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劉皇国戦記  作者: リューク
第二部江南地方制圧戦
27/78

結婚


 帝国暦268年9月に締結されたこの同盟は、後に劉宗同盟と言われた。

 同盟締結から5日後、劉宗谷は自室で一人悩んでいた。

 

 「軍の規模が2万近くにまで膨れ上がったのは良いが、指揮する人材が居ない……」

 そう、急拡大した我が軍は慢性的な人手不足に陥っているのだ。

 見込みのある者は何名か居るし、行政に携わる人材は2代前の太守が大量に集めていたのでどうにかなった。

 だが、軍関係は見込みがある程度で指揮能力もまだまだ未熟な段階で、百から千人長が中心である。

 このままでは、海賊への進軍を最後に戦線が膠着してしまう。

 戦線が膠着する事は、我が軍の破滅を意味している。

 

 今でこそ遼国は青巾党の進行に苦慮しているが、そのうち青巾党の食料が尽きて滅びてしまう可能性が高い。

 これは、青巾党の軍編成に問題があるのだ。

 青巾党はその起源が農民反乱という性質上、主力が農民兵になってしまっている。

 これは、農作物を作る民が戦場に出ており、食料生産者が居なくなっているのと同じなのだ。

 この状態を続けると、遠からず青巾党は滅びてしまう。

 現状は宋沢という傑出した人物の元どうにか戦争を継続しているが、彼が不慮の死を遂げたりしたら目も当てられなくなるだろう。

 そうなると、遼国は我らの方に攻めてくる事は明白だ。

 

 それを防ぐ手立ては、我が軍が動き続けるしかないのだ。

 青巾党が防いでいる間に西側の各都市を手に入れ、どうにか勢力と戦力を増加させたい。

その為には、指揮官が必要不可欠なのである。

 

 「さて、どうしたものか……」

 一人でため息を吐いていると、俺の部屋の前に誰か来たようだ。

 

 「誰ですか?こんな時間に」

 そういって、誰何すると、玉麗が入って来た。

 

 「あなた、今日は一緒に寝れるとおっしゃるから待っていましたのに、一向に来られないので迎えに来ました」

 

 「あぁ、すまない、少し考え事をしていてな」

 そういって謝る俺の横に玉麗が腰かけてきた。

 

 「何かお悩み事ですか?」

 

 「うん、軍の事でちょっとね……」

 俺がそういうと、玉麗がとんでもない事を言ってきた。

 

 「もし宜しければ私に話してみられませんか?悩みとは話す事で解決する事もあるそうですから」

 そういってきた玉麗に俺は驚いた。

 彼女は良くも悪くも政治に無関心で、俺の仕事に口をはさむ事が少なかったからだ。

 

 「いや、しかし……まぁそうだな、よろしくお願いしよう」

 一瞬自分でも言って良いか考えたが彼女に解りやすくするため、かいつまんで軍の現状を話したのだ。

 終始黙って聞いていた玉麗だが、話し終わった時、ポツリと一言漏らしてきた。

 

 「それでしたら試合とか試験をしてみては如何ですか?」

 

 「試験?」

 俺は玉麗の意外な一言に聞き返してしまった。

 

 「はい、軍関係者に広く募集をかけるのです。そうすればあなたが知らなかった才能に出会えるかもしれません」

 なるほど、確かに試合形式で実力を図るのは良い事だ。

 

 「玉麗、すごいじゃないか!これは名案だよ。早速明日にでも尹魁達と相談して形にしよう」

 そういって俺が喜んでいると、玉麗は横で静かに微笑んでいた。

 

 「それはそうと、あなた。そろそろ結婚をしっかりとしませんか?確かにお父様は1年後とおっしゃっていましたが、今の話ですと、少なくとも今後しばらくは西にお出になるのでしょう?」

 

 「う、た、確かにそうだ。ただ遺言の様な形になっているから俺としては守りたかったのだが……」

 急な話の変化に俺が驚いて言い澱むと、玉麗は追撃の構えを見せてきた。

 

 「それは言い訳です。それに死者の言葉を大切にするのは良いですが、それに縛られては意味がないと思います。明日、明後日にも発表してもらえますか?」

 玉麗はそういうと、有無を言わさぬ笑顔を顔に貼りつけて迫って来た。

 

 「わ、わかりました。明日この話と一緒に尹魁達に段取りを任せる旨伝えます」

 どうも俺は、玉麗の尻に敷かれる可能性が高そうだ。

 俺の返事を聞いた玉麗は、今度は満面の笑みで俺を見てきた。

 

 「何かいう事があるのではないですか?」

 そういって催促してくる玉麗を見て、俺は照れと恥ずかしさでごちゃ混ぜの気持ちの中、彼女が求めている言葉を言った。

 

 「俺と夫婦になってください」

 

 「……はい」

 俺がプロポーズの言葉を言うと、その言葉を噛みしめる様に目を瞑ってゆっくりと玉麗が頷いてくれた。

 

 次の日、俺は早速玉麗の案を尹魁達に提案すると、黄煉が賛同した。

 

 「確かに、現状の我が軍では指揮能力のある者が居ませんからな。今度の潘女史への援軍が丁度良い試験会場になるでしょう。参加条件としては、推薦人を1人連れてくるというので如何でしょう?」

 

 「そうなると、推薦人の基準を設定しなければなりますまい。どれくらいの地位の者を想定しましょう?」

 黄煉の意見を聞いて、現状決めなければならないであろう部分を尹魁が議題として挙げた。

 

 「そこについてなのだが、下級官吏までを対象としてはどうだろう?その後百人から千人規模の軍事訓練という名の模擬戦で戦わせて勝った者から見繕うのが良いと思うのだが」

 

 「確かに主の言う通りですな。ついでに字の読めるものには筆記試験も受けさせましょう。そうする事で行政官も補充できます」

 ここ最近、黄煉が俺の呼び方を「主」に変えてきた。

 理由としては、いつまでも遼国の領土のような「太守」では示しがつかないとの事だった。

 

 「では、その旨詰めて文章にして布告いたします。期限は1週間という所で切りましょう」

 

 「では、よろしく頼んだ」

 俺がそういうと、二人は書類などをもって出て行こうとした。

 そんな二人を俺は、思い出したように呼び止めたのだ。

 

 「あ、二人とも実は私的な事だがもう1つあるのだ。」

 2人は「私的」という言葉を聞いて立ち止まってこちらを見ていた。

 

 「えっと、実はな、その玉麗と式を挙げる事になった。なのでその日程の調整もお願いしたいのだ」

 そういうと、尹魁はやっとかという表情で、黄煉はまだ結婚してなかったのかと驚きの表情で俺を見てきた。

 

 「それは、おめでとうございます。では日程はこの試験後に致しましょう」

 そう言って、尹魁は祝いの言葉と日程を決定して黄煉と退室していった。

 

 これでやっと彼女と一緒になる事になった。

 そう思うと感慨深い様な寂しい様な気持ちになってしまった。


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首を天井まで伸ばすくらい長くしてお待ちしております。

今後もご後援よろしくお願いします。

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