32 昔の勇者パーティー…
ぽか~ん…。
エルフの美しい大人なお姉さんが…。
ぽか~ん…。
デスフラッグの群れを倒してからしばらくフィリシアは ぽか~ん…としている。暫くして我に返って…。
「いやいやいやいやいやいや!! あんなのチートすぎるだろ!!何がどうなってるんだ?!そもそも、ルイスといったな?!貴殿から他のメンバーにもバフが付与されてるじゃないか!?」
「へっ?!」
俺は変な声をあげてしまった。うん…、最近、変な声出してばかりだ…
「貴殿には自覚がないのか!?」
「たしかにルイスどのと居ると普段以上の力が出せるでござるなぁ…。」
「うんうん~っ!ウチも普通に魔弓を使いこなせてるし~っ」
「私は分かりませんが…、お兄さんのお陰で回復魔法の効果が高い気がします…」
他のメンバーも、自覚はあったみたいで…。
「そもそも、貴殿達はスキルを見るからに、忍者、ラビット族の魔弓使い、そして大聖女なのでは!?もしそうならはるか昔に災悪から世界を救った勇者メンバーの一部ではないのか!?」
「そう言われてみれば…、まぁ…、ヒナルのジョブが何かはまだ分からないけど…」
「拙者のご先祖様も昔、当時の勇者と行動を共にしていたという話を聞いていたでござる。一番親しい友人だったとかでござる!」
「ウチのご先祖様もはるか昔の勇者様に助けられてから一緒に旅をしたらしいよ~っ!おとぎ話にもなっているんだよ~っ!」
意外だった…。昔の勇者に関わったジョブを持つ者達がここに集結している事に。たしかに今のメンバーは強いけど…。でも俺は勇者ではない…。勇者はもう存在しているのだから…。それに勇者は俺から色々奪っていった…。
何故か一人だけ、省かれたように感じた俺がいた…。
すると俺の横にいたスルトが…。会話を楽しそうに聞きながら…。
「我も知っているのじゃ!我のお父様も勇者と共に戦った英雄なのじゃ!なにせ我のお父様は…」
ただ…しばらくして…
「…あれ? …はて?我のお父様ってどんな人だったか…。やっぱり思いだせないのじゃ…」
「聞いたことがあるぞ!その勇者が古の魔王と一緒に世界を救ったと!」
フィリシアの言葉に全員が
『え~っ!?!?』
一斉に叫び出す。
「まさか!?スルトって…!?」
「な、なんじゃ!まさか我が魔王の娘と言いたいのじゃ!?でも思い出せないのじゃ…」
たしかに確証はないが…。黒ずくめの女がスルトを狙っていた理由…。まさかね…。
「もしそうなら… スルトが狙われている理由って…」
「ん?狙われているのか?この子が?」
フィリシアなら信頼に値すると思いヘルポリアの件の事を話をした。黒ずくめの女が盗賊に不思議な力を貸して人を拐っていたり、スルトを奴隷として捕まえていた事を…。
「まて!その黒ずくめの女だが…。私も悪い噂を聞いたことがある。この森のあっちこっちにあるダンジョンで目撃している話があり…、その女が入ったダンジョンのモンスターが狂暴化したり数が増えたと…。」
ん?まさか…、ここのモンスターがおかしかったり見たことないモンスターがいるのって?まさか…。
「さっきのモンスターもいい例だ。その女が現れてから見かけるようになったモンスターらしいからな…。だから私達はこうやって巡回をしているのだ」
「何やらあまりいい話でないでござるな…。拙者も元仲間とその女のせいで里が崩壊してしまったでござるからな…」
フィリシアは床に置いてあった槍を取り上げ…。
「そして、王都にて勇者に協力要請を出しているが一向に来る気配がない…。何をしているの…全く…」
勇者…、アレックス…。あいつは何をやってるんだ?!俺の恋人を寝取った挙げ句、職務すらも放置してやりたい放題だろ…。
俺は段々イライラがたまりついに…。
「実は俺…、元は勇者パーティーの一員だったんだ…」
事の流れを仲間達やフィリシアに話をする。恋人や幼馴染みの双子を寝取られた挙げ句の果てに無能と言われ続け…
最後はダンジョンに置き去りにされた。ギルド内でも勇者パーティー達はどこでもかしこでも場所を気にせずヤりまくっている話等を洗いざらい話す…。
「なんともまぁ…今の勇者はとんでもないクズだな!」
「拙者も呆れるでござる…」
「ルイス~!落ち込まないで~っ!ウチがいるから~っ!」
「なんなのじゃ!我はそんな奴を勇者として認めないのじゃ!のじゃ!」
「お兄さん…」
ヒナルはそう言うと、俺の手をぎゅっと強く握ってくる。俺もヒナルの手を強く握り返した…。心配してくれているのが凄く伝わる…。
それからフィリシアさんと色々な話をしてから…。
「では私はそろそろ巡回を再開せねばならん…。道中気を付けて…、といったところで貴殿らなら大丈夫か…」
そうして、また俺達は馬車に乗りながら王国へと向かう…。
………。
……。
…。
日が少し降りようとしている頃…、ようやくクレンセントの森出口ら辺にさしかかる。辺りは広大な大地が綺麗で美しい。更に奥を見渡すと王国の城がぼんやりと視界に入る。
「ルイスどの!」
仁さんが俺に話かけてくる。
「実は、拙者の自宅が向こうの林に囲まれた湖の側にあるでござる。今日は拙者の家で一晩泊まっていくといいでござる」
「いいんですか!?」
「ルイスどのなら安心でござるからな!ははは!」
そうして、俺達は仁さんの自宅へと進むのだった…。
………。
……。
…。




