何様ですか!?ああ、王様ですか。
「ホッホッホッ。これはこれは、我が友であるレイニール王におきましては随分とご機嫌麗しゅうて。」
「フン。友と言うなれば頭を上げよグレンリード。」
「ホッホッホッ。」
…。
「娘、おまえも頭を上げよ。顔を見せろ。」
……。
「聞こえぬのか、娘。顔を見せろ。」
………。
「っ!余の言うことが聞こえぬか!!顔を見せぬか!!!」
「…の?」
「何?」
「……どうするの?」
「聞こえぬ!はっきり申せ!!」
私は顔を上げ、真っ直ぐに目の前の男を見据えて、言う。
「自分が間違えた事をして、その間違いで誰かに迷惑をかけて、そしてその間違いに気が付いたら、どうするの?!」
震える手は、声は、緊張のせいなんかではありません。これは紛れもない怒りです。
「なん、だと?」
私は更に強く男を見射る。
グレンリードさんは隣で何時ものように微笑んでいてくれる。腕と足、一本ずつお願いしますね。
「私は渡り人です。ですが、こちらに来た時は訳あってかなり空腹でした。その為か、渡り人の特徴である魔力に気が付かなかったのは仕方のないことです。それ故にその時不振人物と見なし、地下牢に入れたこともまた、仕方のないこと。ですが!私は渡り人であり、好き好んでこちらに来た訳ではありません。また聞くところによりますと、渡り人とは国の保護対象だとか。」
目の前の男の秀麗な顔が紅潮している。恐らく怒りで。ああ、本当に骨は拾って下さいね。
「おま、えは!余に謝罪せよと申すか!!渡り人風情が!!余はこのレイニール国の王!天を司る神レイニールの力を受け継ぐ者ぞ!!!」
ここは、恐らく謁見の間、という所ではないでしょうか。天井が高くアーチ型で、神々の戦いが天井一面に描かれています。そして、王と言うその男の怒号がこの部屋全体を揺らすように響き渡ります。
「では、王は間違えないと?神々は!過ちを犯さないと!!」
「き、さま!!神々までも愚弄する気か!!!」
シャー、ガタッ、ガッ、ガッ、ガッ…!
剣を抜き、同時に立ち上がりこちらへ来る男。私の目の前には剣の切っ先があります。
この薄い桃色のドレス。紅く染まるのは嫌だな。
隣でピクリとグレンリードさんが何やら構えたような、反応、したような気配を感じます。