登用試験
新しい仲間が入ります。
指揮官登用の試験が布告されたある日、飲み屋で二人の男が話をしていた。
「今度の領主はまた思い切った事を始めたな。」
「ん?あぁ、例の登用試験だろ?」
「あんな事する奴聞いたことないぜ。俺は」
彼らが話しているのは、前代未聞の指揮官登用の試験の話である。
基本的にこの国での軍の指揮官は、武門の名家が代々担っている職であって、公募するものではない。
「で、お前はどうするんだよ?」
「俺か?俺には無理だよ。そういうお前はどうするんだ?」
「出てみたいが、推薦人がな~。お前どっかで俺を推薦してくれるような官吏の知り合い居ねぇか?」
この試験では、推薦人が居なければ登用試験を受ける事ができないのだ。
推薦は官職に就いている者1人から委任状もしくは、推薦人本人からの応募が無ければならない。
「この規定を破った者は厳罰に処す。」と立て札にも書かれている事から、参加を断念する者が相次いでいる。
「そんな奴居ねぇよ。こんな飲み屋で管巻いてるような奴を誰が推薦なんかしてくれるかよ」
「だよなぁ、いっそ推薦人無しで受けてみるか?才能が有れば厳罰も軽くなるんじゃないか?」
そういって笑いながら男は酒をあおった。
「それこそどうなんだろうな?下手したらもっと酷い目に合うかもしれんぞ?」
そういうと、相手の男は笑った顔を少し歪めて、この話は終わりとばかりに鼻で笑った。
そんな事もあって、指揮官登用試験の応募は告知してから3日経ったもの、未だに応募者0名であった。
条件が厳しいどうこうよりも、本当に登用されるのか?という疑惑が先に立っている事もあって、応募者0という有様なのである。
ただ、世の中には物好きな男も居るもので、5日目にしてやっと応募者が出てきたのだ。
その男の名は、林冲と言い武芸百般を学んでいたものの、時期に恵まれず暫く隠棲していたのである。
ただ、林冲はこの時既に齢40を超え、この時代では初老に入りかけている歳であった。
歳のせいもあって、受付で担当した官吏は彼が去った後で思わず笑ってこう言ったそうである。
「殿の用兵は神懸かっているが、今回の策は不発に終わりそうだ」
と言われた本人である劉宗谷は、気にするそぶりもなく、平然とこう言い返した。
「そいつが見ているのは、表面の事だけだ。確かに43と年寄りだが、使えればそれで良い」
こうして、たった1人ではあるが、応募者が出た事とその応募者が年寄りである事もあり、今まで様子を見ていた若者が続々と応募してきたのだった。
今回の試験では、模擬戦は一般公開で行われることになった。
これには理由があり、1つは娯楽の少ないこの国の人の為に娯楽を提供するというものと、もう1つは、どんな状況でも冷静に対処できる人材を欲しているという事がある。
また、自分たちの街を守る軍隊がどんな様子なのか、どんな人が率いるのかを見せておき、安心感を与える事も目的の1つである。
今回応募してきたのは約10名になった。
本当は15人程居たのだが、不正が発覚し、5人が現在牢屋で反省中である。
5人は明日の朝、下水掃除をさせてから解放する予定である。
時間が着たので、皆が俺の方に注目し始めた。
俺の開会の言葉を待っているのだ。
「これから開会の挨拶だが、その前にまず、皆に礼を言う。これだけ集まってくれるとは思っていなかった。今日は存分に楽しんで行ってくれ」
俺がそういうと、拍手と同時に歓声が返ってきた。
その歓声を少しの間聞いた俺は、静まるのを待って言葉を続けた。
「さて、本日試験を受ける10名の候補者よ!諸君らにはこれから模擬戦をしてもらう。諸君らが直接戦っても良し!後方で指揮を執っても良し!各々の戦い方に合わせてくれていい。思う存分戦わせてくれ」
参加者にそう声をかけると俺は、今度は兵たちに声をかけた。
「本日模擬戦に参加する兵たちよ!君たちが今日使うのは演習用の武器だ!だが、演習と言って気を抜くことは許さぬ!死ぬ気で戦ってくれることを期待する!だが、不慮の事故以外で相手を殺す事は禁ずるのでその辺りしっかりと守って戦ってほしい!以上で開会の宣言とする!」
俺が言い終わると、また割れんばかりの拍手と歓声が響いた。
歓声が鳴りやまないうちに、司会役の黄煉が出てきて声を張り上げた。
「今から、第一試合を行う!対戦者以外は控室に戻るように!」
そういうと、2人の男以外は全員観戦者からは隠れる位置にある控室に戻っていった。
お互いの準備が整った合図を見て、黄煉がまた声を張り上げた。
「規則は先程殿が言われたとおりである。お互い死力を尽くして戦う様に!では、はじめ!」
そう言い終わるのと同時に巨大な銅鑼が鳴らされた。
銅鑼の音と同時に場内が歓声で沸いたのだった。
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