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51 レイジとヒナル…。

~ルイス視点~


 ヒナルが何か悩みを抱えている。ここ最近、一人で外に出て何かに悩んでいるのは分かっていた。そして、今日、何故か俺の自宅へと向かうことになったけど…。ヒナルの悩みと俺が子供の頃好きだった水色の変わった服と何か関係があるのかな?


 ヒナルは俺の事が好きだというのは凄く伝わるけど…。付き合うというのと過去に何か関係があるのか分からなかった。


 ヒナルが何に対して悩んでるかは分からないけど…、俺はどんな事でも受け止める…。


 転移魔法のスクロールに吸い込まれて視界が真っ白になって直ぐに…景色が目の前に広がった。俺たちの手はしっかりと固く繋がれていた…。


 「凄いなぁ…!もう着いたよ!」


 「お兄さん…、ここ?!あれだよ!?」


 辺りを見渡せば、ここはヒナルと初めてあった街のはずれ…。全てはここから始まった。俺の人生が良い方向に変わった分岐点の場所でもある。


 「ちょっと前のはなずなのに懐かしいね…」


 「本当だよなぁ~」


 ヒナルは背伸びをする。俺もつられて背伸びをする…。なんか兄妹みたいだな…。ほんと…。



………。

……。

…。




 俺達は、それから歩いて、メルドアの街までやってきた。門番の兵隊がいる。


 「あれ!?ルイス!にそれから~えっと…」


 「この子はヒナルな!」


 俺はヒナルの頭を優しくポンポンとする。


 「ルイスは帰ってきたのか?」


 「いや、ちょっと自宅に忘れ物あったから取りに立ち寄っただけさ。」


 俺は兵隊の人と少し会話をした後に自宅へと歩きだした。うん。まだこの街には俺が勇者だと知れ渡っていないらしく…。良かった…。


 オーガ襲来から少し時間が経って、壊された建物などの復旧もほぼ終わっていた。何も変わらない街並みがそこにある…。でも俺は明らかに気持ちが変わっていた。恋人を寝取られ裏切られてから物凄く絶望していた。でもヒナルに出会って全てが変わった…。


 自宅へとやってくると、ヒナルが


「ただいま~」


と言う。


「ヒナルの家じゃないだろ?」


「えへへ!」


 でも何でヒナルがこう言ったのか、この後理解する事になる。



………。

……。

…。



 俺は、十数年ぶりと自宅の地下に入る。最後に入ったのはいつだったか…。

 地下は真っ暗だから、置いてあるランタンに火を灯す…。ここは、母さんや父さんがが死んで居なくなってから自宅にあまり居る事がなかった。だから凄く久々だった。


 「たしか…。この辺りの箱に…」


 ヒナルに手伝って貰いながら棚から箱等を色々取り出す。


 「あった!これだ!!」


 「お兄さん!見つけた!?」


 俺は箱を開ける。懐かしいなぁ~…。小さい時の記憶が甦る…。その中には水色の服…。幼児が着るような小さい制服にも見えるが…。


 「あっ……」


 それを見てヒナルが何故か涙をぽろぽろと流しているのがランタンの灯りからヒナルの顔が照らされていてもよく分かる。

 制服みたいな物を見ると胸ポケットがついていて、その胸ポケットにはバッジのような物がついている。そのバッジには意味不明な記号が書かれている。


 「すが れいじ」


 ヒナルはそのバッジを見て何度も何度も言葉にする。


 「この言葉わかるの?」


 「うん!だって…」


 ヒナルは声を上げて泣き…、俺の胸へと顔をうずめる…。


 「だって!!私の世界の言葉だもん!!うわぁぁぁぁぁん~ ひっく……ひっく…」


 「スガ レイジ?」


 「うん…」


 「どう…いうこと…?ヒナルはたしか…、スガ ヒナル…」


 「うん… うん!…ひっく…」


 「スガ レイジ」…。俺が小さい頃に着ていた好きな服にそう書かれている?名前?

