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灰の王は



 焼け落ちた城で、灰の王――かつて“慈しみ”と呼ばれた男――は、割れた鏡を見つめる。


糸雨のような長い髪は乱れ、ところどころ焼け焦げている。

手にした剣からは、まだ返り血が滴り落ちていた。


足元には、かつて愛した者――反乱軍の長が、血を流して倒れている。

どうしてこんなことになったのか。


城の外には暴徒。

中には反乱軍。

そして足元には、その長。

……なら、すぐに鎮圧できるはずだ。だが――


王としては勝てるだろう。だが――それに、何の意味がある?


鏡の向こうに映るのは、王の寝室にあるはずのない花束。

粗末な白と青の野花――あの日ふたりで摘んだ思い出。

その脇に、燃え残る地図が灰をかぶって横たわる。

かつて二人で、夜ごと夢をなぞった“あの未来”の地図。


その向こうの天蓋ベッドには火がついている。

安らぐ場所は、もう、ない。


……さあ、どこまで道連れにしようか。

 

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