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47 黄昏色気持ちほろほろ


~ヒナル視点~

 

 王様と話をしてお城を出る。


 「それじゃあ、拙者は忍者の里に一旦戻るでござる。そこにルシルとファデューと落ち合うことになってるでござる」


 「ええ!今までありがとうございます…」


 「いや、これで終わりではないでござる。勇者という事が分かってしまったからには王国は王命をルイスどのに出してくるであろう…。もしも、困った事があれば…」


 お兄ちゃんと仁さん会話している。仁さんは懐からあるものを取り出している。あれはたしか離れた所からでも念じれば相手に意思の疏通ができるという不思議な忍者の道具の1つの共鳴石だ。そう…、今日から仁さんは暫く離れるみたい…。


 「後、拙者から頼みがあるのだが…、ルイス殿の立場を見て後生においてまたとない伝説になるに違いない…。娘達にルイス殿と一緒に何かを学べる機会をあげてほしい。色々見て学んで…、ルイス殿の手助けになってくれればと思うでござる」


 「えっと、こんな俺からなんて何も学べないですよ?!」


 お兄ちゃんは照れている…。よくよく意識して見ると…。お母さんの笑った顔になんとなく似ている…。


 「ふん!アンタから何か学んでやるんだから!しっかり私達に手本を見せなさいよね!勇者なんだからできるでしょ!」


 「姉ちゃん…、私達は学ばさせてもらう方…です…。ルイス兄さんは勇者さんなのです。歴史に残る大チャンス…です」


 私のお兄ちゃんは人に好かれやすいのかな?


 それにしてもまだ昼を過ぎたばかり…。本当にこの国は広いなぁ~。


  これから数日間…私達、皆で大きなホテルに泊まることになる。隣にはお兄ちゃんがいる…。血の複製…というスキル。お兄ちゃんも持っていて、神官さんがこの結果を調べるとやっぱり同じスキルで血縁者同士でしか扱えない"ふたりがけ"というスキルの1つらしい…。

 これで私はお兄さんが本当のお兄ちゃんだと確信した理由になったからだ…。


 気になった私は…。


 「フレアとケアル?聞きたい事あるんだけど…」


 「なになに?ヒナル姉ちゃん!」


 「私達が分かる事ならなんでも聞くといい…です…」


 「貴方達は姉妹だから聞きたいんだけど"ふたりがけ"って知ってる?」

  

 フレアは首をコクコクと頷かせる。


 「あったり前じゃない!まだ私達の特性やスキルは完全にわからないけど…このスキルって血の繋がった人としかできない技なの」


 「私達の"ふたりがけ"はプリズムスターってスキル名をつけた…です。何回かしか使った事がないけど…相手の頭の上に光る星の塊をたくさん召喚はして放つ…です」


 「そうなんだ…。他にはできそう?」


 「無理じゃないかな?一組1つずつしかスキルは使えないみたい」


 フレアはケアルの話を聞きながらコクコク頷く。


 「ふたりがけって凄いね~。兄弟や親がいればできるのかな~?」


 「聞いた話だと歳が近ければ近いほど良い見たい…です。兄弟なら尚更威力が出せる…と聞きました…です…」


 やっぱり、ふたりがけってそういう仕組みなんだ…。


 「ヒナル?よくその特性の事知っていたね?」


 「うん…。聞いた事あったから…?」


 フレアは目を輝かせながら「おーっ!」という表情で私を見る。それから横にいたレイジお兄ちゃん…、ううん…ルイスさんが…


 「そっか!すげぇや!」


 お兄ちゃんは頭をワシャワシャしてくる。本当はお兄ちゃんにしてもらう、このワシャワシャ好きなんだよね…でも…。私がお兄ちゃんの実の妹って知られるのが怖いし、いつまでもこうして、お兄ちゃんの気持ちを知った上で嘘をつくのは嫌だ…。


 「うん」


 「どうかしたか?」


 「ううん…。何でもないですよ!」


 街を見渡すと既にお兄ちゃんと私が勇者と大聖女と知られわたってきていて「あの人が!?」とか「今回の大聖女さんは凄く可愛い」と噂になってあちらこちらから話が聞こえてくる。

 更に、よく聞くのが…「あの二人って兄妹なのかな?」「まさか兄妹で勇者と大聖女?!」なんて噂も耳にする…。


 「そんなに俺達って兄妹に見えるかな~」


 「うむ…、正直な話をいえば笑い顔が凄く似てるでござるなぁ~!でも良いではないか!好きな人は好きな人に似てくる!って言うでござるよ!」


 なんて仁さんも思っていたし…。


 私達がホテルに向かう途中の事だった。奥の治療院からとある3人の患者衣を着ている少女の姿が見える。私と同じくらいか… もう少し上か…。一人は私よりお姉さんという感じだ…。よく、見てみればどこかで見た事のある人達だ…。レイジお兄ちゃんはそれに気付かず、私の手を取ろうとする。無意識の内に私もお兄ちゃんの手を取る…。

 何故かコタースまでお兄ちゃんの片方の手を取る…。


 それを眺めるように見ていた患者衣を着ている3人の女の子達の表情がとても寂しそうに見えた…。



………。

……。

…。



 私達はホテルの前までやってくる。


 「凄いのじゃ!凄いのじゃ~っ!大きいのじゃ~!」


 スルトはぴょんぴょん跳び跳ねて落ち着きがなく。コタースもこういう所は初めてらしく長いウサ耳をピョコピョコさせながら…。


 「う、ウチこんな所に泊まれるの~っ!?」


 と…。


 フレアとケアルは一緒の部屋らしく…。


 「ルイスのアイツが入ってこれないように鍵かけなきゃ!!そして鍵を開けようとしたらアイツを中に誘って… 来なかったら怒ってやるんだから!」


 「姉さん…、そもそも鍵かけたらルイス兄さんが入ってこないし、すぐ居なくなると思う…です」


 なんて…。それ逆に誘ってるよ…。


 皆、凄く楽しみにしている。そして、今日…。お兄ちゃんから、返事が来るだろう…。私はチェックインの手続きを済ませてから、凄く気持ちが落ち着かず…。


 「ちょっと外の空気吸ってくるね?お兄さん…後でまた話しよ?」


 「あ、ああ… わかったよ!」


 私は、外に出る。既に辺りは黄昏色に染まっていて、もうすぐ夜が来る訪れの景色となっていた。沈みかける太陽が何か今の私の気持ちを表しているようだった。







 

 

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