↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同棲癖。  作者: 濃紺色。
同棲癖。
PR
11/16

幸せに。

───重いよ。


その言葉が頭の中をぐるぐると巡り、何も考えられなくなっていた。

どれぐらいそうしていたんだろう。真っ暗なリビング。ソファで1人、体育座りをしていた。

私には、アイスを差し出してくれる人なんていない。いなかったんだ。


「何でよ……どうして……」


そうだ。呪いだ。明日香の呪いだ。涼夜が明日香に囚われているのは、きっと呪いの所為だ。

立ち上がり、掃き出し窓を開け、ベランダに出た。

夜空に向かって、叫んだ。


「東京の明日香さん、全国の明日香さん、全世界の、全宇宙の明日香さん! どうか、どうか! 涼夜を解放してあげてください!」

「そんなの無理」


突然、背後から声がした。驚いて振り向くと、女性が1人、リビングに佇んでいた。暗くてよく見えないが、彼女が明日香であることは何故か直感で分かった。彼女が、涼夜の元カノなのか、今カノなのか、判別はつかないが、明日香であることだけは確かだった。

明日香は続けた。


「分かるでしょ? 涼夜は明日香に依存したがっている」


依存したがる? 誰がそんなことを好んで求める?

私は首を横に振った。


「そんなことない。涼夜は明日香に呪われてるだけ。振り回されてるだけ」


そうだ。きっとそう。呪いだ。意味もなく明日香に依存してしまう、質の悪い呪い。

段々、暗闇に目が慣れてきた。

私が涼夜を救う。明日香から涼夜を引き剥がす。


「涼夜はこれからもきっと明日香が現れる度に、彼女達に依存する。このままじゃ、涼夜は幸せになれない。あなたは……あなた達は、涼夜を手放すべきよ」


これだけ言っても、明日香はまだ余裕そうな笑みを浮かべていた。


「あなたこそ、涼夜を解放してあげたらどう?」

「……は?」


私が? 涼夜を解放? 言っている意味が、よく分からない。


「あなたは涼夜と同棲している状況に依存している。ずっと、このままでいい。ずっと、このままがいいって。涼夜を巻き込んで。金曜日の夜よ、永遠にって」


涼夜と同棲している状況に……。


「私が、依存……?」

「そう。あなたも涼夜と同じ。金曜日の夜に呪われている。毎週毎週やってくる、この街の、この部屋の金曜日の夜から抜け出せないでいる」


そんなことあるわけ……。


「同棲を愛し、求めている。今のままじゃ、これからもずっと。出来るだけ今の同棲に似た、今の同棲の代わりを」

「私は、涼夜と同じ……」


どうしてだろう。否定が出来ない。


「同じになりたいの? このままじゃ、幸せになれないって……あなた言ったわよね。それでもなりたい? 明日香ばかり、私達ばかりを求める涼夜と同じに」


私は、涼夜だから、涼夜がこの部屋にいるから、涼夜と過ごす金曜日の夜だから、どんなに廃れた街でも、ここにいたいって思ったんだ。

思っていた、筈だったんだ。

でも、違った。

視界がぼやける。


「金曜日の夜に依存して、明日香から抜け出せないでいる涼夜と同じになりたいの?」


私はゆっくりと首を横に振った。


「幸せに、なりたい……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。