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親子 3 ~王様の過去~ (王様side)

俺の母親は父王の6番目の側室であった。


この世界の王達は次期王となる、神の力を受け継ぐ世継ぎを残す義務がある。


父王は愚王でこそなかったが、気が弱く、受け継いだ力こそ、中央の国を統べるレイニール神の御力を受け継いだが、よく言えば優しい、悪く言えば優柔不断な王で会った。


その様な性格も相まって、貴族共に請われるまま妃を迎えた。


しかし、本来神の御力を受け継ぐ後継者は、王が心から愛し、信頼する女からしか産まれないとされていたし、グレンリードも、父王には再三進言していたらしい。


たが、グレンリードはカッパニーニの末裔として、王の友として、確率した立場があり、王に直接進言出来る限られた存在ではあったが、直接政治に関わることは出来ない。


そのため、王の性格が最大限に利用され、貴族共に押しきられていたのだ。


しかし、やはり定めだったのだろう。王は俺の母となる男爵家の令嬢と、視察先の男爵領で出会い、瞬く間に恋に落ちた。


その頃既に父王には、王妃に皇子が一人、側室一人に姫が一人、二人に皇子が 一人ずつあった。


しかし、やはり御力を受け継ぐ後継者は産まれていなかった。


父王は令嬢、母を直ぐ様後宮に迎え入れ、ほどなくして懐妊した。


母の大人しく控え目な性格も興じて、後宮に入った直後から、王妃や他の側室らから執拗な嫌がらせを受けていたらしい。


しかし、それにも絶え、何とか事なく俺という次期王となる世継ぎを産んだ。


世継ぎを産んだ国母として王妃に、という声もあったが、自身の身分の低さにそれを固辞したらしい。これ以上王妃や側室らに悩まされたくなかったのだろう。


だが、父王はやっと見つけた、唯一の伴侶を事すら愛した。母が後宮入りし、俺が産まれてもなお、その寵愛を一身に受けたのは母であった。


父王にいま少し、男としての甲斐性があり、後宮を治め諌めることができたなら、もう少し違ったのであろうが、母への嫌がらせは日々、目には見えぬども、増長していた。


時が経ち、俺の年が十になってもそれは変わらないどころか、苛烈を極める事となる。


10年経てど、父王は母以外の妃、例え王妃とされ、法務大臣であり、侯爵家の娘であったバネッサ妃にさえ目を向けることはなかった。


そんなある日、遂に妃たちの箍が外れた。


世継ぎである、俺の誕生際での宴の際、ここ、王の庭に賊を手引きし、王の名を語り、母を呼び出し、賊に襲わせたのだ。




「それで、そのせいで王様のお母様は亡くなられたのですか?」


この娘は、王である俺に対して、物怖じする事なく、真っ直ぐに見詰めてくる。


あの、俺が実の母親を殺した日より、カッパニーニ家の人間以外は誰もが俺に寄り付かぬというのに。ああ、だがこの娘はまだ知らないのだった。俺がどのような化け物なのか。知れば、その恐怖で、その瞳を合わせてはくれぬだろう。最近、やっと縮まったこの距離も、手の届かぬものとなろう。


俺は、半ば諦め、そして自分自身に言い聞かせる。仕方のないことだと。


そして、話しを続ける。


「いや、俺は…俺がたまたま聞いたのだ。側室達が事のあらましを話しているのを。それで…」


「…それで?」


どこまでも真っ直ぐで、黒曜石のような美しい瞳は、その瞳は、俺を軽蔑し恐怖を滲ませ、見るのだろうか。…いや、もう、見てもくれぬかもしれない。


「俺が、その場に駆けつける。それに気が付き、事の邪魔立てを阻止しようと側室、王妃が駆けつけ、騒ぎを聞き付けた多くの者も、駆けつけた。その場には…母は、賊に組み敷かれ、侮辱されていた。」


王の庭のベンチで、俺の隣にいる娘が息をのむ。俺は構わずに続ける。


「箍が外れたのは王妃や側室らだけではなかったのだ。俺もだ。俺は、怒りで我を忘れた。魔力が暴走したのだ。俺は生まれもった魔力が強大なため、それまではグレンリードより魔力のほとんどを封じられており、この成人の誕生際のその日にそれを解除されていた。賊を吹き飛ばし、王宮を、この国を、いや、この世界を、俺は全てを吹き飛ばそうとした。

…それを、母が身をもって阻止した。


俺の暴走した魔力を、ただ人である母が、この世界をも吹き飛ばすほどの魔力を、受け止めたのだ。亡骸さえ、そこにはなかった。」


全てを語り終え、もう、この娘も、俺に近づくことはないだろう、グレースの補佐役という仕事も辞めるだろうと、そう、本当にそう思ったのに、何故か俺は、この、10も年の違う、渡り人である娘に、抱き締められていた。

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