表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/99

第37話 トラ転王子、画策する(10)

「この二人はそう言っているけれど、ユリウス?」


 オレを振り返り、問いかけるアルテ姉さま。その顔には『言っちゃっていいわよ』とでかでかと書かれて、はいないが、見え見えだ。

 なので。


「いいえ、誘ってはいないです」

 正直に笑顔で答えた。


「な、何を嘘言ってるのよ、ユリウスったら」

「本当ですっ。アルティシア様、信じてください」

 二人とも必死だな。だが、許さん。


「誘うはずないじゃないですか。第一、ボクをどかそうと必死だったのは見てましたよね?」

 ねぇ皆さん、と、後ろの面々に話を振る。


 いくらお付きでも護衛でも、順位の高い王女の前で堂々と嘘なんてついたら自分の身が危うい。誰もが困惑して目をそらし、顔をうつむけている。


 その様子を眺め、独り頷くアルテ姉さま。

 いよいよ後がなくなった二人だが、


「じゃ、じゃあ、どうして扉の外に居たのよ! 私たちを迎えに出てたんでしょ!」

「そうよ、そうに決まってるわ!」

 まったくこいつらときたら、口先で黒を白と言いくるめるつもりなのか。

 もうあかん。救いようがない。


「カイン。あれを」

「はっ」

 ため息交じりに指示を出すと、すぐに天井をいじりだしたカイン。


 てか、今までどこに居たんだ。気配がなかったぞ?

 護衛騎士も侍女も突然湧いて出たカインに目を丸くしている。


「主、これを」

「うん、ありがとう。アルテ姉さま」

「何かしら?」

「近頃宮廷魔術師たちが完成させた魔道具です。これに魔力を通すと・・・」


 対面の壁に光が映り、それには先ほどの光景が・・・

 うん、すンごいデジャブだ。


 映っている光景ほど雄弁なものはないね。二人だけでなく護衛騎士、侍女共に声もなく、ただ見ていることしかできない。監視カメラ様様だ。ざまぁみろ、と言ったら言い過ぎかな。


 逆にアルテ姉さまは怖いくらいの笑顔になった。

「あら、良いものができたのね。ユリウス、これ、私に預けてくれる?」

「はい、もちろんです」

「そう。これから陛下の前でもう一度確認してみるわね」


 そう言った途端、周りからかすれた声や息を呑む気配が重なり、侍女のひとりは倒れたようだ。

 まあ仕方がない。頑張ってくれ。


 サンドラが震えた声で、

「ア、アルティシア、様。ま、まさか、冗談、ですわよ、ね?」

「なにが?」

「これを、陛下の前で、確認する、なんて」

「まあ嫌だ、そんなわけないでしょう?」


 場違いなほど明るいアルテ姉さまの声に、ほっと胸をなでおろすサンドラとキャリン。

 でもな、それは間違いだぞ。


「陛下だけじゃなくて、ライラ様やシェルリィ様、あ、母さまにも見てもらうわよ。当然でしょう?」

 そう言って、血の気が引いた二人の顔を覗き込む。

「これからあなたたちの再教育がどれほど必要か、しっかり判断してもらうんだから!」


 あはははは、流石はアルテ姉さま。

 あげて落とし、安心させてとどめを刺す。

 しっかり心をえぐるところはギル兄さまとそっくりだ。




読んでいただき、ありがとうございます!

監視カメラはつおいです(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