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トップアイドル争奪戦とアイドル達5

がしがしと仕事をこなしていると時間が経つのなんてあっという間。


 この世界に入ってから思い知った。


 深夜にまで続く撮影、歌どり。番組出演に、たまにロケ。


 そんなことをしていると今日は何日で何曜日かなんてすぐに吹き飛んでしまう。


 ただわかるのは本日、バレンタインと言うことだ。


 今年のバレンタインはお仕事だけど、初めて迎えるバレンタイン。


 張り切って手作りチョコでも!なんて考えていたけど私、2時間ドラマの撮影が入り1人メンバーと会えない時を過ごしていた。

 

『もしもーし!花?』

「姫奈ー!会いたいよう!!」


 私は深夜に続いた撮影を終え1人部屋をとってもらったホテルで姫奈と久しぶりに電話中!


 実は今日姫奈は私たちの家にきている。


 蓮さんにチョコを渡すついでに皆んなにの渡すらしい。

 まあ、それに便乗して私のチョコも渡してもらったのだ。


『姫奈ちゃん、電話代わって!代わって!』

「凜くん、うるさい!」


 ハンズフリーなのか凜くんの声が筒抜けで思わず言ってしまった。


『あ!花!チョコありがとー!』

『花ちゃん、ありがと!すっごい可愛いのおれにくれたんだね!』

『ちょっっとコウちゃん、オレがはなしてんの!』

『違う、姫奈ちゃんが話してんの!』


 凜くんとコウキくんのいつもの明るいやりとりにいつの間にか微笑んでる自分がいるのに気づきハッとする。


 私心細かったのだろうか。


『花』 

「蓮さん?あれ?姫奈たちは?」 

『キッチンでかなたの作ったケーキ切り分けてる。だから奥でうるせえだろ?』


耳をすませば遠くで楽しそうな声。


さっきまで花とかわれって言ってたのに、アホ凜!!!


『花。』

「はい?」

『御前大丈夫か』

 

 思わず言葉に詰まる。


 実はフラフラのピンク髪の東堂さんもこのドラマに出る。

 まあ、私は主人公の女優の妹役。


 東堂さんはその主人公が思いを寄せている人の同僚でほとんど会話はないが、「俺の女になる?」と言われたあの蛇のような目つきを思い出すと性格の悪さも相まって、なんかこう……ゾワっとする。


「だい、じょうぶ、です」

『御前わかりやすい』


 電話の向こうで蓮さんが笑ってる。

 絶対口もと押さえて肩揺らしてんだろうな。なんて想像ができてしまう。


『なんかあったらすぐ言え、迎えに行く。』


 耳に残る優しい声。姫奈が近くにいるのだろうか、と考えたが、すぐ違う考えが頭を締めた。


「優しいですね」

『正月に言ったこと忘れたのか、御前は』

「い、え。」


 ならいいいと、それだけいい電話の向こうで「凜!!変わるのか、電話」と叫ぶ蓮さん。


 忘れられるか、この野郎!!ん??なんかドアノックされてる気がする。


「花ちゃん、起きてる?」


 聞こえた声は監督さんの声。


「あ、はい!!」

『花!』


 私が返事をしたと同時に凜くんが電話に出る。


「ごめん監督さんに呼ばれたからいく!!」

『え?あ、うん。頑張れ花!』


 思わず口元が緩み見えないのに何度も頷く。

 

「うん!」


 皆んなにもバイバイと伝えて、と電話を切り私はドアへ。

 やはり監督さんで明日の話。数分立ち話をしてまた部屋に1人になる。


 そして襲う寂しさ。早く帰りたい。

 

 布団にダイブするとすぐさま眠気が。


「明日も頑張る」


 と1人呟き私は眠りに落ちた。


 次の日も撮影。今日で終わりだから頑張る!!と、思うんだけど。

 

「おはよう、花ちゃん」

「お、はようございます、東堂さん」


 にっこりと笑顔で私に話しかけてくる東堂さんに鳥肌が立つ。


「何?」

「いえ」


 同じアイドル同士なこともあり、他の共演者は「やっぱりアイドル同士仲いいんだね」など話している。

 

そうなんですよ、なんて話している東堂さんに笑いもせず冷ややかな目を向けてしまう私はアイドルとして失格なのだろう。


「私、そろそろで撮影なので台本読みます」


そう言って背を向けたんだけど、なぜか、右腕を掴まれた。

は?


「なにか」


 じっと私を見る目が嫌なんだけど。


「お前すげー美人とかではないのにな」

「は?!」


 え?喧嘩売られてる?そりゃ美人とかってタイプではないけど、これでもRAINBOWの一員で、一応メンバーには、かわいいって……あれ?身内贔屓?か?


「なんで蓮たちはお前にご執心なんだろうな」

「え?別にご執心ってわけでは……と、いうか、手離してもらってもいいですか?」


 ちら、とあたりに目を向ければ、何人かの目がこちらに向いている。

 変なうわせでも立ったら怒られる!!特に神永さんに!


「あの、本当に」


 右腕は未だ掴まれたまま。私が力を入れればそれよりも強い力で掴まれる。

 そろそろ痛い。


「お前やっぱ、俺と付き合う?」

「え、いやで…」

「あ、そういう関係なの?」


 声が聞こえた方に目をやれば、共演者で、去年のクリスマスに私を呼び出した近藤あきのさんの姿。


 しまった、この人今日から撮影に参加するんだった。忘れてた!!


「へえ、凛くんとかとなんかなってたら私切れるところだったけど、なんだ、東堂さんといい感じなんだ」

「いや、ちが……」

「そうなの!今ね、口説き中!」


 近藤さんににむけアイドルスマイルを放つ。

 こいつ、私ら以外には猫被ってんのか。バラしてやろうか。

 あ、そんなことしたらますますめんどくさい。


 否定してなんでもないように過ごすことが大事だ。


「違います、違いますから!私、東堂さんは先輩としか思ってませんから!ほんと離してください!!」


 ぶんと、思い入り力を入れて振ったら意外とすんなり腕を持っている手が離れた。


「あーあ、口説くの失敗しちゃった!」


 わざとらしく落ち込んでるのがわかる。


「えー、かわいそう!私、凛くんにあったら、東堂さんに協力するようにいっときますね」

「そう?よろしく!」

「やめてください、本当に」

「いいの?じゃあ、凛と、っていうかRAINBOWみんなに言っといてくれる?」

「もちろん!」

「やめてください」


 私の話を無視し話し込む。解放されたのはいいけど、なぜこいつらは人の話を聞かない。

 なぜなんだ。


「花ちゃん、リハするけど、大丈夫?」

「え、あ、」


 解放されてスタッフさんに呼ばれたのはいいけど、未だに話ている2人が気になってしょうがない。


「さ、行こうか!」

「花ちゃーん!」

「あ、はい……」


 主役の女優さんに手招きされてそちらに向かう。

 向かうんだけど、やっぱり気になってしょうがない。


「東堂くんと付き合ってんの?」

「は?!まさか!!」


 思いっきり否定する。こんなもんで変な噂が立ったらどうすんだ!!


「本当にちがいますから、本当に!!ではリハよろしくお願いします。」

「あ、うん……」


 キッパリとそう告げ私はセットの中へ。

 

 なんか、絡みつく視線が私に向いているのを感じるけど、気にしない。

 早く撮り終えて、私はみんなの元に帰るんだ!!


「よろしくお願いします!!」


 スタッフさんたちに向き頭を下げた。


 気にしない、頑張るんだ!!!!




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