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劉皇国戦記  作者: リューク
第四部 山西攻略戦
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西進


 「さて、次に狙うのは遼帝国の西部地域だ。この辺りは山岳地帯で平地が少ないが、山を抜けると平野部が広がっている。まずは平野部を目指して進軍し、中央に位置する山東城を攻略する」

 新年の休み明け、俺たちは軍議を開いていた。

 目指すは遼帝国の西部地域にある山東城。

 この地域は山岳地帯という事もあり、天然の要害としての地理的な性質も持ち合わせている。

 中でも光華山は霊山としても知られる山だが、今回のルートではあまり関係ないと言って良いだろう。

 

 「しかし、西部地域になぜ進むのですか?北進する方が簡単だと思うのですが?」

 そう言いだしたのは、尹魁だ。

 確かに彼の言う通り江中を抑えているので北進する事も可能だが、その場合、望関という堅固な要塞を攻略しなければならい。

 これを攻略するには少なくとも10万単位の軍勢か裏工作を行わないといけないのだが、残念ながら裏工作が上手くいっていないのだ。

 

 「それは、以前にも説明した通り、望関を抜く方法が無いからだ。あの要塞を抜くのは現状の戦力では不可能なんだ」

 

 「……なるほど、それで西に進むのですね。しかし、山道が中々厳しいですぞ。私も浪人時代にこの辺りも歩きましたが、小規模な集団ならどうにかなりますが、万を超える軍勢で進むのはかなり厳しいのでは?」

 

 「確かに林冲の言う通り難しい。だが方法が無い訳では無いんだ。実はこんな方法を考えて進めているんだ」

 俺はかねてより進めていた進軍ルートの確保について全員に知らせた。

 

 「……なるほど、それなら進軍自体は楽になりそうですね。しかし、よくそんな事実行に移しましたね」

 俺の話を聞いた皆は半ば呆れながら俺の方を見てきたが、反対意見は無いようだったので、進軍を開始する旨を伝えた。

 

 「まぁ、色々考えているさ。さて、反対意見もなさそうなので、これで行こうと思う。全員出撃の準備を整えてくれ。今回は留守役を林冲に任せる」

 

 「「御意!」」

 

 それから10日後の1月12日に俺たちは出陣式を行って昌を後にした。

 今回編成した軍は、昌から1万、凌、江中、摂南から合計1万の合計2万の軍に海賊領を通る際に王洪から地方領主の手勢や余剰戦力を徴収して合計3万の大軍になる予定だ。

 従軍する将軍の布陣は、先陣を関勝、中堅を史明、後衛を俺が勤め、それぞれ1万の軍勢になる予定だ。また、海賊領に入ってからは王洪の手の者から何名か将軍候補を借りる事になっている。

 

 帝国暦269年1月30日、俺たちはやっとの事で海賊領を抜け、西部地域に入る事ができた。

 

 「ここからは、山岳地帯になるが、安心しろ道はすでに作ってある」

 そう言って俺が指さした先には幅が4メートル近くある山道が出来上がっていた。

 

 「まだ完成していないが、ある程度真直ぐ進めるから隊列を乱さずに進んでくれ」

 

 「しかし、この様な道地図にはありませんでしたぞ?」

 そう疑問を呈してきたのは、史明である。

 

 「確かに地図には無いだろう。何せ道を作り始めたのは、潘国忠と争い始めたくらいの時期だから、約4か月くらい前だからな」

 

 「え!?4ヶ月でこの様な山道を作ったのですか?どうやって?」

 

 「なに、山道を作るのにそんなに苦労は無いよ。私の元居た商家に頼んで木を買い付けてもらい、ついでに道を整備した。ちなみに買った木は江中周辺の港になりそうな場所に防御用の逆茂木として活用されている。これで一石何鳥かな?」

 

 「国忠との戦に負けていたらとんでもない大損ですよ?どうして平気でそんな危ない橋が渡れるんですか!?」

 

 「ん?危ない橋?史明は何か勘違いしてないか?国忠に負けたら危ないもくそも無いんだ。我らは負ければ即滅亡という状況にある。その事を忘れてしまってはいけない。そう考えればこの程度どうという事は無いよ」

 そう、俺たちは負けたら即ではないにしても滅亡する。

 良くて宋沢に全て持っていかれる事になるだろう。

 それだけ未だに国力差が埋まっていないのだ。

 いくら遼帝国が無能になったとはいえ、250年を超える蓄財は生半可では無くならないし、上がる税収の桁も俺達よりも2桁も3桁も上になってくるだろう。

 

 「俺たちは、巨大な化け物に立ち向かう蟻だ。それくらいの差があるといっそどんな手でも打っておくかって気になるだろ?」

 俺がそう言って笑うと、周りで聞いていた家臣たちは苦笑しはじめた。

 

 「なるほど、確かにその通りでございます。私の浅慮でございました」

 そう言って史明が引き下がると、俺は全員を見回した。

 誰一人として不満そうな顔も疑問を持っている顔もしていない。

 

 「では、全軍、これより進軍を開始する。いくら歩きやすくなったからと言って無茶な行軍をして隊列を乱さないようにな。では解散!」

 

 それからは、ただひたすら坂道を登ったり降りたりするだけだった。

 


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