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17 旅のお供にトランスポーター

  あれから数週間経った。今日から王国にある魔術学院に向かう事となる。ヒナルもコタースも準備は万端だ。王国に向かう道中にギルドからポーターを紹介されるらしい。俺達の物資を運んでくれる人をわざわざ頼んでくれたみたいだ。そういう事もあり、その前にギルドに寄ってから出発する。


 「準備はいいか?そろそろ行くぞー。」

 

 「いつでもOKですよー!」


 「ウチのパンツどこしまったっけ~っ!ルイスみてない~っ!?」


 四つん這いになりテーブルの下等を見ながらお尻をふりふりさせているコタース…。熊さんパンツ丸見えだぞ…。ふとコタースはこっちを見る。

 

 「なに見ての~っ!?」


 「み、みてねーよ!そんなの!」

 

 ヒナルは少しひきつった表情でこちらを見る…。が…、わざとな表情だ。


 「む~っ。さては取ったな~っ!ルイスの変態~っ!」


 「お兄さんのエッチ!」


 「あほかー!!」


 そんなアホなやりとりをして、コタースはバッグの中を調べたらちゃんと入れていたパンツをようやく見つけたのだった。



………。

……。

…。




 ギルドに向かう最中、一人の冒険者に会った。大きな斧を背負うガッシュだった…。


 「よう、ルイス!」


 「あぁ、ガッシュ!」


 「今日から王国に行くんだってな?」


 ガッシュはニコニコした表情で問いかけてくる。以前の無能扱いの時とはまったく違う。


 「その…、なんだ?前は、本当にすまなかった!どうか中傷してしまった事を詫びる…」


 ガッシュはそう言うと深々と頭を下げる。どうやら本気で謝っているのが伝わってくる。


 「気にするなって。頭あげてくれよ。」


 そう言うと、ガッシュは頭を上げ俺の事を真剣な眼差しで見てくる。


 「これから、王国に向かうんだってな?ならこれを使ってくれ。」


 ガッシュは腰にぶら下げていた剣を一本、俺に手渡してきた。まだ新しいし、何せ上等な剣に見える。


 「この剣は?いいのか?!」


 「ああ。問題ない。それは、ミスリルソードだ。ドワーフ族が加工した剣だから… そのなんていうか…。俺にはこのでけぇ斧があるし、こっちの方が使いなれている。その剣はお前の戦い方にもぴったりだろ?」


 「ありがとう! 大事に使わさせてもらうよ!」


 「その、なんだ? こっち戻ってきたら…、一杯やろうぜ!」


 「ああ!楽しみにしている!」


 ガッシュは後ろに振り返り歩いていく。振り返らず手を高く上げ振りながらばいばいして去っていく。

 自分のスキルがまだ分からないから喜んでいいか分からないけど、そんな彼を見ると俺は凄く嬉しかった。少し自分に自信が持てた。そんな感じがした。


………。

……。

…。



◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️



………。

……。

…。



 今、ギルド長の部屋に来ている。部屋の中に大きな椅子と豪華なテーブルがあり、そこで会話をしている所だ。それ以外は相変わらず質素な部屋だ。


 「今日から、暫く同伴するトランスポーターを紹介する」


 「はじめまして。拙者はポーターをしているジェイと申す者でござる」

 

 「今回はありがとうございます。わざわざすいません。ルイスと言います。宜しくお願いします」

 

 俺は、ジェイと握手をする。その後に続き…。


 「私はスガ・ヒナルと言います。」


 「ウチはコタースって言うよ~っ!」


 二人とも、ジェイと握手を交わす。ジェイは二人と握手を交わした後、一礼をして…


 「いえ、ルイス君達の活躍は拙者の耳にも届いて聞いているでござる。あのオーガを瞬殺だったと話を聞いたでござる。自分が変えれるかもしれないと思い拙者からお願いしたでござる!」


 ギルド長アドバンは王国までの長期の旅になると予想して荷物運びを手配してくれた。アドバンの隣にいる青年がそうだ。年は俺よりも年上らしく細くて引き締まったように見える体格。表情は優しそうに見えて頼りありそうな兄貴という感じだった。


 「…と、言うわけだ。ルイスにとっちゃーこれからの旅にいいだろ? 今回、募集をかけたらジェイが進んで手を上げてくれたんだ。流石に道中、荷物運びながらはつれぇだろ?その辺引っくるめて俺達、ギルドが支援してやるからしっかり適性検査受けてこい!良い結果じゃなかったとしてもルイスにしろ、お嬢ちゃん達にしろ、今後の事がしっかり分かる大事な事だからなっ」


 「アドバン…。本当に助かる…」


 「気にすんなって。お前はそれ以前から色々とギルドに協力してくれてるだろ?それに先日のオーガ撃退は見事なこった。それ以上の事をしてくれてるだろ?」


 俺は、この言葉が何よりも嬉しかった。少しくすぐったかったけど…。


………。

……。

…。



 街の外に出て、街道を通る。小さな馬車をポーターであるジェイが動かして、その荷台に俺達が座る。その間、ジェイと世間話をしながら進む。

 まず、メルドアの街を出て暫く街道を進むとヘルポリアの村に到着する。丁度そこにつく頃は夕方に近い。今日はそこで泊まり、明日はクレンセントの森中間辺りまで行く予定だ。


 ジェイと世間話して、色々彼の事が分かった。彼は王国近郊にあるスガラットの村出身で奥さんとまだ12歳の双子の姉妹がいるという事だ。ジェイの奥さんは、元々はそれなりに腕の立つ冒険者で魔法使い。双子の姉妹は黒魔法と白魔法を使えるらしく、ジョブはまだ適性検査を受けれる年齢ではないが黒魔導士と白魔導士になるんではないかと噂されているらしい。


 「拙者の自慢の娘達でござるよ!」

 

 「ウチ達と仲良くなれだね~っ!」


 「ははは!会った時は仲良くしてあげてくれたら嬉しいでござる!!」


 「そういえば、君たちにも家族がいるんだろう?」


 ジェイの言葉に二人は、静かになってしまう…。


 「ウチは… おばあちゃんしかいないんだよね~っ…」


 「私は…」


 ジェイはその返答を聞くなり、まずいと思ったらしく…


 「すまない…。変な事を聞いてしまったでござる!」


 「いえいえ!大丈夫です!」


 それから話題を変えて、俺達はヘルポリア村へと足を進める…。道中、色々とモンスターも出てきたが、モンスターはやっぱり瞬殺だった…。ジェイもそれを見て…。


 「やっぱり、噂以上に凄いでござる!娘達に自慢したいでござる!」

 

 なんて歓声を上げていた。うん、まじでなんでかわからん…。


 辺りが少し黄金色になりかけてきた頃…。ヘルポリアの村へと到着してそこで一晩泊まるのであった…。



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