花子の疑問
「おはようございます!グレンリードさん、グレースさん!」
「ハナコ嬢…」
「ホッホッホ。おはよう、ハナコ殿。良く寝れたかの?」
少しびっくりした顔も麗しいグレースさんと、相変わらずの微笑みを讃えるグレンリードさん。
ここは、朝食の席。
今日のメニューも美味しそうです!
「今日は、王様に会いに行こうかと思いまして!」
変わらず微笑むグレンリードさんと、目を見開いたグレースさんの姿がそこにはありました。
「ハナコ…」
グレースさんと一緒に久しぶりに王様の執務室へと入る。
当然ですが、そこには王様の姿がありました。
「ハナコ…すま…」
「王様、私、後宮に入りたいと思います。」
王様の言葉を遮って、私が言う。
「ハナ、コ…。」
王様が、目を見開く。私の後ろで、グレースさんが息を呑むのが聞こえた。
「ただ、質問があるのですが…」
「何だ?」
王様が、急かしたように、聞いてくる。
「その…、私のいた日本でも、 かなり昔のお話ですが後宮のようなものがあったのです。」
「そうか。」
「そのドラマ…えっと、言い伝えを演劇にしたようなものでは、後宮とは、女同士の将軍…いえ、王様の寵を競って、泥々の骨肉の争いが繰り広げられるのですが… 」
「あ、ああ…。」
「それで、その演劇を見ていても常に疑問に思っていたのですが…」
「…ああ。」
何かを焦っているのか、王様がゴクリ、と唾を飲み込んだ気配がしました。
「寵、とはなんでしょうか?」
「「…は…?」」
あれ?何かおかしなこと聞きましたかね、私。
王様とグレースさんのお顔が、効果音をつけるとしたら、ポッカーン、という音が聞こえてきそうなお顔をしています。
まあ、お二人とも並外れた美貌の持ち主なので、このようなお顔も素敵なのですがね。
…。
……。
………。
あれ?やっぱり変なこと聞きましたかね?
「いや、それは、ハナコ嬢…ね、ねぇ、王!」
と、いち早く復活したグレースさんが、何故か王様に助けを求めるように言います。
「…え?あ、ああ、そ、それはな、ハナコ、あれだ、その…」
王様も、何故か目が泳いでいます。
「あの、お二人とも?落ち着いて下さいね?私も何も分からない訳ではないのですが、王様から寵を頂けると、子供が出来るのですよね?
「あ、ああ。」
ぎこちなく王様が答える。
グレースさんは何故か俯いて片手で顔を覆ってしまいました。
「そこまでわかっているのですが、寵の具体的内容がわからないのです。」
そうなんです。大奥のドラマはマミーといつも観ていたのですが、何度聞いても答えてくれませんし、それらしいセリフなどがあるとチャンネルまわしてしまうんですよ、マミーが。
「ぐ、具体的内容…………。」
王様が呆然としたように呟きます。
すると、
「アハ、アハハハハハ!!」
グレースさんがプルプルと震えだしたと思ったら、いきなり爆笑し始めました。
腰を折り、お腹を抱えて笑っています。
グレースさんのこのような姿初めて見ました。常は穏やかに微笑む貴公子然ですもの!
「ハナコ嬢、あなたは、なんて素晴らしい!最高です!」
そして何故だか絶賛されました。
今度は私が呆然としていると、ハァー、と溜め息が聞こえました。
「王様?私…何かいけないことを聞いてしまったのでしょうか?」
多少なりとも不安を覚え、そう聞くと、王様が近付いて来て、そっと頭を撫でられ髪をすかれます。
「いや。ハナコ、ありがとう。寵のことは…ゆっくり、追々、俺が必ず教える。だが、ハナコは寵を競うなど考えずとも良い。」
「王様?」
寵については、王様が教えてくださると言い、しかしそれを競うという、後宮にあって必須とも言えることを考えなくても良いと言います。
私は訳がわからず、コテン、と首を傾ける。
王様のブルースカイの瞳がすぅっと、優しく細められる。
「言ったであろう?ハナコは俺が守る、と。それに、端からお前以外に寵を授けるつもりもないしな。」
そう言ってそっと抱き締められる。
王様の心臓の音が聞こえます。
その、早い鼓動はとても心地好いもので、王様が後から教えてくれるのならいいか、と思い、考えることを放棄しました。
花子よ、
そうきたか…。




