58 コタースと少年隊パーティーとの和解…
王国街の外へとやってきた。ちょうど、負傷した数名の兵士が一時避難をしてその場で待機しながら回復術士達から治療を受けていた。
案内してくれた兵士が…。
「あの奥に逃げ遅れている少年兵もいます!」
「任せてください!」
「兵士さん~っ!その弓と矢借りるよ!」
コタースは負傷して治療中の兵士から弓を借りる。俺も兵士の剣を借りてコタースと走り出す。
「ねぇねぇ~!やっぱりルイスは~っ、凄い人だよね~っ!ウチの速度についてこれるんだから~っ!」
「いや、これはただ身体強化のおかげだよ!」
ただ、身体強化をかけての速度…。それを普通に走れるコタースは凄い。
「こうして走ってると~っ、最初に会った時の事を思い出すよね~っ!」
「ああっ!初めて会った時はびっくりしたよ!」
「ウチもだよ~っ!!」
俺達の速度が速いからか、目的地まですぐに到着できた。周りを見渡せば、負傷者は数名いるみたいだが、死者はなんとかいないようだ。
4体のデスフラッグと 黒く溶けたような体でグネグネと動く人形のモンスターも複数いる…。モンスターは剣や杖等といった武器を手にしている…。
「なんなんだ?あの黒い影は…」
「ルイス!来るよ~っ!!」
俺達の存在が分かったのかデスフラッグ2体と複数の黒い人形がこちらに向かってくる。
「あの黒い人形!速い!!」
奥を見ると残りのモンスターが兵士や負傷した少年兵を狙っている。
「コタース!向こう側を頼むよ!」
「まっかせて~っ!!」
コタースは高くジャンプをして少し大きめな木に登り、木から木へとジャンプをしていく。
「お前らは俺が相手だ!」
俺は、迫ってくる人形を剣で斬る。斬った時の感触は腐った肉を斬るくらいのイヤな感触がある。
(意外とあっけないな…。なんなんだ?)
ただ、数が多い…。何体も何体も斬っていくがその異形な人形は数が多く次々襲ってくる。
俺は、身体強化を再びかけて、今度はデスフラッグの元へと駆け寄っていく。デスフラッグが俺を目掛けその鎌のような前足を使い攻撃してくる。それを兵士の剣で受け止める。俺はその受け止めた衝撃が強く、一時的によろめく。
また一体がこちらを目掛けて攻撃してくる。避けようと移動しようとするが、一回目の攻撃による衝撃でワンテンポ遅れたため、これも剣で受け止める。その隙を見て、セイントバーストを放つ。人も複数いるから大技では無理なのが厄介だ。でもデスフラッグ一体なら十分だ。
「まずは一体!」
次のデスフラッグが大きくジャンプをしてきて俺の後ろへと回り込む。俺の前には人形が複数…。
(人形は数は多いが、そんなに脅威ではないか…、あれが目の前に来る前に!)
「アースバインドっ!!」
スキルで人形の足止めをしている隙にデスフラッグが前足を振り下ろしてくる。アースバインドで動けなくなった人形の元へと行くとデスフラッグは人形をもなぎ払うように切り刻んでいく。
俺は人形を蹴り飛ばし上へと大きくジャンプをする。デスフラッグの頭の上へと着地して、直ぐ様セイントバーストを放つ!
