王様と、宰相様と、私と 1
「ふふんふ~ん♪ふ~ん♪」
今日はとても良いお天気です。
私がこちらに来てから約2ヶ月経ちました。来たばかりの時は春、5月でした。こちらでもそれは変わらずに、1年も、365日でした!太陽暦というのでしたっけ? ただ、月々が、まず1月が始まりの月、二の月、三の月…………十の月、十と一の月、終わりの月、と同じようでして、微妙に違います。
そして、今は七の月!四季もほぼ同じなので、初夏です。一月ばかりの雨季(あちらでいう梅雨ですね!)も終わりを迎え、久しぶりの爽やかなお天気です!
なので!只今、絶賛お掃除中です!
王様とグレースさんは何やら会議があるらしく、今はお留守です。
この執務室は一国の王様のものであり、その右腕ともいえる宰相様もほぼこちらで仕事をするというのに、お掃除など、身の回りのことをする人が今までいなかったそうで…。何やら王様がこのお部屋には限られた方しか絶対にお入れにならないとか。
ですから、王様の執務室の直ぐ側に執務室がある宰相様が、宰相業と王様のお世話両方するようになり、何だかめんどくさいので宰相様もほとんどを王様の執務室で過ごすようになったらしいです。
王様は…
グレースさんが大好きなんですね!
まだほんの数ヶ月ですが、一緒の空間で過ごさせて頂いてわかったことがあります。
王様はカッパニーニ家の方々をいたく信頼されていて、同時にその他の人には結構あからさまに頑なです。
私のことは、私がカッパニーニ家にお世話になっていることとか、ユキコさんと同じ日本人ということもあってか、それなりに接してくださいます。
絵本を沢山用意してくれましたし、私がわからないことがあると、グレースさんだけでなく、なんと、王様も色々と教えてくださいます。お陰で、読み書きは大分出来るようになりました。
第一印象はあまり良くありませんでしたが、決して悪い方ではないようです。
何にせよ、働かざる者食うべからず、です!
「ふふんふふ~ん♪窓も吹きましょう~ラララ~♪」
ということで、久々の快晴に、徹底的にお掃除しましょう、と私は鼻歌混じりに窓に手をかけ、
「そうだ~♪せっかくだら~♪換気も~しましょ~♪」
ふふんふふ~ん♪と、ノリノリで窓を開けたその時、
ふわっ、と風が頬を包み込み、
『フフフフ、ちょっとだけ、遊びましょ?』
「へ?だ、誰!?」
少女とも、少年とも言える声が聞こえたと、そう思った瞬間、
ブワァ!!
「ギャフニヒャ~!」
強い風が窓から執務室に入り込み、
久々の悲鳴をあげ、
『フフフ。ま、た、ね?』
と、あの声がまた、聞こえる。
…。
……。
………。
「しょ、書類がぁ~!!!」
執務室は紙々の惨状と化したのでした。
と、とにかく、お片付けです!
「えっと、これは…こっちで、これは…ふむふむ、こっちですね。」
何とか事態が収集しようとしたいたとき、
「…何かあったのか?」
「王様、グレースさん!」
王様とグレースさんがお戻りになりました。
「ごめんなさい、書類勝手に触って…。窓を開けたら風で…。」
やっぱり怒られるかな、そう思ってしまうと、説明がしどろもどろになってしまう。
王様は黙って執務机までやって来て、私が片付けた書類に目を落とす。
「何故、このように片付けた。」
「…っ。ご、ごめんなさい、私…」
「余は怒っておらぬ。聞いておるのだ。書類が三種類に分けてある。何故だ?」
そろそろと、うつ向いていた視線を上げ、王様を見る。確かに、無表情だけど、それはいつものことで、怒っているようには感じられません。
「あ、あの、一つ目は至急を要するもの、二つ目は、至急ではないにしても近日中には目を通した方が良いもの、三つ目は、急を要さないもの、に分けてみました…。」
説明している間、王様は書類を確認しています。一通り確認が終わると、
「…これからは任せる。」
と、一言おっしゃり、何事もなかったように政務を始める。
「ふむ、前以てこのように書類が分類されていたら政務がはかどりますね。」
「グレースさん…あ、あの…?」
「書類を分ける箱でも用意しましょう。これからは王や私の元にきた書類をこのように分けておいて頂けますか?」
「は、はい!あ、あの…王様、」
王様が書類から目を上げ、私を見る。
私も王様を見る。
「は、励みます!」
「…ああ、頼んだ。」
そう言って、王様は微かに口角を上げ、笑ったように見えました。