 そして俺の好きな子は「スガ ヒナル」…。


 「お兄さん…、嫌わないで聞いてくれますか?」


 「うん…」


 「前にも話したけど…、私が産まれてすぐ、私のお兄ちゃんは4歳の頃…幼稚園という所からの帰り道に馬車みたいな乗り物で事故にあって死んだ…」


 「たしか…居なくなったっ…て…」


 「うん…。そのお兄ちゃんは生きていました…。この…世界で…。」

 

 「うん…。」


 「お兄ちゃんは…今、私の目の前にいて…私の好きな人で…。生きていた…の…」


 「えっ!?でも俺はここで母さん達と!?」


 ヒナルは嘘ついているようには思えないし…。でもなんで?


 「とあるお兄さんをよく知る人から聞いたんだ…。お兄さんは迷人で、森の中で迷子になっているのをお兄さんのお母さんとお父さんが発見したって…」


 ヒナルは青い制服を手に取る…。


 「これはね?私が居た世界の幼稚園という所に通う園児が着る制服…」


 「えっ?」


 ヒナルは、たまたまポケットの中にあったであろう小さい手帳のような物を見つける…。


 「それは?」


 「これは多分…、この幼稚園に通う園児の手帳だよ…」


 ヒナルは小さい手帳のページをぺらぺらとめくる…。そこにも分からない記号だらけの文字が書かれている…。その中には射影機のようなもので撮られた写真があった。


 「お母さん…」


 ヒナルはボソッと小さい声で涙をころしながら言う…。


 「これ…、小さい頃の俺…だよ!」


 俺はその写真を見て驚いた。小さい頃はよく今の母親と射影機で写した写真があり、今でもそれを見る事が出来たから、その写真に写る人物が誰か一目で分かった…。そして、それを知っている自分の姿の時よりも更に小さい時に撮られた写真だ…。その写真には俺を抱いている見知らぬ女性の姿があり…。そのにこやかな表情は俺にも似ていて…、ヒナルにもそっくりだった…。


 そうか…俺はヒナルと同じ世界から…。確かになっとくできる。昔、記憶が曖昧だけど、知らない女性に抱かれていた記憶が少しある。そして自分の名前…ルイスと呼ばれるのが嫌いだった頃も少し覚えている…。


 そっか…そういう事だったんか…。


 じゃあヒナルが悩んでいた理由ってもしかすると…?


 「ここ最近…、ヒナルが悩んでいた理由ってもしかしたら俺がヒナルの…!?」


 「うん…。ひっく…ひっく…、ルイスお兄さん…はね…、本当はね…ひっく…」


 ヒナルはまだ俺の胸に顔を埋めながら…


 「ルイスお兄さんは… 私の…ひっく… 血の繋がった実のお兄ちゃん… ひっく…レイジお兄ちゃん…なんだよ…」


 「…」


 俺はそっと彼女を抱き寄せる…。


 「私は…、お兄ちゃんに…ひっく…、恋をして…しまいました…」


 「…」


 「だから…嫌われ…るんでないか…ね…ひっく…。怖かった…」


 「そんなこと…」


 俺は泣きじゃくるヒナルの顎にそっと手をやり俺の顔を向かせる…。


 「そんな事で嫌いになったりなんかしないよ?」


 「えっ…」


 ヒナルの泣き顔を見て、俺も涙がぽろぽろと流れ出す。


 「この世界じゃあ、実の兄弟でも恋愛する事もある…。気にしないでいいよ?それと一番嬉しかったのは…」


 俺はヒナルの唇に俺の唇を近づけ…。たくさんキスをする…。


 「ずっと一人ぼっちだと思っていた…。母親も父親もいなくなって…。こうして実の妹が… 最高の好きな人が居るんだ…。この上なく嬉しいよ?」


 「お兄さん…」


 「だからもう悩まないで?全てを受け入れるよ?」


 「うん!」


 「だから俺は実の妹だろうが、なんだろうがヒナルという一人の女性を愛してあげるよ…」


 「うん!!私からもお願いします…。レイジお兄ちゃん…大好き…。愛してる…」


 「ヒナル…俺も愛してる…。実の兄で頼りないかもだけど…」


 「うん! お兄ちゃん… ちゅっ… んっ…」


 ヒナルが力いっぱい抱きしめてくる…。そして俺も彼女を力いっぱい抱きしめ…、息ができなきなるくらいの甘いキスをする…。それから俺達は俺のベッドへと向かい…。甘くて優しい時間が過ぎていった…


 

………。

……。

…。


 


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