《セイイキ》
「昨日の今日だが、落ち着いたか?」
『いや、全然大丈夫デスヨ?』
「(だめだな)ほら、向こうを見てみろよ。デッカイ橋があるだろ。」
『へ? あ、ホントだ、何で?』
見渡すほどの緑の大地の果てに、これまた端が見えないくらいに長く大きな橋が三つ架かっていた。
クリス達のいるところからは端が見えなかったが、その橋は。
一つはリュビ大陸へと繋がっている。
もう一つはサフィール大陸へ
最後の一つはなんと上空に向かって昇っていっている。
リュビ、エムロード、サフィール大陸はもとは一つの巨大な大陸だったのだが、はるか昔、四つに裂かれたそうだ。
そのときに真ん中にあった大陸とも呼べないような小島が空へと浮かび上がったとされている。
その島にはエルフの故郷であるエルフの森が広がっていて、今でもエルフの大半がその島に住んでいる。
そのため、三大陸でエルフを見ることは少なく、緑や水の多いエムロード大陸やサフィール大陸ならともかく、火の多いリュビ大陸にエルフは少なく、おそらくは10人もいるかどうかと言われている。
旅の途中でもクリスは行き交う人に会うたびに珍しいものを見たとばかりに話しかけられた。
「エリュシオン浮国に入るには、エルフである、もしくは入国許可証を発行された者のみ。それ以外は何人たりとも入ることは許されない。」
『何で?』
何か、鎖国っぽくねぇか?
「エリュシオン浮国全部が聖域だからだよ。
エルフはエリュシオン浮国のエルフの森の中でしか子供を産むことができないんだと、そこ以外だと流産しちまうらしいぜ。
エルフは不老長寿の長命種ではあるが、絶対数が少なすぎる上に十年に一人ぐらいしか誕生しないからな。なんとしてでも死守しなければならないんだよ。」
あー、そういえばエルフは寿命もないし病にもかからないけど、繁殖能力が弱いっていっていたっけ。おまけにこの乱世じゃあ、神経質になるのもしかたがないか。
説明を受けながらオレたちは何か複雑な模様の描かれた周囲とは違う硬い岩のような地面の隣に来た。
直径は十メートルあるかないかで、円形のサークルの形をしている。相当昔からあるんだろうな、古びた感じがまた味があっていいと思う。
「さて、と。お前はエルフだからな、いつかはエリュシオン浮国にも行くことになるだろうよ。
このフィロン浮石の上に立つだけでエルフと許可証を持っているヤツは浮国の中にある対の浮石の上に跳ばされるしくみだから、心配するなよ。」
へー、ワープ機能のある魔法陣かぁ、便利だな。古いのは滅びたっていう古代文明の遺産だからか?
『ん? じゃあ、何でエリュシオン浮国に行くための橋があるんだ?』
三本橋の真ん中がいらない話になっちまうぞ。
フィロン浮石ってのがあるなら必要いらないんじゃねぇの?
「ああ、昔は浮石だけだったんだがな、モンスターが異常発生して襲ってきたときに破壊されて出ることも入ることも出来なくなって混乱が起きたからな。
普段は橋のほうは閉鎖されてて緊急時にのみ使用できるようにしているそうだ。」
そっか、ならせっかく作られた橋には悪いけど、使われることがないといいな。
『ふーん。あー、だから両端の橋には人が行き交ってるのに誰も真ん中には行ってないのか。
でもさ、フィロン浮石が破壊されたって言ってたけどさ。別にどこも欠けてたりなんかしてなかったぜ? そりゃあ古びてたけどさ。』
それとも古くなったら使えなくなるのか? イヤイヤ、モンスターが破壊っていったら壊したってことだろ。・・・なんで?
あ、もう一個あったってことか。
なんだ、オレの早とちりかよ。うわー恥ずかしい!
「イヤ、破壊されたのはさっき見せたヤツだ。フィロン浮石はそれぞれの大陸に一つだけしかない。
なんでかっていうとな。フィロン浮石には自己修復機能が付いてるからだな。」
じ、自己修復機能デスカ。
・・・・・古代文明ってパネェな。何でもアリかよ。
ネズミ嫌いのネコ型ロボットとかいねえかな。