第四章 第二十六話 「参戦」
出来ましたので、投稿です。
時間は、颯天がガブリエルと結果の中に入った時まで遡る。
「■■■■■■■■■!!」
結界という名の異界へとガブリエルが落ちたことによりラドゥーンはガブリエルとの繫がりが切断される。結果、ラドゥーンは暴走状態へと陥り、がむしゃらに突撃を開始する。
その矛先は意図か偶然かクラウディアたちのいる方向で。突進してくるラドゥーン。だが、事前にこうなることも予想していたアイスとクラウディアの動きは、速かった。
「防御陣形、構え!」
アイスの指示を受けた大盾を構える魚人たちがラドゥーンの前に盾を横一列にわずかに湾曲して構える。盾を構えると同時に衝突する両者だが、均衡は一瞬。
次の瞬間には騎士たちがはじけ飛ぶように後方へと吹き飛ばされるが、ラドゥーンの突進は盾を僅かずつ傾けていたことによって横へと逸れ壁へと激突し、砂煙を上げる。
「行けっ!」
アイスの掛け声と同時に一直線にラドゥーンの左足めがけて駆けるは槍を構えた軽装の騎士。一気にトップスピードまで加速したそれは海水を切り裂くようにラドゥーンへの距離を詰める。
騎士の名は、ガロン。直線において唯一クラウディアに匹敵するといわれる槍の使い手。
やがてラドゥーンとの距離は零となり、獲物に牙を立てるかのように狙い通り、ラドゥーンの左足へと直撃する。
しかし、巨岩であれば容易に破壊できるほどの突撃は、僅かに竜鱗を削るだけに留まる。
「姫様!」
しかし、それは事前に想定していたことで。ガロンは即座にその場を退き後続、すなわちクラウディアと場所を譲る。
「はあああっ!」
空いた場所に切り込むようにクラウディアの苛烈な剣でありながら、見ている者を奮い立たせる剣戟が叩き込まれる。
辺りに響く音はまるで鋼と鋼がぶつかりあうよりも遥かに重厚さを感じさせる音が響く。
「クラウディア、退け!」
アイスの掛け声が聞こえると同時にクラウディアは後へ跳躍、クラウディアが剣を振るっていた場所に幾つもの魔法が降り注ぐ。
「■■■■!!」
魔法による絨毯爆撃受けながらも、ラドゥーンの動きは止まらない。
「■■■■■■■■!!!!」
苦しみのこもった咆哮がクラウディアたちへと響く。
「・・・・っ」
ラドゥーンの咆哮し、そこに込められた深い悲しみの声が巫女であるクラウディアにだけは伝わる。呼吸が浅くなる、視界が狭くなり、意識が白になりかけ飛び出しそうになった足を、衝動を自分の中で暴れるもう一人の「戦姫」としての自分を必死に理性で抑え付ける。
「駄目、出てきちゃ、駄目…っ」
浅くなりそうな呼吸を意識的に深い呼吸をして上がりつつあった心拍を鎮める。
「クラウディア!」
暴走しそうになった自分を抑える事に意識が僅かに傾いた。故にいつもであれば反応できる視覚の外からの攻撃がクラウディアを捉える。
(尻尾・・・!)
吹き飛ばされる勢いに逆らうことなく吹き飛ばされながら、クラウディアは何が起こったのかを理解した。
アイスたちのほうに意識が向いていると思われたラドゥーン、しかしクラウディアの変化に気づいたのか標的をクラウディアに変えたのだろ。
そして駒のように体を回転させ、遠心力の乗った尻尾がクラウディアを捉えたのだった。
(不味いわね)
幸い、逆らわずに吹き飛ばされたおかげで多少の傷はあれど軽傷といえるだけで。だがそれだけは終わらない。
「・・・・っ!」
遠くでアイスが必死にラドゥーンの動きを止めようとしているが、それも虚しくラドゥーンの口から青白い雷球が三つ、クラウディアへと向かって吐き出される。
(仕方ない…!)
勢いが落とし切れていない状態での無理に踏ん張れば最初の一つはどうにか対処できる。だが後の二つは回避ができない。故にとるべき選択肢は一つ。
(全力で、避ける!)
目前に迫る雷球を前に無理に僅かに姿勢を傾けると水を受ける面積が変わる。
(くぅ、やっぱり思っていたけど。予想以上に負担が来る!)
体にかかる負荷を我慢しながらクラウディアは上半身と下半身を動かし、体を傾けるとクラウディアの体半分ほどの距離を一つ目の雷球が通り過ぎる。間髪入れずに迫る二つ目の回避をしたところで、クラウディアは気づいた。
(っ、しまった!)
雷球の軌道、それこそがクラウディアが感じた僅かな違和感の正体。
三つの雷球はそれぞれ別の軌道を描きながらも変化し、回避をした後に必ず命中するように放たれていたという事に。
(…仕方ないわね)
事ここに至っては骨の一本が折れるのは覚悟しなければ回避は不可能。そう判断し行動に移そうとしたクラウディアの前に2つの影が立つ。
「合わせる」
「分かりました!」
迫る雷球を前に猫耳と尻尾が生えた【猫又】状態になり伏見、右手は鉤爪のように開きそこに気を集中させ、双短剣を構えたニアは双短剣を振り上げるとその剣に巨大な剣気が宿る。
「戦女神の剣!」
「白爪一断!」
共に繰り出された一撃はラドゥーンの雷球を物ともせずに両断。
その光景に思わずクラウディアは面食らっていると。隣に来た伏見は不思議そうに首をかしげる。
「どうかした?」
「…いえ。助けてくれてありがとう」
ラドゥーンの注意は再びアイスが指揮する騎士たちに向いていることを確認して、クラウディアは一息つく。
「それで、どうして貴女達はここに? 彼は放っておいていいの?」
事前の打ち合わせとして、ラドゥーンはクラウディア達が、以外の敵がいれば颯天達が対応する事を事前に決めていた。
そして、ガブリエルは颯天は周囲への被害を鑑みて白夜の作った結界内にて戦っているが。
二人の様子はまるで颯天の事を心配していない様子だったのがクラウディアには不思議に感じた。
「大丈夫です。今の颯天さんなら」
「寧ろ、私達がいるほうが邪魔になる」
「へぇ~、そうなんだ」
その言葉を信じるなら、そして、無事な戻ってくればそれは颯天は大天使と呼ばれる存在にすら単独で相手にすることができる怪物といえる存在といえ。
「やっぱり、彼は私を飽きさせないわね」
そんなトンデモナイ存在になりつつある颯天に、クラウディアは笑みを浮かべるが、もう一度呼吸をした時にはその表情は冷静なものに変わる。
「ここに来たってことは、貴女達の力、当てにさせてもらってもいいのよね?」
「ん」
「はい、任せて下さい!」
「なら、私一緒に戦場を駆ける事を許すわ。けど、置いて行くかもしれないから、しっかり付いてきなさい!」
そう言うと水を蹴りものすごい速さでラドゥーンへと向かっていくクラウディア、その姿を伏見とニアは足で水を蹴り追従する。
本来いないはずの者達を巻き込んだこの戦い、揺れ動いていた天秤が傾き始めていた。
次はどうにかクライマックスまで持っていこうと思います。
そして、結果的に長くなっているこの間幕といえる話が終われば、本編が動き出します。
構想はありますので、ゆったりと今の話を楽しんでもらえると嬉しいです。




