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劉皇国戦記  作者: リューク
幕間 昌の内政事情
48/78

正月

帝国暦269年1月

 街のあちこちで新年の祝賀会が催され、広間には出店も出てきて賑わっている。

 かくいう俺も大広間で城に勤務している文官と半数の武官を招き新年の挨拶をしている。

 武官がなぜ半分かというと、一斉に呼び出しては国防に関わるので、2日に分けたのだ。

 ちなみに文官は、2日目は裏方に回る事になっている。

 

 「殿!明けましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたします!」

 

 「殿、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」

 そう言って挨拶してきたのは、張児将軍と王信将軍の2人だ。

 挨拶もそうだが、それぞれ手土産を持ってきたようで、張児将軍はこちらに向かう道中に仕留めた猪や雉等の得物を持ってきていた。

 王信将軍は、道中道路の整備不良などがあった個所を調べて報告書にしてまとめてきてくれた。

 

 「張児将軍、獲物はもうすぐ調理されて出てくるから、楽しみに待っていてくれ。王信将軍、あれは土産と言って良いのか?土産の中に在ったから思わず笑ってしまったぞ。ただ、報告はご苦労だった。休みが終わったら至急整備させに行く事にする」

 

 「「ははぁ!」」

 そう言って二人とも宴の輪の中に戻っていった。

 

 その後も文官武官から新年の挨拶を受けたのだが、1人1回としても都合5百回は挨拶しなければならず、それだけでも疲れが溜まってしまいそうだった。

 

 暫く誰も来てないので、大丈夫かと思っていると、最後に潘紅と関勝のペアが挨拶に来た。


 「宗谷様、新年明けましておめでとうございます。また、先日は盛大な式を催して頂き誠にありがとうございました。夢にまで見た結婚式を挙げられて私感無量でございます」

 こちらに戻ってから視察だのなんだのと終わらせ、どうにか落ち着いてきたころに彼らの式を執り行わさせた。

 流石に俺と同規模の式を行おうとしたら、尹魁や黄煉から示しがつかなくなるからと却下され、数段劣るものの、それでも世間では立派な式を挙げさせたのだ。

 流石に式を執り行った後からは、関勝も覚悟を決めたのか、大人しくなり嫌な顔も見せなくなっていた。

 

 「殿、これからは潘紅と共にお支えしていく所存でございます。今後ともよろしくお願いいたします」

 そう言って、関勝までも恭しく挨拶をしてきたので、俺は「いつも通りで良いぞ」と声をかけると、潘紅が答えてきた。

 

 「宗谷様、それは宜しくありません。貴方様と夫の関係は義兄弟の前に主従です。他の者に範を示すためにも、節度は守らなくてはなりません。これからは少なくとも他の人が居られる前では、殿と呼び、敬語を使わせてください。それがひいてはこの人の為になるのです」

 

 「それもそうか、まぁ仕方が無かろう。お互いに立場が変わってしまったのだ。いつまでも番頭と手代の間と言う訳にも行くまい。ただ、私としてはお前との縁は何よりも大切に思っている。忠勤を期待しているぞ?」


 「「夫婦ともに頑張らせて頂きます」」

 こいつら、この言葉練習してきたのだろうか、そうでなかったらかなりの似た者同士なのかもしれないな。

 

 その後も宴会は夕方になるまで続いた。

 宴会のさなか、呉麗がずっと劉徽の後ろをつけ回していたのは見なかったことにしたい。

 

 宴会もそろそろお開きと言う所で、俺が壇上に立って最後の挨拶をする事になった。

 まぁ所謂、所信表明演説と言う奴だ。


 「今日は皆楽しめただろうか?私も皆が笑っている姿を見てとても嬉しく思っている。さて、昨年我らは潘氏の領土を平定し、仲間も増えた。今年はいよいよ攻め時だ!そう、遼帝国を打倒すのだ!ただ、敵はかなり広大な領地を持ちそして未だに強大な軍を保持している。これを打倒すのは並大抵の力では無理だろう。だが!それは私一人の場合だ!私には諸君らが居る!諸君の力を私に貸してほしい!そうして共に遼帝国を討ち果たすのだ!」

 俺がそこまで言い切ると、会場からは万雷の拍手が鳴り響き、轟音の如き歓声が上がった。

 それを俺は手で制しながら、挨拶を続けた。

 

 「それでは、正月の宴をこれで終了とする。各自にお土産を用意している。私の考案した新料理だ。家族と共に味わってほしい。以上解散!」

 この手土産の料理とは、団子だ。

 それも白玉団子と餡子で出来た団子を各人に10本ずつ箱詰めして持たせているのだ。

 本当なら餅を使いたかったのだが、この国には残念ながらもち米がまだ見つかっていなかったのだ。

 なので、比較的近い触感の白玉を作り、団子として串に刺して餡子をかけておいたのだ。

 餡子に使ったのは、てん菜糖だ。

 輪裁式農法の実験の過程で作ったてん菜が大量にあったので、砂糖を作らせてそれを小豆と合わせて餡子にしたのだ。

 焦がさない様にずっと回し続けるという重労働を料理人たちにさせたので、彼らにも少しずつ味見と称して少しずつだが食べさせてやった。

 

 ちなみに、この国では砂糖は貴重品で滅多に食べれる物でも、扱えるものでもない。

 これがお土産として振る舞われているが、恐らく団子1串で豪邸が買える位の価値があると言えるだろう。

 それが10本もあるのだ。

 一財産を彼らに与えた様なものなので、家臣の中には、暇を出されたのではと戦々恐々としている者まで出る始末だ。

 もちろん、暇なんて出している暇がない。

 人手が足りないのだ、どんな奴でも使える部署を探して配属する様に言っているくらいなのだから、減らす事なんてできない。

 

 俺たちが軍事行動を起こしたのは、正月休みから10日後の事だった。


これで幕間は終了です。

次回から第4部のスタートです。宜しければ、評価、ブックマークを頂と嬉しいです。

今後もご後援よろしくお願いします。

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