【第1の謎】彼女が埋めたもの
じゅぐっ、と泥が鳴った。
爪の間に冷たい土が食い込み、剥がれかけた皮膚がひりひりと熱を持つ。
私は荒い息を吐き出しながら、ただ無心に両手を動かし続けていた。
雲の切れ間から、頼りない月明かりが差し込んでいる。
ここは旧校舎の裏手に広がる、鬱蒼とした雑木林の中だ。
昼間でも薄暗いこの場所は、深夜となれば完全な闇に沈み、木々が擦れ合う音がまるで誰かの囁き声のように聞こえてくる。
足元には、大人が一人すっぽりと入るほどの穴がぽっかりと口を開けていた。
女子高生の細腕でこれほど深く掘り進めるなど、本来なら正気の沙汰ではない。泥と血にまみれ、指の感覚が完全に消失するほどの異常な興奮状態が、私にこの穴を掘らせていた。
その底に横たわっているのは、分厚い黒のビニールシートで何重にもぐるぐる巻きにした、異様に重い『ソレ』だ。
ソレを引きずってくるだけで、私の制服のブラウスは汗と泥で汚れ、スカートの裾は破れていた。
ズン、という鈍い音が鼓膜の奥で反響している。
胃酸がせり上がり、喉の奥が焼けるように痛かった。
膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪え、私は泥だらけのスコップを握り直す。
(隠さなきゃ。深く、もっと深く……誰にも見つからないように)
私は、スコップを振り上げる。
バサリ、バサリ。
湿った土が、黒い塊を覆い隠していく。
無機質な作業音だけが、深夜の林に響き渡っていた。
手のひらの水ぶくれが破れ、柄に血が滲んでも、私は土を被せるのをやめなかった。
これでいい。
これで、すべてが終わったのだ。
誰も悲しまない。
誰も傷つかない。
完璧な隠蔽工作だ。
平らに均された地面を見下ろし、私はようやく泥だらけの両手で顔を覆った。
声にならない嗚咽が、暗闇の中に吸い込まれていく。
(忘れよう。忘れよう。何もなかった。私は、何も見ていない……)
震える体を引き抱え、何度も何度も、呪文のように心の中で繰り返す。
そうしなければ、罪悪感と恐怖で頭がおかしくなってしまいそうだった。
生々しい記憶に分厚い蓋をして、心の最も暗い底へと沈め、鍵をかける。
だが、この時の私はまだ知らなかった。
この完璧なはずの隠蔽工作と、必死に封じ込めたはずの記憶が、翌日、最悪の形で暴かれることになろうとは。




