第31話 夜襲
フェナリの盗賊団は村の中に突入しては来なかった。
彼らは村外、だいたい二キロほど離れた荒地に野営を張り、夜の闇の中で焚き火がちらちらと揺れて、不安げな眼のように見えた。
野営地と村との距離は、砂羯に乗る盗賊にとっては襲ってはすぐ撤退するのにちょうどいい塩梅で、まさに彼らの思惑通りだった。
戦争の始まりは、しばしば叙事詩のように派手ではない。
今回も同じだった。
フェナリは二、三人の小手先だけを送り、軽装で砂羯に乗せて村の周辺をうろつかせ、簡素な弓矢と数本の火矢を携えていた。
彼らの戦術は単純だ――撃てるものは撃ち、燃やせるものは燃やす。
相手を走り回らせ、防衛側の体力と気力を削るのが狙いだ。
屋根に一、二本の火矢が突き刺さって茅葺きの家が一軒焼けても、大事には至らないように見える。
しかし彼らは一晩中断続的に襲ってくる。まるで蠅のようにしつこく、厄介だった。
火の光が夜にちらつき、煙が星空を薄く黄色く染める。
村人たちは交代で砂袋を抱え、粗末な木桶で火を叩き消す。疲れた叫び声と子供のすすり泣きが混ざり合う。
ベイの兵士たちは怒りに駆られ、砂羯に乗って追いかけようとしたが、クルユウドが眉を寄せて首を振り、止めた。
「追いつけない。奴らは最初から撹乱が目的で、軽装で来ているんだ」と。
十日以上ぶりに姿を見せた老村長ムフタルがゆっくりとこちらに歩み寄る。
焚き火の光に照らされた彼の顔の皺は地図のようにくっきりしていた。
「ただの嫌がらせじゃないよ」
と彼は低く言った。
「奴らは毎回の襲撃で、こちらの守りの弱点を探っているんだ。どこが人手薄か、どの守備が先に気を取られるかを見て、報告して戻る。時が来れば大軍で来るつもりだ。」
このまま好き放題にさせておくわけにはいかない。村人たちの疲れ切った背中を見て、俺の胸の中に怒りが湧いた。
ボール――うちの小さなゴーレムが、俺の気配を察したのか、体をぴかりと光らせて転がり寄ってきた。
まるで出陣を志願するかのように。今はまだ銀色に輝く鋼の鎧をまとっているが、こいつは材質を変えられる。
俺は小声で言った。
「ボール、熱砂の材質に変えてくれ。」
コアが二度光り、外殻がざらついた砂礫の感触になり、ほのかな熱を帯びた。
その姿は砂地での偽装にうってつけだ。
俺はボールを連れて、こっそりとオアシスの水源の近くへ向かった。
そこは村の生命線だ。浅い井戸がいくつか、数本のヤシの木、小さな溜め池がある。
フェナリの手下が本気で打撃を与えるなら、まずここを狙うだろう。
計画は単純だ――待ち伏せ、誘い出し、捕縛する。
俺は半分ほどのボールの身長しかない穴を掘り、枯草と細かい砂で入口を覆った。
ボールはその中に潜り込み、外殻は周囲の砂と一体化してほとんど見分けがつかない。
「ここで隠れて、こっそり通る盗賊を狩れ。捕まえたら引きずってきて俺に見せろ」と低く命じると、脳内にシステムのような音が鳴った。
『ユーザーが新機能を開発しました――隠密行動。』
ボールのコアが光り、ライトが一瞬点滅して了解を示した。
村へ戻ると、数軒の家が燃えていて、皆が消火に追われていた。炎が乾いた梁を舐め、濃い煙が夜空を灰色に染める。
ムフタルは歯を食いしばりながら罵った。「奴らはどんどん大胆になっている。襲ってくる盗賊の数も増えている。」
俺は急いで砂袋を抱え、他の者たちと一緒に消火に向かった。ここは砂漠だ。水で消すのは贅沢すぎる。砂こそが現実的な消火手段だ。
砂を火に被せれば、水のように瞬時に冷やすことはできないが、酸素を遮断して延焼を遅らせることができる。
そういえば、俺も土の魔法を扱えるようになっていた。水魔法ほど強力ではないが、こういう時には役に立つかもしれない。
掌を開き、燃える家に向かって低く唱えた。「砂霧――!」
細かな砂が空中に凝り、薄い霧のように屋根に降り注ぐ。
火は覆われてむせるような煙を上げたが、効果はまだ薄い。
「火勢を弱めるにはあまり効いてないみたいだな」と俺は少し落胆して言った。
クルユウドが肩を叩き、励ますように言った。
「いや、もっと濃度と量を増やせるか試してみろ。できるはずだ。」
俺は深く息を吸い、魔力を再び集中させた。今回は薄い層を一度だけ作るのではなく、何度も砂霧を重ねていく。
砂塵を何度も何度も降らせ、やがて厚みを増していく。
大量の砂が家を覆い、まるで埋めるかのように積もっていった。
「砂塵葬――!」と、つい口をついて出た。
『スキル使用手順を記録しました:砂塵葬。』
クルユウドは目を見開き、信じられないという顔で俺を見た。
「俺は水門のガーディアンとして長年やってきたが、指先から小さな水弾を出すのが精一杯だ……こんなことができるガーディアンがいるとは聞いたことがない」と、彼は驚きと敬意を混ぜて笑った。
厚い砂が炎を覆い、火勢は抑えられていった。濃い煙も次第に弱まり、村人たちの顔にほっとした表情が戻る。
誰かが肩を叩き、誰かが小声で礼を言う。ムフタルの目には驚きと同時に一抹の不安が浮かんでいた――これは一時の勝利に過ぎず、本当の脅威はまだ外にあるのだと彼は分かっている。
夜は更け、盗賊の嫌がらせは止まらない。遠くで砂羯の駆ける音が、夜風のリズムのように聞こえる。
そのとき、オアシスの方から不穏なもがき声が聞こえた。誰かが引きずられるような音だ。胸がぎゅっとなり、俺は走り出した。クルユウドと数人の兵が続く。
オアシスの縁で、ボールが一人の盗賊を引きずっていた。盗賊は震え、白い粘液にまみれている。彼の砂羯は近くで嘶いていた。ボールは今や粘液状のゴーレムになっており、月光に乳白色の光を反射している。獲物を捕らえた犬のように、どこか誇らしげな堅さがその態度にあった。
「よくやった、ボール!」と俺は近づきながら頭を撫でた。ボールは低く唸り、応えた。
盗賊は村口に連れて来られ、ムフタルや長老たちが取り囲んで問いただす。
震える声で、彼はフェナリの名と、野営地の位置、人数を告げた。やはり、これらの小手先は偵察と撹乱が目的で、本隊は野営地で機会を窺っているらしい。
我々は即座に臨時会議を開いた。
村長、クルユウド、ベイの軍の将校、数人の若い猟師たちが輪になって座る。月光と残る火の光が顔に影を落とし、皆の表情は硬い。
ムフタルは低く、しかし確固たる声で言った。
「これ以上、奴らに鼻先を引かれるわけにはいかない。今夜、反撃する。ただし無謀は禁物だ。」
クルユウドが頷いた。
「反撃は正しい。ただし慎重に。まずは奴らの野営地に夜襲をかけ、弓矢や食糧を焼き払って持久力を奪おう。」
「その任は俺にやらせてくれ!」と俺は自ら名乗り出た。




