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第45話


 翌日も進路上にランクAのトロルやオークが現れるが

2人にとっては雑魚魔獣で、精霊魔法とエンを付与した

武器で軒並み倒して無人の荒野を進むが如く火口を目指す。


 魔法剣士になってレベルが60を超えたことと、3体分の

神獣の加護、それに世界樹の加護を受けている2人の

戦闘能力はレベル以上、ランク以上のものになっていた。


 当人達が思っている以上の能力が既に付与されており

普通の冒険者のレベルに置き換えるとレベルは80台

半ばくらいまで上昇しており、

ランクSクラスの能力近くにまで高められている。


 こうなるとランクAの魔獣も全く脅威ではなくなっており、

王都の冒険者達がやばいと言っていたこの王都北東の

山脈エリアも2人にとっては普通の狩場と成り下がっていた。


 山の中を進むこと5日目の昼前、目の前に火山の山裾が

見えてきた。


「ようやく着いた」


「さてと、これから洞窟探しだ」


 今まで越えてきた山を降り、火山の山裾に入るその谷間には

川が流れていて、その川まで降りてきた2人は周囲を警戒しながら

交代で水浴びをし、その後河原で昼食を取っていると

探索スキル上に赤い点が現れたかと思うと信じられないスピードで

その赤い点がこちらに向かってきた。


 すぐに立ち上がって戦闘状態を取る2人の視界に空から

一頭の全長7、8メートルはあろう大きなドラゴンが降りてきた。


 2人から少し離れた場所に降り立ったドラゴンは羽を広げ

尻尾を振り回して2人を威嚇する様に睨みつけている。


「ブレスに注意だ。あちらから仕掛けるまでこちらからは

動くなよ」


ティエラに声をかけて睨んでくるドラゴンを睨み返すレン。



 しばらく睨み合いが続いたかと思うと、突然ドラゴンが

羽をたたみ、尻尾も河原に落としてレンとティエラに

向かって首を垂れた。


 一体何が起こったのかと見ていると、突然脳内に


『突然の無礼を許していただきたい。お主達がどれほどの

力の持ち主なのか確かめさせてもらった。』


「これ、ドラゴンが私たちに話しかけてるんだよね?」


「どうやらそうらしい。というかドラゴンも人間の

言葉を話せるとは」


『我らドラゴン族はこの火山におられる神獣をお守り

しておるものよ。神獣より人間の言葉を理解する知性を

与えられておる。それにしても神獣の加護を3つも

持っているとは驚きだ。』


「ドラゴン族っていうことは何匹もこの山脈の中に

住んでいるってこと?」


『我らの仲間は約20体ほど、この火山を中心に山の頂上付近に

住んでおる。普段は山の上から降りることもないが、神獣様から

人間が近づいてきていると聞いてな、どんな人間かを見にきたのじゃ。

まさか神獣の加護を受けている人間とは思わなかった。』


「その火山の火口にいる神獣に会うためにここにやって

来たんだが、会わせて貰えるものなのか?」


 敵対心を解いているドラゴンを見て、レンとティエラも

抜刀していた剣を鞘に戻していた。


『もちろんだ。神獣様よりも2人を案内しろと仰せつかっている』


 そういうとドラゴンは身体を河原につける様に低くして、


『神獣様は山の中腹にある洞窟の奥にいらっしゃる。ここから

歩いて行けないこともないが、時間がかかる故、我の背中に

乗るがよかろう』


 勧められる様に2人がドラゴンの背中に乗ると、ゆっくり

羽ばたいて火山の中腹を目指して飛んでいく。


「すごくいい景色ね」


「まさかドラゴンに乗せてもらえるとは思わなかったな」


 背中の上から地上を見下ろしていると、すぐに山の中腹にある

岩場に着いて、


『この洞窟の奥だ』


「ありがとう」


 どうやらドラゴンは洞窟の入り口で止まる様で、

レンとティエラの2人で洞窟にはいり、中を進んでいく。


 火山の中の洞窟ということで中の温度は高くなっているが

2人共温度調節可能なローブを着ているので暑さを感じることもなく

奥に進んでいく。


 洞窟は直線ではなく左右にカーブしているが、入り口から

300メートルほど歩いたところで大きな広場に出た。

