28 しばしの別れと出発。
俺は慌てて毛布を剥ぎ取る。見て…、冷や汗をかいた…
「はぁぁああああああっ!!」
俺の下半身に全裸姿のスルトがすやすやと眠っていた。小さい膨らみがあらわになって尚更目立つている。ヒナルやコタースより小さい…。って何考えてんだ俺は!?
というか、こいつ…優雅に笑いながら寝てるぞ…。その時だった…。
コンコン。とドアの叩く音が聞こえる。
「ルイス~っ!」
「お兄さん~朝ですよ!」
開けるな!開けるなって!今は非常にまずい!!
「開けるよ~っ!」
ガチャ…。
(あ、終わった…。俺、終わったわ…)
「げげっ!!ル、ルイスさん~っ、やっぱりそういう趣味が…」
「お、お兄さん…!やっぱり奴隷だからって!?」
そして、更に……。昨日、ジェイさんが戦った相手…。ファデューさん!?
「はぁ~い!昨日のお礼したくて~っ、ヒナルちゃん達と美味しい美味しいご飯つくったの~…ってあらぁまぁ!いやだわぁぁぁ…、んまっ!ハレンチなぁ!」
ちょ、ちょっと!ファデューさん、キャラ変わってないっすか!?!?
「ヒナルちゃん達~、お邪魔しちゃ悪いから向こう行くわよ~。それ~!レッツラゴ~!」
「あ~あ~っ、ルイスはとうとう一線を…」
「お兄さんの事…幻滅しましたぁ…」
「ち、違うんだ!待ってくれ!!」
ちょうど、俺の下半身で寝ているスルトが目を擦りながら目を覚ます…。
「なぁんなのじゃ~… 我は眠いのじゃ~…」
「お、おい!スルト!!なんでここにいる!?」
スルトはムスっとした表情で俺を見る…。また目をごしごし擦り…、今度はヒナル達を見る。
「そ、そうですよ?!私のお兄さんから離れろーっ!」
「へ~っ?いつから~っ、ヒナルのになっちゃったの~っ?まずは~っ、ウチからだよ~っ!」
ヒナルとコタースもなんなんだ?!
「ん~っ…まっ!なら… アタシもルイスちゃんに美味しいご奉仕しちゃおうかしら~っ!るーるるん」
ファデューさん…、あんたが一番危ない…やめてくれ!俺はそっちの趣味はないぞ!
「んーっ…、昨日寝惚けて…ルイスの部屋に間違ってはいったのじゃ… めんどくさかったからしばらく顔見ていたら眠くなって…毛布の中潜ったらあたたくて寝てしまったんじゃ…」
「それにしてもー、なんで裸なわけ?!」
「そうだ~っ!そうだ~っ!」
二人して今度はスルトに言葉を投げ掛ける。
「うるさいのじゃ~っ… 我は寝る時はいつも裸なのじゃ~… そんなに羨ましかったら二人も裸になって寝ればいいのじゃ!」
「う、羨ましくなんて~っ、ないよ~っ!いいから早くどきなよ~っ!」
「私の胸…少し小さいから… お兄さんがいい…なら…!」
「特等席なのじゃ!誰にも渡さないのじゃ!我のご主人様じゃからの!」
なん…なの?この状況…!
「あらあらぁ~、ルイスちゃん!モテモテねぇ…!アタシも混ざっちゃおうかしら!」
「や、やめろ~~~っ!!」
そんなうるさい朝から始まった…。
………。
……。
…。
宿屋の食堂にて皆が集まる。ヒナル、コタース、スルト、ジェイさん、ルシルさん、ファデューさんがそろっている。
目玉焼きと色々掛け合わしたサラダ。そして忍の里に伝わるという、白米という米を使い釜で蒸して作った豆よりも小さいふっくらしたご飯。そして大豆やこうじや米糠や食材を塩と一緒に掛け合わして作って熱湯で溶かした味噌汁というスープみたいな飲み物まである。
ヒナルとコタース、ファデューさんが俺よりも早く起きて宿屋の女将さんに厨房を借りて朝食を作ってくれていたみたいだ。
「凄い…いい匂い…」
「いただきま~す!」
「ん~ま~ぁ!ヒナルちゃん、よくできたじゃない~。余った味噌はあげるから、旅の時使ってね~」
「ありがとうございます!まぁ、作ったことあったので…。それにしてもファデューさんのお味噌汁…。私が知っている味噌汁と似た味がしているので懐かしい!」
「あらぁ~まぁ~!ヒナルちゃんも忍食食べたことあるの~!に・ん・し・ょ・く!キャハ!」
ファデューさんのそのキャラについていけないぞ!おれ!そしてルシルさんも元気になった…。
「やっぱ、操られた状態で食うのと自分で食う飯は全然ちげぇ!うめぇぞ!」
「ははは!まるで昔に戻ったみたいでござるな!」
スルトも他の人達ともうまくやれて…。
「スルト~っ、それウチが食べようとしたやつ~っ!」
「遅いのがいけないのじゃ!のじゃ!」
「む~っ!!」
…やれているのかな…?コタースは顔を赤くして怒ってるぞ!?
わいわいガヤガヤと少し楽しく食事をして、宿から出る。女将さんも「また泊まってよ~」と言ってくれた。
………。
……。
…。
村の入り口まで来てから…。
「さて…、俺達は一旦散らばった忍者の仲間を探す…。」
その言葉につづきルシルさんとファデューさんが姿勢を正して深々と頭を下げる。少し間をおいてから…
「仁、それとヒナルやスルト…、それからルイス達には迷惑をかけちまった。改めて謝罪する!」
「アタシも同じく…。本当に迷惑かけました…。この恩は忘れる事なく借りは返す…。」
「操られていたのだから仕方ないのじゃ!貞操も奪われなくて安心なのじゃ!」
おい…。
「仕方ないでござる。二人とも、もう顔を上げてほしいでござる!」
「私も、連れ去られた事に対してはもう大丈夫ですよ!操られていたんだからどうしょうもないですよ!」
ルシルさんとファデューさんは頭を上げる。
「気にしないでください。二人が何もなくよかったですよ!」
「まじで好青年だな!これからの道中、何かあれば俺達を頼ってくれ!」
「本当よね~。いつでもアタシはルイスちゃんの味方よ!ミ・カ・タ~!」
「拙者も仕事の役目が終わり次第すぐそちらに向かう!スザクは野放しにはできんのでな!」
すると、ルシルは服の懐からあるものを俺やジェイさんに数個手渡された。
「これは共鳴石だ。忍具の一つで、持つもの同士で意思の疎通ができる。何かあればこれで言ってほしい…」
「わかったでござる!」
「ルイスちゃん達もまたネ~!」
そうして、ルシルとファデューは俺達とは違う方へと歩いていったのであった…。




