39 秘密兵器
決闘開始の合図と共にイナセはフーリエに向かって駆け出した。そして、微動だにしないフーリエに剣を振りかぶり……
「……え⁉︎いなっーー」
刹那、背後から淡く輝く水晶が無数に飛んでくる。この数はイナセでも流石に避けられない。
仕方ない。刃こぼれしてしまうけど剣で受け流すしかないか。
イナセは規則的なステップを刻んで可能な限りの水晶を避けて、避けきれなかった何個かの水晶を剣で軽く弾き、軌道を変えることによって回避する。
しかし、フーリエは甘くはなかった。彼女はイナセの着地地点ドンピシャに魔法陣を仕掛けていた。そして着地と共に強力な重力がイナセを地面に抑えつける。
「あっはははぁ!どうやら私の勝ちのようね。大人しく負けを認めたらここでやめてあげるけど?」
「……ぐっ、くそぉ……」
尋常でない圧力が全身を圧迫する。下手したら体が破裂するかもしれない程の圧力を、フーリエはイナセが死なないギリギリの強さを調節してかけている。
だが、ここで諦めないのがイナセの性根である。力尽くで手を動かし這って地面を移動する。少しずつだが魔法陣の外側に近づいていっている。イナセは歯を食いしばり、力の限りを尽くして筋肉を酷使する。
『おぉっとイナセ君が校長先生の魔法陣から抜け出そうとしています!あまりの馬鹿力に校長先生も思わず焦りの表情を見せています。果たして抜けられるのでしょうか!』
「イナセたん、残念だけど……本気を出させてもらうよ」
するとフーリエは魔法陣を操作している右手はそのままに、左手をポケットに忍ばせる。そのポケットから出てきたのは、漆黒のフォルムが特徴的な細長い杖であった。
「これは魔法の範囲を狭める代わりに座標計算省略、威力増加をさせる魔法使いの秘密兵器さ」




