26 赤髪で黒い瞳の少女
ルシルは口ごもった声で…、それでも力強く答えを出す…。
「……分かった…。罰を受けるのはスザクを討ったその後じゃあ…! 仁よ…、いや神牙27代目の棟梁!神牙仁よ!友に戦うぞ!!この俺が仁の片腕となろうぞ!!」
ルシルはファデューを抱き抱えながら、大きな刀を地面に突く。力強い意思を感じた。そして何よりも…。今後、俺のためにもその力強い大きな刀となってくれる事と今の俺には、まだ分からなかった…。
「兄弟子!!感謝するでござる!」
暫くして、ルシルは村に戻り盗賊を捕まえたと報告しに行く。奥には捕まった村人と、その少女もいるから俺達に解放してほしいとの事だった…。付き添いにジェイさんとコタースを連れて村に戻る事となった。
………。
……。
…。
洞窟の奥。ルシルさんから渡された鍵を使い牢屋に捕まっていた村人を解放をする。村の衛兵が到着するまでの間、ここで待機してもらう事となった。
俺達は全員を解放した後に、更に奥へと進む…。そこには鎖で繋がれた少女の姿が見えた…。
少女はまだ12歳くらいかそれくらいの見た目をしているが…、頭に小さな黒い角が見える。髪は深紅に染まった赤い髪。そしてこちらを見るその目は漆黒に染まったような目。一目で見て人間じゃないのが解った。
「お兄さん…、あの子…、人間じゃない…よね?」
「ああ…、初めてあんな人を見た…」
まるでおとぎ話に出てくるような魔族のようにも感じる…。しかし、見た目は少女だけどもどことなく異様な雰囲気があり、美しくも見える。どこか引き寄せられそうな…、そんな少女だ。
俺達はその少女の近くへと進み、渡された鍵で牢屋を開ける…。すると少女がこちらを睨み付け喋り出す。
「なんじゃ??もう我を買いにきた変態がきたんじゃな?全く、人間というのは、こんなか弱き美少女にも手を出そうとする変態が多くて困ったものじゃ…」
「君を助けにきたんだよ」
「へ?我を助けに来たじゃと?嘘をつくのはやめるのじゃ!あんな化物みたいな大きな男をこんなひ弱なお主が倒せるわけないのじゃ!」
ううっ…、聞いていて痛い…。もっと鍛えるか?ムキムキに!!
「本当だよ!お兄さんがその大男を倒したんだよ。村の人も解放したとこ!もう大丈夫だから!」
ナイスフォロー!ヒナル!
「はて、確かに盗賊どもが静かになったのじゃ!お主やるのじゃ!!でも見た目弱そうなのじゃ!」
ぐぐっ…。
「我はスルト!!我は……、はて?なんじゃったっけ?忘れたのじゃ!!」
「スルト?自分の事思い出せないのか?どこから来たのかとかも?」
すると、スルトは半泣きになり両手を頭に持っていき、あたふたあたふたと「わすれたのじゃ!」「まずいのじゃ!」と独り言を言っている。
「あっ!!でも一つ思い出したのじゃ!!あの黒ずくめの女になにかされたのじゃ!!許せないのじゃあ!」
半泣きになったと思ったら今度はキレだした。喜怒哀楽が激しい少女だ。
「まっ、そういう事もあるのじゃ!そしてお主達はなんと言うのじゃ?」
「俺はルイス…。ルイス・ガーランドだ…」
「私はヒナル・。スガ・ヒナルだよ!」
俺達は挨拶をする。スルトは目をぱちくりさせて…。
「むうっ?むむむ?お主達、兄妹なのに名字が違うのか?変なのじゃ!」
「「えっ?!」」
俺とヒナルは変な声をあげる。
「なんで驚くのじゃ?逆に兄妹で名字が違うのは変なのじゃ!」
「いや、俺達は兄妹じゃないぞ」
「うん!つい少し前に知り合ったばかりだし… というか、そこは兄妹じゃなくて恋人にしてほしい…」
ん?なんかヒナルから凄い発言が聞こえたんだが…。
「む?ヒナル?今何て言ったのじゃ?」
「えええっ!!なんでまた言わなきゃいけないの?!」
ヒナルが顔を赤くしながら慌てて 両方の手の平をくるくるしだす。
「まぁ、いいのじゃ!でも本当に、お主達は凄く似ていて兄妹思ったのじゃ!!」
「ははは…」
「むぅ~…。それにしても良かったのじゃ!やっと解放されたのじゃ!」
「でも困ったなぁ…。帰る場所もなければ一人にもしておけない…」
「我は奴隷に落ちた者じゃ!どうしてそうなったかはわすれたてしまったけど!だから我と契約を結ぶのじゃ!」
奴隷が決まった相手と契約する時、奴隷には魔法がかけられていて、奴隷と主従関係を結ぶには大事な儀式みたいなものだ。主従関係がない奴隷を連れ歩けば違法ともなるし主従関係を結べばどんな命令も従わす事ができる。
「主従関係を結んだからと、いきなりエッチはいやなのじゃ!我はまだしたことがないのじゃ!するなら優しく…なのじゃ!」
「すっ、するわけないよ!そんな事は!ッゲホゲホっ!」
いきなり何を言い出すかと思えば…
「お兄さん… 怪しい…」
ついでに横にいるヒナルはジト目でこちらを偏見な眼差しで見てくる。視線が痛い…。
契約を結ぶため、俺はスルトの手を握る。スルトの首筋にある黒い首輪が赤黒く光を放つ…。一瞬の出来事だ…。
「むっ!!むむむむっ!?!?」
「こ、今度は何!?」
「お主…、もしかして…?」
スルトはこちらを真剣な表情でまじまじと見てくる…。
「な、何?」
「お主…もしかしてロリコン?」
「あー、たしかにそうかも…ですね…。こないだ裸見られたし…」
「へっ?」
俺は変な声をあげるとともに一瞬、時が止まった。真剣な表情だったからとても重要な事と思った俺がバカだったああああ!
「いや、今のは冗談じゃ!」
少し沈黙が続く…。そしてスルトは…。
「ルイス…、お主は勇者なのじゃ?」
「えっ? いやいや!俺は勇者じゃないぞ!既に勇者はいるし!」
「む~っ、おかしいのう…、たしかに勇者の力を感じたのじゃ!我の記憶は失われているのじゃが、昔…、先代の勇者の手を取った時と同じ力を感じたのじゃ!」
「うん?!先代の勇者!?スルトは何歳なの?!」
「えっ?勇者って頻繁に湧き出てくるんじゃないの!?」
「うむ。勇者はこの世に一人しか存在しないのじゃ!その勇者が消えた時に新たな勇者が力を授かると聞いたのじゃ! ちなみに我があった勇者は今から200年前なのじゃ!」
「「ええ~~っ!!!」」
俺達は、同じトーン、同じ叫び声を上げ…。その声が洞窟内をこだまする…。




