18 静かな村と盗賊団…
ヘルポリア村に到着した俺達は、先ずは宿に入り、宿泊の手続きをすますため宿に向かう。ヘルポリアは森に囲まれた木造住宅が立ち並ぶ集落だ。
夕方の時間のせいか、人気があまりなく生活音すらも聞こえないくらい静かな村だ。
「ただ馬車に乗っているだけなのに結構つかれるね~。ウチ、腰痛いよ~」
「う~~ん…っしょっと!! いたたた…私も痛い…」
「お前ら… まだ若いだろ?」
二人のその姿が老人に見えて少し笑ってしまった。
「ルイス君。ここ最近、緑骨団の様子がおかしいみたいでござる。村もその対策かと思われるでござるよ。拙者は荷物をおろしてくるでござる。先に宿に行っててもらって結構でござるよ?」
「いや、俺も手伝いますよ?」
「ははは!これは拙者の仕事でござる!何も気にする事ないでござる。ルイス君はお嬢さん方をエスコートする仕事があるでござる!」
「あ、ああ…! ありがとう!」
そう言うとジェイはニコニコしながら馬車へと向かっていった。俺達は宿へと向かい歩き進む。
さっきジェイが言っていた緑骨団…。その集団は荷物等の略奪、人身売買等で有名な犯罪者の盗賊集団。人も何人もが犠牲になっている。だから国からも討伐対象となっているらしく手配書もよく見掛けるほどだ。
「そういえば、ヒナルを助けた時に逃げ出したあの少年達はどうなったんだろうな…」
「アイツらの事は、もうどうでもいいですよ。アイツらは酷いことばかりしていたやつらです…」
ヒナルは、目を細めて少しキツメな言い方をする。
「それにしても~っ、ルイスのその剣…、切れ味凄かったね~っ!」
「あぁ。ガッシュには感謝しかないよ。コタースの魔法付与の弓さばきも凄かったよ!まさかあんなに戦闘が楽になる思わなかった」
弓使いと言えば幼馴染みのシューもそうだった。彼女のジョブはシーフ。短剣と弓を扱っていたが、彼女の弓スキルは魔法というより、技術でのスキルが多かった。だから、コタースの弓によるスキルは斬新で新鮮なものがあった。
「お兄さんお兄さん。ここが宿ですか?」
話しているうちに宿まで来たみたいだ。少し小さいこじんまりとした宿だ。煙突ならはもくもくと白い煙を出していてスープのような美味しそうな匂いが漂ってくる…。
「いらっしゃいませー」
戸をあけると中年の女性が賑やかに話しかけてくる。俺達は宿の手配をしている間にジェイも到着した。
「では、1部屋2名様ずつ、お好きな部屋つかってくださいな。晩御飯はすぐできるからそこの食堂で食べてちょうだいね~」
荷物を部屋に置いてから全員、食堂に集まる。色々と世間話したりわいわいやってから部屋に戻ろうとした。
「じゃあ、ルイス、ジェイさん~っ、また明日ね~っ!」
俺とジェイは部屋に戻ろうとした。
「お兄さんお兄さん?」
「ヒナル?」
ヒナルは俺の手を繋いできた。
「今日はお疲れ様です!」
ヒナルはニコニコしながらそういうと、チョコ数個を手渡してきた。
「宿のおばさんから沢山もらったんですが、ルイスさん達も食べてください!あっ!寝る前はダメですよ?」
「あぁ!ありがとう!」
ヒナルは嬉しそうに部屋に入っていく。ふと窓から空を見ると辺りはもうすっかり暗くなっていて、廊下に備えてある蝋燭の明かりがとてもキレイにおもえた。
………。
……。
…。
部屋に入るなり、先にくつろいでいたジェイが口を開く。
「ルイス君。やっぱり、村が静かなのは緑骨団のせいらしいでござる…」
「緑骨団が?!」
「ええ。先ほど、馬車から荷物をおろしていた時に拙者を緑骨団と間違えた住民がいて、その人から聞いた話しでござる…。ここ最近、村に頻繁に出入りしているとか…」
「万一に備えて気を付けた方がいいですね…」
「とりあえず拙者は、安全のため、番を取らせていただくでござる…」
「ジェイも今日は疲れているんじゃないですか…?」
ジェイは俺の顔を見ながら何か思っているかのように…
「いえ!拙者は"スピードと体力だけ"には自信があるでござる!魔法等はからっきしでござるが!ははは! まぁ…、何かあればすぐにかけつけるでござる!」
そう言うと、ジェイはテーブルに置いてあるジェイの短剣を持ち部屋から出ていった。
「ジェイ…」
心配してくれるのはありがたいが…。まぁ、彼は彼なりに気を使ってくれているのであろう…。
………。
……。
…。




