ふふふ…。ルイスも冒険者になったら私が守ってあげますわ!』


 『そうだぜー!ボクも大きくなったらルイスを守ってやるんだ!』


 『ずるいですぅ~!私が守るんですから!』


 その光景を見て、俺は…。


 『いいよ!大きくなったら俺がお前らを守ってやる!!だから離れるなよ!!』


 『楽しみにしてますわ!』


 『約束だぞ!!』


 『私はルイス兄様に守られるなんて幸せです!』


 3人は俺の言葉を聞いてニコニコしながら嬉しがっている…。


 しかし、突如…。辺りは真っ暗になり…。


 『はぁっ…はぁっ…!んっ!! いいですわぁ! はぁっ… 愛していますわ!アレックス!!』


 『あ~んっ!ボクっ! ボクも…!!もうだめっ!!ぁああああっ!』


 『んっ、くぅん!!そこはだめぇ… 勇者様~っ!!』


 3人は勇者アレックスに淫らな自分らの姿を差し出して自ら望む光景を見せられる…。


 俺は怒り狂い…。その4人に…。


 『セイントバーストクロスっ!!』


 勇者のスキルを放つ。アレックスはそのまま塵となり消えるが…。3人は消えずにこちらを悲しむ顔で見ている…。


 『ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!アレックスが憎い!憎い!憎い!』


 『兄貴…ごめん…。ボクがバカだよ…。全部あいつのせいだ!あいつのせい!絶対殺す!殺す!コロス!コロス!!殺してやるっ!!』


 『ルイス兄様…。ごめんなさい!私達は…。あの醜い人間を殺しに行きます…。だから…。私達の事はもうわすれてください…』


 3人は泣きじゃなくりながら悲しい顔をして俺をみている…。


 『もういい!!早く居なくなってくれ!!!俺の前から!!』


 何度も何度も何度も何度も『キエロキエロキエロ…』と頭の中で繰り返す。辺りがまた暗闇となる…。しかし、奥の方から一滴の光が見え始め…。俺の見ている暗闇の視界が眩しく光だすと…。



 『お兄ちゃん!!!だめだよ!!落ち着いて…』


 『ルイス~っ!ウチらがいるから~っ!』


 『我を忘れたらダメなのじゃ!』


 『ルイス兄さん…私に捕まる…です!』


 『アンタの事なんて全然心配なんかしてないんだからね!!でも居なくなったらイヤだよ…』


 聞き覚えのある声がして、その彼女達は光となり俺を暗闇の中から引き上げて助けてくれる…。そして優しく包むのであった…。そして俺は…。


 「んっ… んぁ??」


 目が曇っているかのように視界がぼやけている。見慣れた部屋にいて…、横を向くと裸で寝ている大事な血の繋がった妹… ヒナルが隣で寝ていた…。


 「あぁ…夢だったか…」


 俺はベッドから体をゆっくりとお越し、片手を高く上げて背伸びをする。


 「んっ~、ん~~~っ!っと…」


 ふぅ~…?まだ眠い…。


 ヒナルを起こさないように身支度を整える。その頃になると、ヒナルもおきだし、まだ成長途中の胸をぷるんぷるんさせながら起き出す…。


 「お兄ちゃん…。おは~…」


 「ああ、おはよ~!」


 俺はヒナルの服を取り渡す…。


 「あ~、ありがと…」


 ヒナルも起きだし、着替えをする。今日は白いローブのような服装で下は短いスカートを着る…。


 「今日、朝一でクリステルさん達の所に行ってみるね!」


 「サンキュー!」


 俺はヒナルに近づいて…、そっとキスをする…。


 ちゅっ!


 「んっ!!お兄ちゃんの朝一の美味しいキス頂きました~!」


 


………。

……。

…。




 …身支度を終えるとヒナルは出ていく。


 「じゃあ、話をしてくるね。後、ホーエンの件もお願いしてみる!」


 「サンキュー!イヤな仕事任せてごめんな?」


 「ううん…。最初はあの人達の事、嫌いだったけど話をしていて、今でもお兄ちゃんの事が好きだってイヤなくらい伝わるんだ…。以前にましてお兄ちゃんの事が好きって伝わってくる…」


 「そうか…」


 「だから、お兄ちゃん…。」


 「ん?」


 「ううん。なんでもなーい!」


 ヒナルはイタズラっぽくてへぺろっ!…とすると部屋から出ていった…。


 まだ早朝の8時30分辺り…。コタース達はまだ寝てるかな?いつも10時くらいに起きてくるから…。あいつらねぼすけだからなぁ…。

 ほどなくして…。俺が仁が王国を離れる時から譲ってもらった共鳴石が耳鳴りみたいにキィィィィンと鈍い音を鳴り出す…。


 (んっ!? 仁さんらだ!!)


 俺は共鳴石を手に取り、イメージする…。間違いない仁さんからだ…。


 『久しぶりでござるな!』


 「仁さんも!無事だったんですね!?」


 『ははは!拙者達は問題ないでござるよ!それよりフレアとケアルは元気でござるか?』


 「ええ!問題ありません!」


 更に仁さんの他に喋り声が聞こえてくる。


 『ルイスか!?ひさしいのう!!あんた、やっぱり勇者だったとはな!!』


 『いや~ん!勇者ルイス君!久々に声が聞けて良かったわ~んっ!んっ~まっ!早く会いたいわぁ~!』


 ルシルさんとファデューさんも一緒みたいだ。ファデューさんも相変わらずな性格だ…。


 『ルイスどの…実はだな…。』


 「え?」


 『問題が起こっている。これは王国滅亡の危機になるかもしれぬ…』


 仁さんの声のトーンが下がるのが分かる…。


 「王国滅亡!?」


 『うむ!!あのヒョウ一派のスザクが何やら黒ずくめの女と共に進軍をしているでござる』


 (ついにきたか!?)


 『我らの偵察部隊の仲間からの情報で、凄い規模のモンスターと黒い人型のモンスターやかなり大きいモンスターが王国全域に集まりつつあるらしい!』


 昨日、討伐したあの黒い人型もか…。力こそそんなにないけど数が集まればやっかいだ…。


 『拙者達は既にお主の故郷、メルドアの街に行き、ギルド長アドバンに声もかけてある。仲間の一人が転移のスクロールを持っていたので渡したでござる。メルドアの街のギルド長に声もかけたからギルド長含めた冒険者達もそちらに向かうでござる!』


 「アドバン達がこっちに!?」


 『ああ!多分、今日の夕方頃にはスザク含むモンスターの大群も王国に到着して攻めて来そうな勢いでござる!拙者達も今、そちらに向かっているでござる!少なくとも昼過ぎくらいには合流できそうでござる!』


 「分かった!こっちも準備を進める!」


 『くれぐれも無茶だけはしないよう気をつけるでござる!』


 「ありがとうございます!!」


 ついに動き出したか…。ホーエン。


 俺が今まで味わってきた苦痛を全てやつにぶつける。そして今度は俺がざまぁする番だ。やつのせいで俺はドン底な気分を味わったし、今日の悪夢も見せられた…。絶対許さねぇ…。来てみやがれ…。


………。

……。

…。


 

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