第2話 オアシスの町
発光体の光が強まり、
俺は目を開けていられなくなった。
再び目を開けたとき、
俺はナツメヤシが
自生する湖のほとりに立っていた。
数匹の大きなリクガメが、
のろのろとした動きで水を飲んでいる。
手の中には、
神様からもらった
ゴーレムの核が握られていた。
あたりを見回すと、
湖の周囲はすべて砂丘に囲まれている。
湖の対岸には、
砂岩で造られた小さな家が数軒並んでいた。
「ここはどこだ……?」
俺は疑問を口にする。
『ピンポン!』
目の前に文字が浮かび上がった。
『オアシスの町――ワハ』
その文字は、
まるで湖の対岸に浮かんでいるように見えた。
これが「異なる視界」というやつか。
なかなか便利そうだ。
町は大きくない。
せいぜい十数世帯、
住民も三十から四十人程度だろう。
町のあちこちから黒い煙が立ち上っている。
飯でも作っているのだろうか?
そう思うと、腹が減ってきた。
俺は足を早め、
オアシスを回って町へと向かった。
砂の上を歩くことに慣れていないせいで、
焦った拍子に足がもつれ、
砂地へと突っ伏した。
焼けるように熱い砂。
手からゴーレムの核がこぼれ落ちる。
慌てて核を拾い上げたとき、
一緒に砂を一掴みすくい上げてしまった。
核が壊れていないか
確認しようとしたその時、
驚くべきことが起きた。
手の中の砂が、
すべて珠の中に吸い込まれていったのだ。
『初期素材を獲得:ワハの熱砂
これを元にゴーレムを成形しますか?』
『はい/いいえ』
なるほど。
神様が言っていた「少しずつ改造できる」
というのはこういうことか。
さっそくこのゴーレムを作ってみよう。
俺は『はい』を選択した。
珠から砂が吐き出される。
砂は形を成し、
一対の足と、
丸っこい胴体を作り上げた。
『初級成形完了:熱砂のゴーレム Lv1』
だが、このゴーレム、
触ってみるとどんどん熱くなっていく。
とても持っていられない。
思わず手を離すと、
地面に落ちて四分五裂に砕けた。
――が、すぐにまた元の形に集結する。
……めちゃくちゃ弱そうだな、これ。
今はまだ、
ただの便利グッズ程度に考えておこう。
こいつに守ってもらうのは無理そうだ。
だが、弱くても構わない。
神様はここに魔物はいないと言っていた。,安全なはずだ。
俺は期待に胸を膨らませ、
オアシスの町へと駆け出した。
町に近づくにつれ、
違和感は確信に変わった。
立ち上る煙が、
あまりにも多すぎるのだ。
飯を作っているにしては、
まるで家が一軒丸ごと
燃えているような勢いだ。
町へと続く道は広く、
商人が頻繁に行き来する場所のようだが、
入り口には人っ子一人いない。
俺は危機感に疎すぎた。
何も考えず、
町の奥深くへと踏み込んでしまったのだ。
人に会いたい一心で、
あらゆる警告を無視した。
どの家の玄関も開け放たれ、
まるで住民が逃げ惑い、
門を閉める余裕もなかったかのようだ。
道端には家財道具が無造作に転がっている。
家の中を覗けば、
中がめちゃくちゃに荒らされているのが見えた。
次第に、冷たい汗が背中を伝う。
家の近くで無残に殺された家畜を見つけた。地面には無数の乱れた足跡。
俺は歩みを緩めた。
心臓が嫌な音を立てて鳴っている。
逃げ出したい。
怖い。
けれど、
心のどこかで「寝覚めが悪い」と感じる自分がいた。
もしここで助けを求めている人がいるのに、
見て見ぬふりをして逃げ出したら。
俺はこれから一生、
安眠することなんてできない。
どうせ俺には「被害者」という称号がある。
悪人には無視されるはずだ。
大丈夫だろ……
自分に言い聞かせながら、
町の中央広場まで辿り着いた俺は、
そこで目を背けたくなるような光景を目にした。
『テッテレー!』
『ゴーレム升級イベント開始――
オアシスを襲う砂賊団』
昇級イベント?
視線の先には、
武器を手に取り、
粗暴な振る舞いをする十数人の男たちがいた。
彼らは町の住民を広場に捕らえ、
拷問と処刑を繰り返している。
魔物はいない。
だが、ここには「悪人」がいる。
……あの食えない神様め、
やってくれたな。
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章末附錄
被害者 東方安遠
HP: 100/100
MP: 20/20
筋力: 3 / 視力: 3 / 魔力: 2 / スタミナ: 3
熱砂のゴーレム Lv1
HP: 10/10
MP: 5/5
筋力: 1 / 視力: 1 / 魔力: 1 / スタミナ: 1
斬撃、打撃、突刺無効
熱属性攻撃無効、不定形
恒常体温70℃。低比熱特性により、5秒以内に最大140℃まで加熱可能。




