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水門のガーディアン——Water Gate Guardian——  作者: 上部乱


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第39話 家はここにある


俺は五色の光がフェナリを連れ去るのを見送り、喧騒に満ちていた戦場は突如として真空に近い静寂に包まれた。


雲が晴れ、豪雨の後の土の匂いが砂漠に贅沢に漂っている。


俺は長く濁った息を吐き、張り詰めていた神経がようやく緩んでいくのを感じた。


心の中で思う――これでこの戦争は……ひとまず区切りがついたのだろうか。


ならばこの血まみれの装備を脱ぎ捨てて、ワハーに戻り、シーリンと穏やかな日々を過ごせるはずだ。


振り返ると、地平線の向こうからシーリンとチャクルが並んで歩いてくるのが見えた。後ろにはグルルともう二人のサハギン戦士、そして疲れているが勝利の輝きを宿した大勢の兵士たちが続いている。


思わず口元が緩み、俺は一歩を踏み出して彼らの歓声を受けに行き、久しぶりにシーリンを抱きしめようとした。


しかし、足先が濡れた砂地に触れたその瞬間、異変が起きた。


温かく、しかし抗えないほど強大な神光が、予告もなく俺を包み込んだ。


その光は、フェナリを連れ去った五色の光とは違って純粋で眩く、高次元から来るような平穏を帯びていた。


驚く間もなく、俺は光の束に飲み込まれた。


意識は無限の虚無の中でしばらく白く空白になり、時間と空間の感覚はここでは意味を失っていた。


やがて思考が戻ると、俺は白一色の次元に立っていた。


目の前には発光する謎の存在が現れた――この世界に来たときに最初に見た、あの姿だ。


「今回の人生に、満足しているかね?」

発光体からの声は自信に満ち、まるですべての筋書きがその掌中にあるかのようだった。


「えっと……満、満足です」

俺は一瞬戸惑いながらも、正直に答えた。


確かに不満は山ほどある――命の危機、乾いた食事、さっき俺を灰にしようとした火の龍のこともある。


だがシーリンの笑顔、チャクルの愛らしさ、そしてボールと共に歩んできた日々を思い返すと、俺はこの旅に悔いはないと感じた。


「ふう……よかった。騙して連れてきたわけじゃないと分かって安心したよ」

その言葉に、俺は苦笑した。やはりあの存在は、几帳面で誠実な神ではない。


「さて、この世界の危機はひとまず去った。君が元の世界で抱えていた『悪縁』も消えた」

発光体が一瞬光を強め、珍しく真面目な口調で続ける。

「どうだ、帰りたいかね?」


「家……」

その言葉を聞くと、頭の中に元の世界の両親や、昔一緒にふざけていた友人たちの顔が走馬灯のように浮かんだ。


エアコンが恋しい、ネットが恋しい、ありふれた日常が恋しい――そう思ったが、俺は首を振った。


確かに彼らが恋しい。しかし、この大地の人々が俺を必要としている。


この世界で、俺は水門ガーディアンであり、ワハーの守り手だ。


何より、シーリンが俺を待っている。


「……俺の家はワハーにある。この可愛いオアシスの村に帰らせてくれ」

俺は迷わずそう言った。


「まあまあ、君ときたら、私の好意を無駄にする気かね」

発光体はそう言いながらも、どこか嬉しげでいたずらっぽい調子だった。


光はますます強くなり、俺は目を開けていられないほどの白さに包まれた。

だが視界が完全に白くなる直前、光の中に親しげで優しい笑顔が浮かんでいるのをかすかに見た。


次に目を開けたとき、耳には現実の風の音が戻っていた。


「――!」


シーリンが赤い旋風のように駆け寄り、俺を抱きしめた。

その抱擁は、まるで俺がまた消えてしまうのを恐れているかのように強かった。


後ろから兵士や村人、グルルたちも駆け寄ってきて、皆が俺の名を叫んだ。その声は砂漠の朝にいつまでもこだましていた。


俺は雨上がりの澄んだ青空を見上げ、その壮麗さを胸に刻んだ。


心の中で確かに分かっている――元の世界はもう思い出の片隅に大切にしまっておけばいいのだと。


ここでの人生こそが、俺の根を下ろすべき場所なのだ。


『帰りたくなったら、いつでも言いなさいよ』


俺は顔を上げ、まだ残る雨雲の残影の向こうに、誰かが微笑んでいるのを見た。


それは神の戯れであり、同時に俺の最強の後ろ盾でもあった。


俺はシーリンをぎゅっと抱きしめ、昇る朝日に向かって、この日々で一番軽やかな笑みを浮かべた。


(第一部 完)


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