デスフラッグや周りにいた人形も一気に消え失せる。
………。
……。
…。
~コタース視点~
ウチは木から木へと飛び越え、兵士や少年兵のいる場所までやって来る。
(あれ…、あれは~っ…)
少年兵の中には~っ…、ウチを追い出したパーティーも…。ウチとそんな変わらない年の男の子一人と女の子が一人~…。名前はカイとリリーナ…。会うたびにイヤな事をよく言われたなぁ~…。
「勇者様が来てくれたぞ!!」
「良かった~っ!!助かったよ~!!」
と話している声が聞こえる。
でもその横には人形のモンスターが数体が少年兵な兵士の皆さんに攻めようとしている。
「危ないよ~っ!下がって~っ!!」
ウチは彼らに声をかける。
「あ、あれ!?アイツ!無能のコタース!?」
「逆にお前が危ないよ!!」
助けに来たのに…、なんでウチはそんな事言われないと~…。
でも兵士の一人が…。
「大丈夫だ!!あの子はあの勇者様のパーティーだ!!」
「え!?あの無能のコタースが!」
「まさか~!!こんな時に冗談言わないでよ!」
好きな事言ってくれている…。
丁度ルイスが一体のデスフラッグを仕留めた所だった。
ウチは集中して迫ってくるデスフラッグに弓に矢をつがえ…5本の矢を向ける…。
「こっちには~っ…爆発魔法~っ…。 氷魔法付与~っ…。」
ウチが構えているそれぞれの矢に爆破魔法と冷気魔法の魔力が凝縮されていく。
「心眼~っ!!射つ!!」
ほんの僅か一瞬。カイやリリーナ含む少年隊にデスフラッグが2体と無数の黒い人形が迫りくる時、ウチの放った矢がデスフラッグ2体に向かって飛んでいく。まず最初に爆破の矢…。当たるとデスフラッグの体内に矢が入り込み小爆発を起こす…。
「えっ!?何が起こったの!?」
リリーナは声をあげる。ただし、それも束の間、もしもの為に放つ氷の矢は周囲にもしデスフラッグが体内で矢が爆発した時に毒性の液体を巻き散らかす事を懸念しての矢だった。
辺りは氷と化して爆発を最小限におさえられている。
「ち、ちょっと!?あれコタースよね?!」
「う、うん…!!コタース…、あんなに強かったのか!?」
丁度その頃~、ルイスの元に向かっていたデスフラッグや黒い人形もルイスが倒したみたい~っ…。やっぱり彼は私のウサ神様…。彼のおかげで今の私がいる。カイやリリーナにもウチが成長したとこ見せれて、ちょっとだけ「ざまぁ」な気持ちになれた…。といっても~…、ルイスのバフもあるからちょっと複雑だけど~っ…
それからすぐに、カイやリリーナ意外の兵士や少年兵達が立ち上がり…。
「俺達も行くぞー!!俺達には勇者様がついているぞ~っ!」
『お~っ!!』
歓声を上げて残りの黒い人形に向かって攻撃を繰り出していく。
………。
……。
…。
「ありがとうございました!勇者の方々!!お陰様で被害はあまりでませんでした…。」
「被害がなくて良かった…。」
ルイスはウチを見て…。
「でも俺一人では厳しかった。コタースもいてくれたからな!」
そう言って、ルイスはウチの頭をナデナデしてくれる。
「照れるから~っ、やめてよ~っ!でももっとしてほしい~…」
(ウチは、やっぱりルイスの事が好き。ルイスが居てくれたからウチは変わることができた!ルイスのお嫁さんになりたいんだ…ウチは…。ヒナルみたいにいっぱいいっぱい抱き締めてもらいたい…)
そんな事考えていると…。ウチの目の前にカイとリリーナが寄ってくる…。もう昔のウチじゃない!ビビらなくてもいい!どうどうとすればいい!
「コタース…。その…」
カイは下を向きながら…。
「その…、メルドアの街の時…。置いてってしまって…、ごめんっ!!」
「本当にごめんなさい!!!コタースちゃんの事ずっとバカにしてた…。私達情けないよ!!」
二人はウチに頭を下げる。ウチは~…
「うん~っ。もう、気にしてないよ~っ。ウチもあの時はレベル低くて~っ、実力無かったの事実だし~」
「お、俺達、コタースに助けてもらえた…。ごめんなさい!」
「コタースが居なかったら私達…」
二人はそれでも謝り続ける…。
「もう大丈夫だよ~っ!その代わり…、何かあればウチの大切な人…、ルイスの力になってあげて~っ!!ウチが強くなれたのは~っ、このウサ神様のルイスが居たからなんだから~っ!」
「ち、ちょっ!コタース!」
ルイスは顔を赤らめながら照れている。うん、可愛い~っ。
「分かった!!約束するよ!」
「勇者様とコタースちゃんの力に絶対なる!!」
「えへへ!!ありがとう~っ!約束だよ~っ!」
「ああっ!!」
「うっ!!」
うん。良かったよ~…。これも全部ルイスのおかげかな~…。
「さぁ、戻ろうか…コタース!」
「うん!」
私達は手を繋ぎあって、王国街へと戻るのであった…。




