迷子の迷子の子猫ちゃん
何時もありがとうございます!
第25部、飴と鞭で魔法を一つ追加しております。申し訳ございません。
至らない点も沢山あると思いますが、どうか少しでも楽しんで頂けますように。
「どうしましょう…。」
私、今泣きそうです…。
完全に迷子です。いえ、兵部省の場所は本当にわかっていたのですよ!?でも、恥ずかしさのあまりがむしゃらに走ってしまい…、ここが何処なのかさっぱり分かりません。この宮殿、無断に広いんですよぉ!!
「だ、誰かぁ~。」
「小娘、そこで何をしておる。」
見知らぬ建物の中で途方に暮れていると、背後から声を掛けられる。
振り返ると、そこには…
ものすっごい、美人さんがおりました!
豪奢にカールのかかった赤みがかった金髪に、ルビーのような瞳、形の良い鼻に真っ赤な厚い唇。
妖艶、と言う言葉がぴったりの美しい女性が、これまたきらびやかなドレスを着、5~6人の侍女さんと、護衛であろう騎士達をぞろぞろと引き連れ、こちらを睨んでおります。
睨まれてはおりますが!これぞ天の助けです!!
「あ、あの!こちらにお住まいの方ですか?勝手に入ってすみません。宰相様のお使いで兵部省に行く途中だったのですが、その…迷ってしまって…」
きっとここはこの方の居住スペースで、私が不法侵入 してしまったので怒ってらっしゃるのですね。
そう単純に考え、帰り道を聞こうとすると、
「ほう…。王と宰相の小飼の猫とはお主のことかえ?」
女性の声が剣呑に響く。
キレイなはずのルビーの瞳は何か品定めでもするように細められている。
「い、いいえ。私は飼われてもいませんし、猫でもありませんので、し、失礼しますぅぅ!」
何故だかわからないけど、頭の中で危険だと、警鐘が響く。
「おやおや、何処へ行く?迷ったのであろう?兵部省はそちらではないぞえ。なに、後で案内してやろう。わらわ(*)と茶でもしようぞ。王都で何やら流行っているという菓子もあるぞえ?」
「い、いえ、結構です!」
そう言って走り出そうとした、その時、ぐっと乱暴に腕を捕まれる。
「王太后様の申し出を断るとは無礼であるぞ、娘。」
と、騎士の一人が私の腕を掴んでいる。
「お、王太后様…?」
ということは、王様のお母様?
で、でも、何だか…、
「来い、娘。」
低く落ち着いた声とは裏腹に、有無を言わさぬように乱暴に腕を引かれ、体が引きずられる。
私は思わず防御魔法を発動してしまう。
すると、
パァン!
という音が響く。
私の腕を掴んでいる騎士は、兜で目元まで隠れた顔を私の耳元に寄せ、
「この程度の魔法なら、私には聞きませんよ。」
と、囁く。
「…っ!なん、でっ!?」
私、これって、もしや絶対絶命ですか!?
*について…わらわ(妾)とは、へりくだった言い方なので、本来王太后という高位の人は使わないかもしれませんが、王太后の設定上、ピンときたので使用します。