その広場の奥に炎を纏っている大きな姿をしたものが…

それを見ながら、


「火山と聞いた時から予想はしていたが」


「うん。しっかりイフリートね」


 2人が広場に入って奥に立っているイフリートに近づいていくと


『よく来たな。わしがこの火山に住んでいるイフリートだ

ふむ。しっかり我ら仲間3体の加護を身につけているな。』


  2人をじっと見てから言い


『それに世界樹の加護までついておるな。ふふ、相当

好かれている様だ』


「自分達ではそんな大それたことしているという気は

全くないんだけどな」


「そうそう。なんか周りが盛り上がっちゃって

かえって戸惑ってますよ」


 それを聞いたイフリートは笑いながら


『2人とも真っ直ぐで謙虚で。なかなかできるものではないぞ。

人間というのは、特に力を持った者は得てして傲慢になるものだ。

今までそういう風になったのを多数見てきておる。


お主達はどうやら違う様で安心したわい 流石にあの

偏屈フェンリルが熱をあげるだけのことはわるわい』


『偏屈で悪かったな』


声と同時に浮かび上がった魔方陣から

フェンリル、リヴァイアサン、そしてシヴァの3体が姿を

現した。


『久しぶりね、レン、ティエラ』


「お久しぶりです。シヴァ。フェンリルもリヴァイアサンも

お久しぶり」


 今まで加護をもらった3体の神獣に頭を下げる2人


『2人の活躍は見ておるぞ、もう魔獣のランクAクラスは

相手にならない様じゃな』


 リヴァイアサンがレン達に言うと、それに続けてフェンリルが


『得た力を正しく使っている様でなにより』


『さてと、お主達をここに呼んだのは、ここにおるフェンリル

リヴァイアサン、シヴァの話しを聞いて、我も加護を

与えたくなっての。どうだ?受け取ってくれるか?』


「もちろんです」


 即答するティエラ


『そうか…では我からも加護を与えよう』


 そういうと2人の身体が光に包まれた…しばらくして光が消えると


『これで神獣の加護が都合4体分となった。

我からは2人にパワーを与えておいた。剣の威力も、

魔法の威力も増大しておる。今までよりも強い力で

魔獣を倒すことができるだろう。それと、

これを持っていくがよい』


 そういうと2人の前に指輪が2つ浮かび上がった。

レンとティエラがそれぞれ手に取ると


『それは念話の指輪という。指輪をつけたもの同士は

離れていても念話でいつでも通じ合ることができる』


「ほお、これはありがたい」


「これは役に立つわね、ありがとうございます」


 それぞれ指輪をはめて、改めてイフリートに礼を言う。


『お主らはそれを貰う資格がある人間だ。遠慮することはない。

人間の冒険者の規範となって、来たる魔王との戦いに

備えてしっかり手本となってくれれば良い』


『そうじゃ、お主らの生き様がこれからの冒険者達の

指標となるのじゃ。ふふ、責任重大だぞ』


『レン、ティエラ、フェンリルはああ言ってるけど、

普段通りのことをしていれば他の冒険者達がついてくるわ。

肩に力を入れずいつも通りでいいのよ』


 フェンリルとシヴァがそれぞれ声をかけてくる


「ありがとう。ところで聞きたいことが1つ

あるんだがいいかな?」


『なんでも問うがよい』


 イフリートが鷹揚に答えると


「この山脈にいるランクAの魔獣は決して山から出ない

って聞いているんだが、それは本当なのか?」


『本当じゃ。出ないというか出させない様にしておる。

魔獣は魔族がつくりだしたもの、本来は好き勝手に

地上で暴れまわるはずだがな、ここにおいては

神獣を崇拝しておるドラゴン族が我々の仲間でな

彼らに魔獣が外に出ない様に監視させておるのじゃ』


「じゃあ、あの村人の噂は本当だったんだ」


『その昔は魔獣がこの山から平原に飛び出して

暴れていたもんじゃ、その後ドラゴン族がここに

住み着いてからは彼らの方が圧倒的に強い、その

ドラゴン族の力を背景に魔獣を押さえ込んでおる。


魔獣もランクAクラスになるとある程度の知性を

持っておるが、それを逆手に取って、山から出たら

ドラゴンにやられると分かると出なくなったのじゃ』


