まさかのチート?
内容少し訂正しました。
内容は変わりません。
泣いてる私の背中をさすりながら、然り気無くキレイなレースのハンカチを差し出してくれる。
「ありがとう、アイリーンさん。」
また、目尻の皺が深くなる。
大丈夫、私は一人じゃない。
「ホッホッホッ。さて、また、食べながらゆっくり話すかの。」
グレンリードさん、消化に悪くない程度の内容でお願いします!
「ふむ。しかし、かなりの魔力じゃな。」
えっと、自画自賛ですかね。意外にナルシストなんでしょうか、グレンリードさんは。
「わしじゃのうて、そなたのことじゃよ、ハナコ殿。」
そっかぁ、私のことかぁ…って、また顔に出ていたみたいです。
「いえいえ、私は魔力など…」
私は日本で、いわゆる一般的な家庭の一般的な女の子でしたよ。勉強も、運動も中の中でしたし、はたまた外見は、…ここは見栄を張りましょうか、中の中です!ただ、料理上手で厳しいけど優しいマミーと、一人娘にデレデレのパピーは自慢の家族でした。
「ホッホッホッ。ハナコ殿はこちらへ来る際、腹ペコではなかったかえ?」
「!?何故それをご存知で!」
そうです!こちらに渡って来た日、その日はマミーの特製唐揚げが夕飯のメニューだったので、沢山食べようと張り切ってお昼は牛乳だけにしたのです。
「やはりの。器が大きいのに中身が空っぽだったのじゃよ。」
「はい?」
グレンリードさんの説明によりますと、渡り人が貴重なのは、渡って来る人が滅多にいないと言うことともう一つ、魔力を有しているということがあるらしいです。
私はこちらの、このファンタジーな世界では皆さんが魔法を使えると思っていたのですが、そうではなく、むしろ少ないとの事。
この世界で魔力を有し、それを使える者は、神と精霊の末裔である王達とグレンリードさん、次期王であろう人間と、カッパニーニ家の次期当主。後はわば突然変異のように生まれる方のみであるらしいのです。
特に突然変異の方は滅多におられないとか…。
もちろん、地球には魔法使いはいません。…多分、私が知る限りでは。しかしそれは、実は持ってはいるけれど、発動しないだけ、らしいです。だから、地球人は皆多かれ少なかれ魔力を有しているらしいのです。
「あの…、でも、私魔法なんて…。」
「ホッホッホッ。何事にも練習は必要じゃが…、ほれ。」
「っ!何をするんですか!?グレンリードさん!!ナイフでご自分の腕を切るなんて!」
この方は本当に!消化に悪い事をしてくれます!!
「ほれ、いいからこの傷のところに手をかざしてみ。そして、想像するのじゃよ、この傷が治るということを。」
「え…?こう、ですか…?」
とりあえず、やってみました。手をかざして、集中して目を閉じる。チチンプイプイなーおーれ!みたいな?
「ほれ。」
グレンリードさんが先ほどまで血が滲んでいた腕を私に見せる。
「う、そ…。」
傷は跡形もなく消えていました。
「ホッホッホッ。わかったかの?元々あちらの人間は皆その内に魔力を有しておる。ただ、そこにある、というだけなのだが、だからあちらには魔法が存在しないのじゃろ。しかし、こちらに来て、こちらの食べ物を食べると、その魔力がその人間の器の分膨らむんじゃよ。ハナコ殿は器はこの上なく大きいが極度の空腹で、あるはずの魔力も風前の灯だった上に、地下牢での生活で、元々あった魔力が雀の涙ほどまで縮んでいたのじゃよ。こちらにハナコ殿が渡ってきてしもうたのは、わしも風の精が仕出かしたことを聞いてわかってはいたのだじゃが、なにせ魔力がほんに小さくなってしもうていたからのぉ。なかなか見付けられんかったのじゃ。」
だからあの馬鹿も気付かなかったんじゃろ。とグレンリードさんはおっしゃる。
ん…?
「あの…あの馬鹿、とは?」
「あのレイニール王の馬鹿じゃよ。」
他に誰がいるんだ、と言わんばかりのグレンリードさん。
「そうじゃ、そう言えば今朝王宮から使者が来てな。その愚王がハナコ殿に会いたいそうじゃよ。」
どうする?
って、それは拒否権ありなんですか!?