「なるほど。じゃあしばらくは安心できるんだな」


『そのかわりに知らずに山に入った時は覚悟して

おくんだな。山は魔獣のテリトリーになっておるからの』


「わかった。王都に帰ってギルドに報告しておく、

これで村人も安心して生活できるだろう」


『フフフ、相変わらず自分たちのことよりも周りのことを

気にしておるの。そこが我ら神獣がお主らを気にっている

理由の1つでもある』


 今のやりとりを聞いたリヴァイアサンがいうとシヴァも


『そうね。普通の人間ならここまで強くなったら

もっと上を目指すんでしょうけど、相変わらず2人は

欲がないのね』


「今の生活で十分満足してますしそれに、偉くなるとか、

上にいくとか考えたこともないし。そうだよね?レン」


「ああ。その通り。これからも冒険者として生活できれば

それ以上の望みは今の所はないかな」


 それを聞いた4体の神獣は顔を見合わせて


『流石だ。いや見事。フェンリルの見る目を見直したわい』


『こう言われると我らとしては余計に何とかしてやりたく

なるだろう?』


 イフリートとフェンリルのやりとりを聞いていると

再び2人の身体を光が包み込んだ。


『長寿の加護よ』


光が消えるとシヴァが言う


「長寿の加護?」


『そう。今私が2人にかけたのは長寿の加護。

普通人間はせいぜい70歳位で死ぬわ。

でもこの加護を受けたものは寿命が伸びるの。

そうね、エルフ並みの長寿と考えてくれてもいいわ。

これは私からの好意。もちろん、2人が普通の人間として

寿命を全うしたいと思うのならいつでも言って。すぐにこの加護

だけ消してあげる。』


「エルフ並みか… 嬉しいけれども。それはひょっとして

次の魔王が登場した時の為にかけてくれたということかな?」


 レンがシヴァの目を見ていうと、


『そう思ってくれて構わないわよ。次の魔王の登場は

おそらく今から15年から25年以内。

その時にあなた達には現役で頑張って欲しいのよ。

貴方達ほどの冒険者が今後出なかった時のための保険を

私からかけさせて貰ったのよ』


「じゃあ、もし、また私たちの様な、いやそれ以上の

冒険者が見つかった時には教えてください。

その時に加護を外して貰います」


「そうだな。それがいいな」


 ティエラの発言にレンも同意する。


『わかったわ。その時は外してあげる。

それまでは申し訳ないけど頑張って頂戴』


 シヴァの話しに頭を下げて同意する2人。


『さてと、これで大体話は終わったか 

わざわざ火口までご苦労であった』


「いえいえ、来た甲斐がありました。

ありがとうございました」


 ティエラが丁寧に礼をする。


『帰りはドラゴンに山の麓まで送らせよう。

そこからはテレポリングでも、歩いてでも

好きに帰るが良い』


「ではこれにて、色々ありがとう。」


レンも礼を言い、4体の神獣に頭を下げてから

洞窟の出口に向かう。



レン達の姿が見えなくなると


『どうじゃ?わしの目も節穴じゃないだろう?』


フェンリルが洞窟の先、レン達が消えた方向を

見ながら言うと


『確かに、お主ら3体がそろいもそろって

熱をあげておるから一体どんな人間かと思ったら、

こりゃ想像以上だったわい』


『ふふ、じゃあ貴方もあの2人の応援団に入るのね』


『ああ、喜んで参加させてもらうぞ』


『ところでシヴァよ、長寿の加護はよい判断だったな』


『リヴァイアサンにもわかるでしょう?次の魔王の

登場時期が…時間があるようでないのよ。なので

準備を万全にするには彼らしかいないのよ』


『確かに。まぁその頃には彼らも相当高いところまで

上っているだろう。あの2人だけで魔王退治するところも

見てみたいものだ』


『魔王がこの地上に現れたら我らでまた最強の加護を

上書きしてやるかな』


『そうじゃな。我らも最大限のサポートを

してやろうではないか』


 4体はしばらくそうやって話しを続けた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます

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